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ジーコジャパン(26)・・「U20」につづきフル代表も、ギリギリの勝負マッチだからこその発展を遂げた・・ライバルがいるという至福・・(日本対韓国、0-0)・・(2003年12月10日、水曜日)

「オレは、どんな結果に終わろうと、彼らのプレー姿勢を誇りに思うよ・・」

 このゲームは、偶然となり合わせたドイツ人ライター、マルティン・ヘーゲレと話し合いながら観ていたのですが(彼は東アジア選手権とトヨタカップをレポートするために来日)、そのなかで思わずマルティンに声をかけていたというわけです。「そうだな・・日本代表は、一人足りないにもかかわらず素晴らしく積極的なプレーができるようになったな・・」。マルティンも同様にポジティブな印象をもっていたようです。もちろんそれは、後半20分過ぎから日本代表が魅せた積極プレー(攻守にわたるリスクチャレンジプレー)のことです。

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 そのとき、もうこうなったら、一人足りない日本代表のゲーム内容だけに集中しよう(特にゲーム中の成長という視点!)と意を決していました。もちろんそれは、前半17分に、大久保が、シュミレーションで二枚目のイエローを食らって退場になったときのこと。

 たしかにアレはシュミレーションでした(たしかにシュミレーションを取れても仕方ないシーンでした!)。後ろ足(地面を蹴る足)を「引きずって」いましたからネ。だからタックルしてきた相手が出した足に引っかかる(引っかかることを意図して後ろ足を引きずった?!)というわけです。それは、まさにシュミレーションを取られる典型的なケース。まあ仕方ない・・。

 「J」も含め、ここのところ大久保が露呈している自己規制できない興奮気味のプレー姿勢(危険なアタックを仕掛けたり審判に暴言を吐くなどといった子供じみた態度=即イエローやレッド!)については、様々なメディアで採り上げられ、批判されているとおりです。もちろん彼自身も、それが自分自身にとってだけではなく、チーム全体にとっても取り返しがつかないほどマイナスだと理解はしているでしょう。

 まあ、まだアロガント(思い上がり)傾向が強いということです。オレは特別だ・・という思い上がり。とはいっても、それもまた彼の「ポジティブ個性」であり、強烈な自己主張の現れ(=発展にとってプラスの姿勢)という視点もあるから難しい。要は、マニュアル通りに強制的に矯正する方向の対処と同時に、大久保が(自分自身とチームのために)自己規制・我慢できるようになるために前向きなアドバイスも与えなければならない(自覚向上に対する助力を与える)ということです。これもまたバランス感覚。

 私は、下腹のツボに「気」を注入することで(息を、そこへ向けて吸いこむ!)、ネガティブなエモーション(情緒エネルギー)をコントロールするというトレーニングを勧めます。気功の一種ですかネ。冗談ではなく、その方法をマスターしたら効果抜群なのですよ。

 とにかく、大久保という才能が潰れないように(ブレイクスルー現象がマイナス方向へ抑制されないように)注意深く取り扱うことが肝心です。もちろん、もし自分自身を見つめ直すという姿勢が出てこなければ究極の選択をせざるを得なくなると意識させる(脅す)くらいの覚悟がなければ、説得にも力強さを欠いてしまうでしょう。だからこそバランス感覚。常に「究極の選択肢」をもっていると相手に感じ・理解させるのは大事なことです。社会では、それを「抑止力」と呼ぶわけです。でも「抑制」し過ぎたら去勢されちゃうかもしれない・・。いや、難しい。だからこそコーチには、「優れた心理マネージャー」という能力も求められるというわけです。

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 さて試合レポート。

 とにかく、大久保の退場劇があったことで、何を導入部にして書きはじめようかと迷ってしまいました。そんな状況で目立っていたのが、攻守にわたって積極的なプレーを展開していた小笠原だったのです。

 彼のプレーで、最初に「オッ!!」と気を引かれたのは、まだ大久保が退場になる前、前半12分の「ボール奪取&勝負タテパス」プレー。20メートルの全力ダッシュで「韓国の次のパスレシーバー」へ寄り、フェアなアタックで見事にボールを奪い返した小笠原が、間髪を入れずに、そのサイドのウラスペースへ全力フリーランニングをスタートした久保へのタテパスを通してしまったのです。久保のスタートタイミングからも、小笠原に対する強い信頼感が如実にうかがえたシーンでもありました。とにかく、それがインプレッシブだったから、小笠原に対するこちらの注目度も自然と上がっていったというわけです。

 そして大久保が退場になってからは、攻守にわたって、彼のプレーがより活発になっていった。そのプレー姿勢からは、「中盤守備やチャンスメイクだけじゃなく、オレもシュートへいくぞ・・」なんていう強い意志を感じたものです。

 第一戦(中国戦)の前半では、無為な様子見が目立っていた小笠原。まあ、久しぶりの日本代表のゲームということもあったのでしょう。でも、時間の経過とともにプレーに「実」が詰まっていったと感じました。特にボールがないところでのプレーの実効レベルが高い。やはりプレーの全体ダイナミズムは、ボールがないところでのプレーの質によって決まってくるということです。

 そんな小笠原の活躍もあって、(一人足りないにしては)前半の日本代表のプレーコンテンツは高質でしたよ。全体的には膠着状態。でも、攻守にわたる一つひとつの「流れのコンテンツ」では、日本も大いなる存在感を発揮していたのです。要は、攻守にわたる意図(戦術的な組織プレーイメージ)の質と、それを、共同作業として実行していく意志の強さで韓国に堂々と渡り合っていたということです。一人足りないにもかかわらず・・ネ。

