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ジーコジャパン(7)・・注目に値するコンテンツが、あまり見あたらないゲームでした・・日本代表対韓国代表(0-1)・・(2003年5月31日、土曜日)

たしかに、守備ブロックは安定している・・でも、どうも攻撃のダイナミズムが・・。

 前半の日本代表は、いいゲームを展開していましたよ。韓国に対して決して当たり負けすることなく、個人のスキルで引けをとるわけでもなく、はたまた心理・精神的に凌駕されることもなく。とにかく自信と確信がみなぎる安定した(落ち着いた)ゲームを展開していたのです。もちろん、その自信と落ち着きの源泉は、安定した中盤ディフェンス。それでも、ボールを奪い返した後の攻撃では、サポートが薄く(素早く、広くボールを動かすことができない=韓国守備ブロックを振り回すことができない)、また効果的な「個の勝負」も出てこないことで、思うように「変化」を演出することができない・・どうしても、韓国守備ブロックの「ウラ」を突くことができない・・。

 韓国は、やる気十分(・・と見せかけていた?!)。先発の布陣は、ソル・ギヒョン、チャ・ドゥリ、チェ・ヨンスのスリートップです。ガツン!ガツン!と、トップへボールをつけて、そこへ中盤が押し上げていく・・という例によってのイメージで攻め上がろうとします。それでも、安定している日本の中盤ディフェンスが、そんな韓国の攻撃イメージを効果的に断ち切ってしまう。稲本潤一と、素晴らしく安定したダイナミックプレーを展開する中田浩二が、ピタリ、ピタリと、ボールの出所を抑えてしまうのです。

 そこでは、稲本の身体能力の高さと、ハイレベルな守備テクニックが目立つ、目立つ。決して「前でのボール奪取勝負」ばかりではなく、ボールがないところでの忠実マークや、全力でのチェイシングなど、目立たないところでの実効プレーも魅せつづけます。格段に力強くなった彼のプレーは、ウルグアイ戦で証明済みなのですが、私は、そんな攻守にわたるダイナミックなプレーを見ていて、一時期「彷徨」していた稲本が、本来のプレーを取り戻したと確信したものです。それでも、フラムでは、その後も出番に恵まれず・・。まあ、彼の復活を予言し、それに期待していたジャン・ティガナ監督の辞任という不運もありしまたがね。

 とはいっても、たしかに守備は安定していたものの、攻めはうまく組み立てられない。もちろん韓国守備ブロックが堅いこともあるのですが、それにしても・・。個人で仕掛けていけるという期待が持てるのはアレックスくらい。よく動きながら効果的にパスレシーバーになる小笠原にしても、自分から仕掛けていこうとせず、展開パス(安全パス)を回して足を止めてしまうというプレーの方が目立ってしまって・・。

 最前線は、中山ゴンと鈴木なのですから、とにかく彼らには素早いサポートが絶対に必要なのですよ。彼らには、一人では突破するだけのチカラはありませんからね。だからこそ、小笠原やアレックス、稲本や(たまには)中田浩二たちが、タイミング良くサポートしなければならないのに・・。

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 後半に入り、韓国のプレーが大幅にパワーアップしてきます。もちろんその源泉は中盤でのディフェンス。日本の展開パスが入るところには、確実に「数的優位な状況」を作り出してしてボールを奪い返してしまうのです。もちろんその背景には、日本側のボールの動きが「より」緩慢になっていったこともあります。そして、ボールを奪い返した瞬間から、例によっての、意を決した強引な(積極的な)仕掛けに入っていくのです。強引な突破(リスクチャレンジ)からの強引なクロスや、強引なミドルシュート(この正確なミドルシュートが効果的で危険)。もちろんそれも彼らの仕掛けイメージに入っているからこそ大きなチャンスにつながるというわけです。

 韓国の攻勢の背景には、後半10分過ぎにチェ・ヨンスとチャ・ドゥリと交代した、アン・ジョンファンとイ・チョンスの登場がありました。何といっても、最前線での「単独ドリブル勝負」というオプションが増えましたからね。逆に日本にとっては、急に、馴染みのない「仕掛けタイプ」が登場してきたということになります(もちろん日本の守備ブロックは彼らのプレーを明確にイメージできていたにしても、仕掛けのリズムが変わったことが大きい・・)。

