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ジーコジャパン(17)・・様々な視点のバランスがうまくとれた代表チームが発展方向へと動きはじめた・・日本代表対ナイジェリア代表(3-0)・・(2003年8月20日、水曜日)

来日が遅れただけではなく、試合の前日トレーニングだというのに選手がそろっていない・・それも、こちらが期待する「パフォーマンス保証」のある選手たちは皆無・・これほど甘く見られた国際Aマッチは近年希だなんてちょっと憤っていたから、日本代表がボコボコにやっつけてくれて気がスッと晴れた・・。それにしても、記者会見での「このチームから何人が2006ワールドカップへ行くのか・・」という質問に対し、ナイジェリア監督が「たぶん二人くらいは・・」と答えていたのには閉口しました。マッチメイキングのマネージメントに対し、首をかしげざるを得ない・・。

 ナイジェリアは、スタープレイヤーが揃ったトップ代表チームでも、攻守にわたって、「組織プレー」に問題を抱えています。だから、この三軍が(ちょいと言い過ぎ?!)、個人プレーばかりに奔る低級サッカーに終始したのも当然だと思っていました。

 守備では、こんな低級プレーのオンパレード。例えば・・自分自身がボール奪取できるようなボール絡みのシーンでしか忠実なディフェンスをやらない・・日本のボールホルダーに対するチェックやプレッシャーはお座なりで、前に突っ立っているだけ・・ボールがないところで動いた日本選手には、ほとんどのケースでフリーでスペースへ走り込まれてしまう・・また、簡単にワンツーで置き去りされてしまう・・。そんな体たらくなのです。

 また攻撃でも、とにかく単独ドリブル突破で局面を打開していくという仕掛けイメージしか持っていないと感じます。もちろんたまには、フリーランニングとスルーパスがシンクロする場面はありますが、それもミエミエのタイミングとコースですから(要は、追い込まれ、その仕掛けしかなくなったから!)、日本の守備ブロックにとっては、まさに「ノー・プロブレム」。

 たしかに、高原が挙げた先制ゴールの後20分間くらいは、ナイジェリアがボールを支配する時間がつづきました。でも、個人能力をごり押しする仕掛けですからね、日本の最終ラインを崩すシーンを演出できないのも道理なのです。そんなだから、逆に、日本代表が展開する、ハイレベルな「組織連携ディフェンス」ばかりが目立ってしまって・・。

 また日本代表は、攻撃でもナイジェリアを凌駕します。胸のすくような軽快なリズムでボールを動かしながら、ズバッ、ズバッと、ナイジェリア守備ブロックの薄い部分(人数が足りないゾーン)を突いていくのです。たしかに最終勝負シーンでは、ナイジェリアディフェンダーの身体能力の高さがかいま見えるシーンもありましたが、ボールがないところでの勝負の動きを「パス」で活かしていくという日本代表の「攻めのアイデア」には、とってもかなわない。何度ナイジェリア守備陣が、自分たちのウラに広がる決定的スペースを突かれたことか。

 「自由」を標榜するジーコジャパンの攻撃には、たしかに、ココゾの勝負で威力を発揮するかもしれない「得意なカタチ」は明確には見られない。それでも、しっかりとしたボールの動きを基盤に、相手守備ブロックの薄い部分を突いていくという基本的な攻めの発想は、着実に浸透してきていると感じます。選手たちは、「自由さ」をうまく活用し、パス、ドリブル、タメなどを駆使した「変化」をうまく演出できるようになってきているということかもしれません。とにかく攻撃(仕掛け)における絶対的なキーワードは、互いのプレーイメージのシンクロレベルを高揚させることなのです。

 ところで、このゲームで非常に残念だったことがあります。それは、ナイジェリア代表が弱かったことで、内容で完璧に凌駕する素晴らしいパフォーマンスを魅せた日本代表のサッカーが、あまり際立たなかったことです。強い相手と戦っていたら、この試合で魅せた優れたパフォーマンスの輪郭がより明確なっただろうし、内容的に、もっともっと良いモノが引き出されたに違いないと思うのですよ。とにかくこの試合で日本代表が展開した、攻守にわたるダイナミックなサッカーが、コンフェデレーションズカップ当時から比べて、着実に発展をつづけていると感じさせてくれたことだけは確かな事実でした。

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 ところで、ジーコ自身が語った(目指している)とされる「ポゼッションサッカー」について一言。

