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ジーコジャパン(8)・・この試合では、本物のブレイクのキッカケを掴んだ「大久保」が最も大きな収穫でした・・日本代表対アルゼンチン代表(1-4)・・(2003年6月8日、日曜日)

やっぱりアルゼンチンでも、カチッと堅められた日本守備ブロックを、流れのなかで簡単に崩せるわけではない・・。「あの」アルゼンチンでも、流れのなかでは、どうしても日本ディフェンスブロックの「ウラ」を突くことができないということです(もちろん、フリーランニングで決定的スペースへ抜け出すシーンはあるが、そこへタイミング良くパスが通らない・・)。

 立ち上がり数分間にアルゼンチンが仕掛けてきた大パワー攻撃を受け止めた日本代表(あの時間帯は、本当にどうなることかと息を殺して見ていましたよ!)。そこから立ち直った日本代表が、その後の押されながらの拮抗状態では、全体的に支配されながらも、落ち着いたゲームを展開できるようになっていったのです。この立ち直りプロセスでは、やはり中田英寿の、攻守わたるハイレベルなプレーが、チームに自信と落ち着きを与えた?!

 アルゼンチンが最初に作り出した決定機は、やっと20分に差しかかったあたりでした。「さて押し上げるぞ・・」という日本代表のタテパスをカットしてからの典型的なカウンター(最後は右サイドからの正確なクロスボール)。これは見事でしたよ。まあ仕方ない。それ以外では、とにかく守備ブロックだけはある程度は安定しているという日本代表なのです。

 この試合では、稲本、中田浩二の守備的ハーフコンビに、小笠原まで参加して「三枚の中盤守備ブロック」を構成します。要は、攻守にわたって「完璧に自由」にプレーする中田英寿を周りがサポートするという基本プレーイメージだったということです。あれ程の「実効ある守備意識」を備えた中田英寿ですからね、(戦術プランから)自由になればなるほど、実効レベルを上げていくのも当然ということです。まあ、そのこともあって(中田英寿の攻守にわたる能力を最大限に引き出すというゲーム戦術?!)中盤の守備ブロックを厚くするという基本プランが殊の外うまく機能していたというわけです。

 それにしても、やはり中田英寿は素晴らしい。攻撃では、どうしても人数が足りないし、彼一人で何人もの相手を抜いていけるわけではないから、そんなに多くの仕掛けシーンを演出できたわけではありませんが、とにかく中盤でのディフェンスが素晴らしいのです。何度、ディフェンスの「起点」になるだけではなく、全力での「追いかけ」から、自らボールにを奪い返すというダイナミックなディフェンス参加シーンを魅せてくれたことか。それこそ、ダイナミックで実効ある守備意識。

 大阪、長居競技場に詰めかけた満員の観客の皆さんからも、そんな彼の「隠れたファインプレー」に対して、拍手喝采とヒデコールを巻き起こる。本当に、日本のサッカーファンはどんどんと進歩・成熟していると感じます。

 「まあまあのペースだ・・このまま、落ち着いたディフェンスを基盤に、徐々に押し上げの勢いを増幅させていけばいい(自身と確信レベルの高揚!)・・」なんて思っていた前半30分。やられてしまいました・・アイマールに・・。

 左サイドでドリブルをはじめたアイマール。最初にチェックに入ったのは小笠原でした。それが、完璧に振り回されて置き去りにされてしまったのです。アイマールは、そのままドリブルでペナルティーエリアを進み、日本代表守備ブロックの視線と意識を釘付けにしたところで、(そのことで、ヴァイタルゾーンで完璧にフリーになった!)サビオラへ、まさに「置くような」ラストパスが通されたというわけです。

 完全に前を向き、フリーでパスを受けたサビオラ。落ち着いたサイドキックで、楢崎の届かないゴール右隅へ、ピタリと「ゴールへのパス」を決めたという次第。まあ、完璧に「やられた」先制ゴールでした。

