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ジーコジャパン(23)・・良い(攻守にわたって力強い)サッカーを展開した日本代表・・その背景には様々なポイントが・・(日本対カメルーン、0-0)・・(2003年11月19日、水曜日)

このゲームで私が注目していたポイントは、もちろん藤田俊哉と小野伸二。

 まず藤田ですが、彼については、仕掛けプロセスでのパスレシーブプレーに注目していました。その背景にある中心テーマは、近代サッカーのミッドフィールダーが、攻撃と守備、パスやパスレシーブ、ボール絡み、ボールがないところ等々、様々なタイプのプレーがバランスよく展開できなければならないということ。どうも今の日本代表を見ていると、「オレはパサーだ・・」というプレー姿勢が目立ち過ぎる選手がいることで、中盤での仕掛けがうまく機能しない(仕掛けパスがうまく通らない・・タテパスからの仕掛けコンビネーションがうまく回らない・・だからポゼッションの内容がよくない・・)というシーンが目立つと感じられるのです。

 積極的に(自分主体で)仕事を探すというプレー姿勢と、互いに使い・使われるという「メカニズム」に対する深い理解が、中盤における攻守の機能性のベースになるということです。だから、大きな動きをベースにしたパスレシーブプレーだけではなく、守備でもチカラのある藤田が入ることで、中盤での「選手タイプのバランス」が良くなるに違いないという期待がふくらんでいた湯浅だったのですよ。このテーマについては、先日のヨーロッパ遠征をまとめたコラムを参照してください(UEFAカップのレポートもミックスしていますが、メインテーマはジーコジャパン!)。

 また小野伸二については、もちろん守備的ハーフとしての機能性についてです。フェイエノールトでは、攻撃的ハーフとして抜群に存在感を高揚させている(プレーの実効レベルが高揚しつづけている)小野伸二ですが、日本代表では、またまた守備的ハーフ。たしかに攻撃では、後方からのゲームメイカーとして優れたプレーを魅せますが、守備では、どうかな・・という不安の方が先にきてしまう。とにかく、「そこで勝負が決まってしまう」という守備では、実質的な勝負プレーの内容だけが問われますからネ。さて・・。

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 試合は、両チームのダイナミズムが内包された膠着状態・・という表現がピタリと当てはまるような展開になります。両チームともに仕掛けようとはしているのですが、どうも相手守備ブロックをうまく崩していけない・・。

 カメルーンは、しっかりとした守備をベースに(守備の強さは折り紙つき!)、個の突破力を最大限に活かした直線的カウンターを仕掛けていくという試合運びを意識しているし、この試合での日本代表も、強い守備意識を前面に押し出す戦い方をしている・・。ということで、両チームともに、堅牢な相手守備ブロックの切り崩しに四苦八苦しているという展開なのですよ。

 それでも立ち上がり早速の2分、藤田が、期待通りの「影武者プレー」を披露してくれました。左サイドでアレックスがボールを持ちルックアップしたのを確かめた瞬間、二列目の後方から爆発ダッシュをスタートしたのです。脇目もふらずに最後まで走り抜ける全力ダッシュ。確信をもって、全力で走り抜けるフリーランニング。守る方にとって、一番いやなタイプのボールがないところでのアクションなのですよ。

 このシーンでも、その「確信」が抜群の威力を発揮します。トップの二人(柳沢と高原)をズバッと追い抜き、カメルーン最終ラインのウラに広がる決定的スペースへ走り抜けたとき、藤田は完全にフリーになっていました。マークの受けわたしをベースにするカメルーン守備ブロックにとっても、全力で「タテに走り抜ける相手の二列目選手」を確実に掴むことほど難しい作業はない・・。そしてそこへ、アレックスからのピンポイント勝負タテパスがピタリと合わせられたという次第。目の覚めるような素晴らしい崩しコンビネーション!!