 それは、韓国コエリョ監督のクレバーな采配でした。前半は落ち着いたゲームを展開し、後半に勝負をかける・・。もちろん、「駒」を持っているからこそ計画できるゲーム戦術ではありますがね。

 そんな攻勢に出てきた韓国に対し、日本は押し返すだけのパワーを増幅させられない。もっとボールがないところでのサポートの動きを活性化しなければ、スムーズにボールが動かないし、パスレシーバーが孤立してしまう・・もっと、中盤でのディフェンスを活性化させなければ、中盤を制圧されてプレスの餌食になってしまう(そして、足が止まり気味になる心理・精神的な悪魔のサイクルへ)・・。

 後半では、特に小笠原とアレックスのプレーに注目していました。何といっても彼ら二人には期待するものがありましたからね。でも結局は、肩すかし。「ここしかない」という場面ではしっかりとパスレシーブの動きには入っているけれど、パス&ムーブが甘いしディフェンスも「受け身」になってしまっている・・。だから、攻守にわたる意図が満載された全力ダッシュも減退の一途をたどってしまって・・。

 先月の韓日戦では、「これは・・」と期待を抱かせてくれた小笠原でしたが、結局このゲームでは、ペースアップを鼓舞するような(仲間に刺激を与えるような)中盤のリーダーになれず、どんどんと「リアクティブなプレー(相手のアクションに反応するだけのプレー)」に終始するようになってしまいました。先月のゲームで魅せた自己主張はどこへ・・。

 また、選手交代も納得いくものではありませんでした。後半20分での、稲本(遠藤)と鈴木隆行(大久保)の交代。決して、遠藤と大久保のプレーが悪かったわけではありませんが(でも、最後の時間帯に、中央ゾーンでボールを持った大久保が、勝負するのではなく横パスを出したのは残念至極・・若いのだから、とにかくチャレンジ!)、この時点でチームに必要だったのはレベルを超えた「刺激(リーダーシップ)」だったはず。(たしかにペースは落ち気味でしたが・・)中盤のダイナモとして機能していた稲本と、最前線で、攻守にわたる汗かきプレーを展開していたこの二人がいなくなってしまったら・・。

 この交代の直前には、攻守にわたる中盤ダイナミズムを活性化させた日本代表が、再びペースアップした時間帯もあったから、なおさら残念に感じていたというわけです。もちろんフレンドリーマッチだから、多くの選手に経験を積ませるというのも、この試合でのミッションの一つではありますが・・。

 前半のシュート数は、日本が「1本」、韓国が「2本」。それに対し後半のシュート数は、日本の「1本」に対し、韓国は「13本」もブチかましてくれましたよ。そしてそのうちの一本が、見事なカウンターからの決勝ゴールとなって(韓国チームにとって)実を結んだという次第。まさに、ここ一発の韓国の執念・・という素晴らしいゴールでした。

 押し上げた名良橋のタテパスがカットされ、ダイレクトで、左サイドに残っていたイ・ウルヨンに通る・・ゴール前では完全に「3-3」・・もちろんイ・ウルヨンには秋田がチェックにいったから、日本ゴール前では「3-2」という数的に不利な状況になる・・そして、森岡と服部が、ゴール前スペースへ走り込む相手(ソル・ギヒョンとアン・ジョンファン)に「前」に入られてしまう・・そこへ、イ・ウルヨンから、ピタリの「トラバースパス(GKと守備ラインの間を、ゴールラインに平行に走るラストパス)を通されてしまう・・最後は、ソル・ギヒョンがスルーし、背後スペースに、服部を抑えるように入り込んでいたアン・ジョンファンが難なくゴールをゲットした・・。

 日本最終ラインをブッちぎったユー・サンチョルに対する森岡のファール(ユニフォームを引っ張った!)をレフェリーが見逃したり(ファールが取られていたらPK!)、楢崎がキャッチするはずだったボールが、先にヘディングされてほとんどゴールに入っていたり(ゴールライン上でクリア?!)と、後半には完全に内容で凌駕した韓国でしたから(全体的なゲーム内容からすれば)、まさに順当に勝ち取ったという決勝ゴールでした。




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