 そんな好調なプレーリズムの背景には、何といってもダイナミックでクリエイティブ、そして忠実で堅牢な守備ブロックがいました。遠藤と福西の守備的ハーフコンビ・・宮本、坪井、中澤のセンタートリオ・・そして山田とアレックスの両サイドコンビ。

 その組織がカチッと決まっているからこそ小笠原の「勝負所ディフェンス」が殊の外効いてくる・・。いや、小笠原の前からのクリエイティブ守備があるからこそ、守備ブロックがカチッと決まる・・とも言えるかな・・。とにかく、選手個々の「高い守備意識」をベースに、それぞれの守備プレーが「有機的に連鎖」しつづけていたということです。だからこそ次の攻撃にも、後ろ髪を引かれない勢いを乗せられた・・。

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 後半、ジーコが勝負をかけてきます。

 中澤と本山、福西と藤田が交代。要は、守備的な二人が攻撃的な二人と入れ替わったということです。そして、フォーバック&ワンボランチにする・・。ジーコは、前半の安定した戦いから、より積極的に前へ仕掛けていくという勝負(リスクチャレンジ)への明確な意志を示したのです。

 優勝するためにはどうしても勝たなければならない・・にもかかわらず、大久保が退場になってしまった・・とにかく攻撃に人数をかけなければ勝機はない・・本山はトップに張らせる・・小笠原と藤田は、中盤での攻守にわたるバランシングプレーをさせる・・この二人ならば守備もできるから中盤ディフェンスが薄くなり過ぎることはないだろう・・よし、ここは勝負だ・・ってなことだったんでしょうかネ。

 でも最初の20分間、その「兆候劇的布陣」はうまく機能しませんでした。中盤ディフェンスの機能性が低落してしまったのです。そのことで、チーム全体のダイナミズムも大きく減退してしまった・・。遠藤、藤田、小笠原、本山の守備コンビネーションがうまく機能しない・・そのことで韓国にペースを握られっぱなしになってしまう・・だから次の攻撃でも、人数をかけられない・・また本山のプレーが「まだ」受け身で消極的ということで、どうしても単発の仕掛けになって簡単にはね返されてしまう・・。悪魔のサイクルにはまった日本代表・・。

 ところが後半も20分を過ぎたあたりから、日本の攻めの勢いが急激に高揚していくのです。そのキッカケは、何といってもシュート。小笠原が、本山が、はたまた久保が、(単発の仕掛けとはいえ)惜しいシュートを放つのですよ。そしてそれにともなって日本の押し上げの勢いが高揚し、中盤ディフェンスもうまく機能するようになっていったというわけです。

 惜しいシュートシーンが出てきたことで、選手たちが「よし、行けるぞ・・」と押し上げはじめた・・それに伴って、人数をかけた組織的な仕掛けもできるようになっていく・・同時に小笠原と藤田の「前後の動き」も激しくなり、攻守に絡む実効度がアップしただけではなく、両人の「バランシングプレー」も研ぎ澄まされていった・・ということです。

 そんな実効あるディフェンスアクションで目立っていたのは(まあ全員が素晴らしくアクティブな実効ディフェンスをつづけていたけれど・・特に・・)遠藤と宮本。ある時間帯は、まるで「ノーガードの打ち合い・・」なんていう状態になったのですが、そこでこの二人が魅せつづけたクリエイティブで実効あるリスクチャレンジ守備プレーは、まさに「頼り甲斐」そのものでした。

 ところで最後の時間帯、宮本が二本もシュートを打ちました(そのうちの一本が、終了間際の決定的ヘディングシュート!)。要は、それだけ日本代表が、勝負のリスクチャレンジをつづけていたということです(もちろんその背景には藤田と小笠原のバランシングプレーもあった!)。

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 そんな、活気が詰まったアグレッシブプレーのオンパレードというゲーム内容に発展したのは怪我の功名だった?! まあ、そうとも言えそうです。何せこのゲームは勝つしかなかったし、そんな状況であるにもかかわらず大久保が退場になってしまったのですからね。そこで吹っ切れたジーコが、賭けに出た・・そして、モタついていた選手たちも、最後は吹っ切れたギリギリのリスクチャレンジプレーができるようになった(ノーガードではなく、抜群の運動量アップによって攻守にわたる有機的プレー連鎖の厚みが増した!)。

 最後に、冒頭で述べた「日本代表の選手たちを誇りに思う・・」という言葉の意味を述べておきます。それは、彼らが、「自分主体」でゲームの流れを逆流させられたことに対してです。たしかにジーコの意志も背景にあったでしょうが、結局は、選手たち自身が、自分たち主体でゲームをを活性化させたのですよ。それこそ、ギリギリの勝負ゲームだからこその「ブレイク」と呼べる現象でした。

 「U20」につづきフル代表も、攻守にわたる吹っ切れた闘いという視点で「何か」を獲得し(学習し)一皮剥けた。ここでも、「ライバル」がいることの効用を体感していた湯浅だったのです。まあ日本代表の場合は、組織内ライバル(=フェアな競争環境の整備=チーム内テンションの健康的な高揚・・)等という意味合いも含みますがネ・・。




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