 自チーム内でボールをキーすることをプライオリティーにするという戦術的な発想?! キープする時間が相手よりも長ければ、ゴールを奪う確率も高くなる?! 本当に、そうなのかな?? とにかく私には、その本当の意味が判然としません。ボールをキープすればするほど相手ディフェンスの組織が整って攻めにくくなるし、安全な横パスをつないでキープしても、それが効果的な仕掛けにつながらなければ意味がありません。また相手が強かったら、ポゼッションサッカーなんて叶うはずがありませんしネ。でもジーコが目指しているのは、そんなポゼッションサッカーだと言われる・・。

 それは、違うんじゃありませんか?! ジーコが言いたかったことは、闇雲にタテへ行くのではなく、もっと慎重に仕掛けていけ・・相手ディフェンダーが狙っているところへ、仕掛けのタテパスを出して簡単にボールを失うよりも、一旦パスをつないでボールを確実にキープして「やり直す」方がいい・・そして、より可能性が高い場面で勝負のタテパスを送り込むのだ・・といったことでしょう。彼は、チーム戦術的な意味での「組織的なタメ」を意図していると思うのですよ。ボールをキープすることが「目的」ではなくネ・・。

 ポゼッションサッカーにしても「自由」にしても、どうも「見せかけのキーワード」ばかりが先走りしてしまう傾向が強い日本サッカー界。ちょいと冷静になって考え直してみることも必要だと思うのです。もちろん「そのこと」が、ジーコ批判をするための「ツール」ならばハナシは別ですが・・。

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 さてジーコジャパン。

 彼は、このチームをベースと考え、できる限り長い時間一緒にプレーさせることで、チーム内の「プレーイメージ」を、より高質にシンクロさせたいと思っているようです。

 ここでいう「このチーム」とは、GKとツートップを除いた最終ラインと中盤ラインのことでしょう。

 山田暢久、宮本恒靖、坪井慶介、アレックスで構成される最終ライン。そして、(ダイナミックな汗かき)遠藤保仁、(フットボールネーションの本格感を前面に押し出しつづける頼もしいボランチ)稲本潤一、(ジーコジャパンで大きくブレイクした)中村俊輔、そして絶対的キャプテン中田英寿で構成する中盤。フムフム・・。

 まあ、最終ラインについては、マリノスの二人(松田と中澤)や森岡なども視野に入れているはずですし、中盤でも、小野伸二だけではなく、中田浩二や小笠原満男、進境著しいヴェルディーの山田卓也など、猛者が目白押しです。

 そのテーマに関連して、こんな興味深い質疑応答がありました。試合後の記者会見。その最後に、サッカーマガジン編集長の伊東武彦さんが、こんな質問をしたのです。「たしかに遠藤は良いプレーをしたが、小野伸二が戻ってきたらどうなるのだろうか・・最初貴方は、彼が入った黄金のカルテットをイメージしていたはずだが・・」。的を射た質問です。まさにそこが聞いてみたかった・・。

 それに対するジーコの答えは、誰もが納得するような素晴らしいコンテンツが詰め込まれたものでした。

 「小野の能力は高い・・経験もある・・早く帰ってきて欲しい・・とはいっても、レギュラーポジションを獲得できるかどうかは別問題・・チャンスを確実にモノにした遠藤は、縁の下の力持ちとして素晴らしいプレーを魅せてくれた・・誰がレギュラーかはまだ決まっていない・・遠藤を上回る活躍を魅せなければレギュラーポジションは得ることはできない・・」

 伊東武彦さんの的を射た質問。そしてジーコから返されてきた、内容のある真摯な回答。こんなに充実した記者会見は久しぶりでした。

 とにかく、チーム内での健全な競争環境を整備するなど、本当の意味で監督らしくなってきたジーコ。そんな彼を見て、胸をなで下ろしていた湯浅でした。

 もちろん、これからもしジーコが「このチーム」に固執し過ぎたら、またまた偏った問題が発生してくるに違いありません。とにかく、監督にとって最も大事なファクターが「優れたバランス感覚」という表現に集約されることは、サッカーの歴史が証明している真実なのです。それについては、以前の「ピックアップコラム」を参照してください。

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 最後に告知ですが、このHPで発表した文章のうちのいくつかを、インターネットHPとは性格の異なるメディアである「携帯電話・iモード・サイト」でも載せることにしました。

 それは、たぶん皆さんもご存じのメジャーサイト、「サッカー三昧」。まだ「最初のトライ」段階ですから、これからどうなるかは分かりません。それでも、なるべく多くの方々にサッカーを語ってもらいたい・・そのために、できる限りのコミュニケーションリソースを提供したい・・という私のアクションコンセプトに準じるものだと思っているわけです。さて、どうなることやら・・。




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