 結局、藤田がダイレクトで「落とした」ところで潰されてしまいましたが、それは、チーム内での藤田の存在感が急激に高まった瞬間でした。「そうだ! 藤田の影武者フリーランニングがあれば、いくらカメルーンの守備ブロックが強くたって、そのウラを突いていけるぞ!!」。私も、「それだ!!」なんて叫んでいましたよ。勝負はボールのないところで決まる・・。特に「個の勝負レベル」では限界がある日本代表の場合は、その普遍的なコンセプトには絶対的な意義がある・・?!

 それだけではなく、日本代表は、前半12分にも決定的チャンスを演出してしまいます。それは、中田英寿が、ボール奪取から決定的パスまでコアになった仕掛け。最後は小野伸二が、完全にフリーシュートのチャンスを得ます。でも落ち着き「過ぎて」相手ディフェンダーに追いつかれてしまって・・。それにしても見事な崩しではありました。

 とはいっても、前半のシュート数は、日本が1本でカメルーンが4本。たしかに決定的チャンスという視点では日本に軍配が上がりそうですが、攻めの人数が足りないなど、どうも組織的な仕掛けがままならないという前半でした。

 ところで、前半12分の決定的シーンでカメルーンゴール前まで進出して決定的シュートを放ちかけた小野伸二。良くなっていますよ、ホントに。やはり彼は、インテリジェンス(コミュニケーション能力などなど)も含め、とにかくキャパシティーが高い選手だ。

 正確なポジショニングやスペースのケアー、ボールがないところでの守備(マーキング)など、予測ベースディフェンスの実効レベルは素晴らしい。例えば前半37分のボールがないところのディフェンス。パスを予測し、大外をまわって右サイドスペースへ飛び出す相手をマークしつづけ、最後は、パスされたボールに最初に追いつくというスーパーディフェンスも披露したのです(最後はゴールキックにした!)。そのシーンでは、スタンドから「オ〜〜ノ! オ〜〜ノ!」なんて歓声が上がったりして・・。観客の皆さんも、本当によく観ていますネ。

 もちろん攻撃になったときには、彼本来の才能タイプが光り輝きます。素晴らしいボールコントロールを基盤にした視野の広さと展開力。中盤の底にいるからこそ、彼のゲームメイクセンスが活かされるというわけです。フムフム・・。

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 意図と意志はダイナミックだったけれど、現象面では「膠着」だった前半に比べ、後半のゲーム展開はエキサイティングに変容していきました。

 まず最初の一発を繰り出したのはカメルーン。後半1分のことです。それは、まさに「カメルーンのツボ」というカウンターでしたよ。左サイドをフリーで駆け上がるカメルーン選手・・もう誰も追いつかない・・そして最後は、決定的クロスを送り込む・・もちろんシュートする素振りからのフェイク動作・・もちろんそこにはもう一人のカメルーン選手が走り込んでいる・・誰もが「アッ、やられた・・」と思った次の瞬間・・一人の日本人選手がギリギリのタックルで先にボールに触った・・アレックス!!・・まさに「サンキュー、アレックス!」というシーン・・。同じようなシーンは、後半30分ころにもありました。そこでは、カメルーンの一発カウンターからのピンチを、またまた彼が防いだ(最後は楢崎が身体に当てて防いだのですが、そこでのアレックスは、しっかりとマーキングに間に合っていた!)。

 この試合でのアレックスは、「まずディフェンスからゲームに入る!」という意識でプレーしていたのでしょう。全員が「この試合は絶対に勝つぞ!」という強い意志で統一されていたようですからネ。そのためには、まず守備を安定させる・・ということでしょう。そんなチームの雰囲気がアレックスの守備意識を高揚させ、それが彼の全体パフオーマンスを落ち着かせている(高揚させている)と感じました。

 そして後半は、中盤とのタテのポジションチェンジがうまく機能しはじめたことで、徐々に、アレックスと山田の攻め上がりの「頻度と質」も高揚していきました。やはり最初はディフェンスを落ち着かせてから・・という意識の発展プロセスが大事だということです(それによって高質な守備意識がすべての基盤になる・・だからこそ次の攻撃にも勢いを乗せることができる!)。