 このシーンで、アイマールに守備ブロックが「振り回される」キッカケになった小笠原。彼が、安易にアタックに入らず「粘り強く」付いていけば、そうそうは簡単に「やられ」なかったはず・・。その数分前にも、ソラーリに、これまた完璧に抜き去られて決定的クロスを入れられたというシーンがありましたしね。このポイントについては、後でビデオで確認することにしましょう。

 まあ、中田英寿の、攻守にわたるダイナミックプレーが「評価基準」になる試合だから、小笠原の、攻守にわたって低い実効レベルが逆に目立ってしまったということもあるのでしょうがね・・。全体的には、決して悪い出来ではないのですが、どうも、プレーに積極性が欠け、攻守にわたる勝負場面で決定的な仕事ができない。例によって、ボールがないところでの「トロトロ・ジョギング」シーンも目についていましたしネ(だから、攻守わたる勝負ポイントに入っていくタイミングが遅れ気味!)。彼に言わせれば、「目立たずに移動し、勝負に爆発すればいい・・」ってな具合なんでしょうが、それで通じるのは日本だけ。狙いすました「爆発」が、ピタリとはまって実効プレーにつながるなんてのはね・・。

 あれ程の才能を持つ小笠原なのだから、もっと動きまわり、攻守にわたって自分主体で仕事を探しつづけなければ・・。それがあれば、意志が満載された全力ダッシュになってグラウンド上に現出してくるはず・・。それこそが、私がいつも書いている、本物の「グラウンド上の自己主張」なのです。

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 さて試合ですが、前半44分には、アルゼンチンが追加ゴールを挙げてしまいます。これまた「個の勝負力」がベースのゴール。

 アルゼンチン陣内に入った右サイドで、中田英寿と(!)競り合ってボールを奪い返したサネッティー。そのまま、当たり前のように勝負のドリブルを仕掛けてきます。「オレがシュートを決めてやる!」。そのドリブルには、そんな強烈な意志が込められていたのです。最初に当たりにきた稲本を(ファールで止めるいとまも与えずに!)振りきり、最後は、サビオラとの「シンプルなワンツー」で森岡まで振りきって「ドカ〜〜ン!」と、ゴール右サイドへキャノンシュートを決めてしまいます。「どうだ・・まだまだオマエたちには負けないぞ!」という気迫を感じさせられたものです。

 組織的なプレーでは、「世界との最後の僅差」はかなり縮まっていると感じる・・それでも、やはり「個のチカラ」では・・。とにかく、ハイレベルな組織プレーと、「ここぞ!」の単独勝負の高質なバランスに「世界」を見ていた湯浅でした。

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 後半、小笠原に代わってアレックス、中山ゴンに代わって大久保、そして中田浩二に代わって福西が登場します。もちろんアルゼンチンは、「もう、これでいい・・」と、少し引き気味にゲームをコントロールしようとするでしょう。さて・・。

 私は、よし!・・これで中盤と最前線でのダイナミズムが向上するはずだ・・と思っていました。選手タイプのバランスが向上しただけではなく、心理・精神的なダイナミズムも高揚するはずだと思ったのです。そして思ったとおり・・。

 まず後半6分。左サイドで、相手に囲まれながらも頑張って抜け出したアレックスが中央へ折り返します。そのクロスを、大久保がダイレクトシュート(日本代表の、このゲームでの初めての枠内シュート?)。それにつづく後半9分。コーナーキックから、秋田がヘディング一発! 日本が、「2-1」となる追いかけゴールを決めたのです。

 そしてゲームが、またまたダイナミックに変容していきます。厚い守備ブロックをベースに試合をコントロールしようとしていたアルゼンチンが、再び前へ重心を移動していったのです。彼らは知っています。一点リードの怖さを・・。

 再び、中盤ディフェンスでのダイナミズムの高揚を基盤にゲームを支配しはじめるアルゼンチン。だから私は、稲本・福西の守備的ハーフコンビの機能性や、大久保&アレックスの仕掛けの積極性と実効ある守備意識のレベル等々、これで、攻守にわたって(選手タイプの)バランスが取れた日本代表の真の実力をある程度は測ることができる・・と、小躍りしたものです。こんな機会はめったにない・・。

 そこからの日本代表は、立派なアクティブゲームを展開しましたよ。もちろん全体的なペースはアルゼンチンに握られているものの、前半のような「静の(守備主体の)拮抗状態」ではなく、攻撃でもしっかとり押し上げ、チャンスの芽を発展させていましたからネ。それに、攻め上がっても、次のディフェンスで大幅にバランスが崩れてしまうようなことも希。アレックス、大久保にしても、中田英寿と一緒に、攻守にわたって自信にあふれたプレーを展開しているのです。だから立派なゲーム。

 そんな展開の中で、攻守にわたって特筆のパフォーマンスを魅せたのは、何といっても大久保。

 彼の代表デビューは、「無我夢中で、何をやったのか覚えていない・・」というものでしたが、この試合では、とにかく攻守にわたって大活躍でしたよ。相手マーカーを背負ってボールを受けても、決して気後れすることなく、しっかりと身体で相手を抑えてコントロールしてしまう・・もちろんシンプルにやらなければならないときは、素早いタイミングでパスを回す・・チャンスとなったら、どんどんと自分から個の勝負を仕掛けてシュートまでいったり、ラストパスを狙ったりする・・そして守備では、爆発的なチェイシングから、ボールを奪い返してしまう・・。相手がアルゼンチンだったことを考慮すれば、もう、日本代表の「新しいヤングスター」の誕生だ!と、手放しで喜んでいいハイパフォーマンスでしたよ。

 このことは、もう25年来、本場サッカーを「現場レベル」で体感しつづけた確信から言うのですが・・「とにかくジーコは、このチャンスを逃すべきではない! 完璧にブレイクのキッカケを手中にした大久保を、このまま日本にとどまらせずに、絶対にコンフェデレーションズカップへ連れて行くべきだ! もしこのキッカケを失ってしまったら(そのまま風化させてしまったら)、彼が若いからこそ、次にはいつ訪れるやも知れない・・。とにかく、彼のようなタイプのプレーヤーは、今の日本代表にもっとも必要とされているのだから・・」。

 攻守にわたって、次の明確な積極プレー(仕掛け)イメージを持ち、自分自身で「アクト」できる大久保。日本全体がキミのようなプレーヤーを待っていた!!!

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 もちろんこれからも、山あり、谷ありでしょう。それでも、この試合で魅せた大久保の可能性は、確実にレベルを超えたモノでした。U22のゲームや「J」でのパフォーマンスから代表チームに招集し、そして実際にゲームに出場させたジーコの「確かな眼」を感じます。

 これからでもコンフェデのメンバーをいじることができるのですよネ?? これで大久保が連れて行かれないのだとしたら、もうキリンカップの意義はゼロになる・・。お願いですから、大久保の「ブレイクのキッカケ」を無駄にしてないで欲しい!!! そんなことを、心から願っている湯浅でした。

 あっと・・。森岡のマークミスで奪われた三点目(たぶん彼はオフサイドだと思ったのでしょうが・・あの状況では、石にかじりついてでも、シュートを決めたロメオに身体を預けなければならなかった!! これを二度とない学習機会とし、そのシーンを何度も何度もビデオで見返そう!)と、「サンデーシュート」だった四点目は、日本代表のゲーム内容が格段に良くなったからこそ本当に悔やまれる失点でした。

 まあそれは、日本代表と「世界トップ」との間には、まだまだ厳然とした「最後の僅差」が横たわっていることの証でもあります。その「事実」を明確にイメージしつづけることこそ(最後の僅差の正しい内容を、イメージトレーニングで把握しつづけることこそ)、次のステップへ進むための原動力になる・・。

 今日はここまでにします(いま、長居のホテルで仕上げました)。また、パラグアイ戦の内容と一緒に、コンフェデレーションズカップまでに「分析コラム」をアップしますので・・。




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