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 後半は、攻撃でも互角以上のコンテンツを魅せた日本代表。先月のヨーロッパ遠征での内容も含め、確実に良くなっていると実感させてくれました。

 とはいっても、細かな部分では、まだまだ考えさせられるポイントが多い・・。まず小野伸二。前述したように、攻守にわたる実質的なパフォーマンスは高揚しつづけています(前述のプレーだけではなく、後半4分に魅せた、美しいインターセプトからの展開パスプレーは秀逸!)。とはいっても、守備的ハーフとしては、まだまだ難しいポイントもある。何度か1対1の場面で置き去りにされたし、エマージェンシー状況でのギリギリのアタックが甘かったり・・。

 この面では、後半30分過ぎに交代した遠藤の方がやはり安定していると感じます。例えば後半37分のエマージェンシー場面。日本の右サイドで、山田と稲本が、一人のカメルーン選手にまとめて抜き去られます。次の瞬間、身体ごと飛び込み、ズバッとエマージェンシータックルを決めたのが遠藤でした。その吹っ切れた判断がいい。その強さがいい。だから、ギリギリのディフェンス勝負場面では頼りになる。そんな「細かいけれど決定的なディフェンスのポイント」で、小野伸二には、まだまだ不安感の方が先に出てくるというわけです。レアル・マドリーのグティーのようにね(やはり守備的ハーフコンビは、ベッカムとエルゲラでしょう!)。まあ小野にしたら、ボールがないところでのディフェンスがまさに素人レベルのグティーと比べられるのは不満でしょうけれど・・。

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 良くなっている日本代表ですが、この時点でピックアップできそうなもう一つのポイントは、やはり中村俊輔。この試合で彼の「代役」としてプレーした藤田俊哉は、冒頭で書いた決定的フリーランニングからのチャンスメイク以外にも、攻守にわたる「影武者」として、抜群の実効プレーを披露していました。

 何度も書いているように、日本代表の攻めの中心はやはり組織プレーですからね。だから素早く、広くボールを動かさなければならない・・だからこそ、選手たちは「例外なく」しっかりと動くことで、互いに使い・使われなければならない・・それが、一つのプレーイメージに固執する選手が一人でもいたら・・というわけです。

 この試合では(特に後半!)、ジーコジャパンの大きな課題の一つだった「ポゼッションの内容」が好転したと感じました。要は、横パス(安全パス)とタテパス(仕掛けパス)のバランスが良くなったということです。ボールがないところでの職人ワザ(=個人事業主の自己主張プレー!)とも表現できそうな藤田のプレーが、その「好転」の大きな部分を担っていたことは疑う余地がありません。

 この試合での中田英寿のパフォーマンスは、攻守にわたって「スーパーレベル」だったと思うのですが、そこでも、藤田の「プレーコンテンツ」が大きく貢献していたことは言うまでもありません。

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 とにかく私は(小野伸二と中村俊輔の使い方というテーマで!)、強さと(日本的な)美しさを兼ね備えたチームを作り上げるという当面の目標を達成するためには(まず予選突破のために・・そしてドイツW杯での世界に対するアピール!)、選手タイプのバランスという発想が重要だと主張しつづけます(それについては、以前サッカーマガジンで発表した文章を参照してください・・しつこいですけれど・・)。

 もちろん小野にしても中村にしても、自分のクラブで展開している優れたプレーで誇示しているように、(彼らの才能コンテンツに見合うカタチで!)どんどんパフォーマンスをアップさせていることは周知のとおりです。とはいっても、バランスのとれた日本代表チームを作り上げるという視点では、どうしても「バッティングする」部分が出てきてしまう・・。難しいテーマではあります。

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 試合中から書きはじめ、試合後もスタジアム(大分ビッグアイ)で書きつづけ、いま大分市内のホテルで書き上げたところです。まだまだ消化不良の部分があるので、どうも気持ちよくないのですが、まあとにかく第一報としてアップしておきます。フ〜〜ッ。




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