この組み合わせの第一レグでは、ハンブルクが、ホームで2-1と勝利をおさめており(以前のレポートを参照・・決して褒められた出来ではなかった!)、ここでは引き分けでも二回戦進出という有利な立場だったにもかかわらず(まあ、錯綜した心理ゲームでもあるサッカー的には決して有利とはいえませんがネ・・)、結局は「3-0」という完敗を喫してしまいます。これで一回戦敗退。UEFAカップ一回戦でのアウトですからネ。リーグブランドネーションのクラブとしては、まさに惨敗といえます。
高原は、90分を通してプレーしました。決して出来が悪かったワケじゃありませんが、「個の突破」で詰まったゲーム展開を打開するというわけにはいきませんでした。もちろん「個の能力」という視点では、ハンブルガーSV全体が「足りない・・」ということなのですがネ・・。
試合ですが、総合力では明らかにドニエプルを上回るハンブルクが、確実なボールキープで試合の流れをコントロールするという展開から入ります。それでも、立ち上がりの前半7分、ホームのドニエプルがCKから先制してしまうのです。その後はハンブルクも押し返してチャンスの芽は感じさせてくれますが、どうしてもドニエプルの強化ディフェンスを崩し切るところまでいけない。そこでドニエプルが魅せた優れたディフェンスには目を見張らされました。
意図が連鎖する組織的ディフェンス・・特にボールがないところでの守備が忠実でダイナミック・・また局面での勝負でもねばり強い・・だからハンブルクは(ボールがないところでの動きが停滞気味になっていることもあって)組織パスプレーとフリーランニングのコンビネーションでは崩しきれない・・そんな状態だからこそ「個の勝負」が重要なポイントになってくるのだが・・。
個の勝負では、マハダビキアが、ある程度は存在感を発揮できていました。でもトップセンター高原は、相手マークがかなり厳しかったこともあってチャレンジがままならず、期待されたヤロリームにしても、まったくといっていいほど相手守備ブロックを崩すところまで仕掛けていけない。またバルバレスのプレーにも冴えが感じられない。
ボールキープ率では上回るハンブルクなのですが、うまく最終勝負を仕掛けるところまでいけない。もちろんそれは、ドニエプルが意図する試合展開だったということです。そんな展開だから、どうしても守備ブロックからも人が「出ていく」ことで、ハンブルク守備ブロックが薄くなってしまう・・その間隙を突いて、ドニエプルが、効果的なカウンターを繰り出していく・・そして実際に(後半の中盤を過ぎたあたりから)追加ゴール、だめ押しゴールと次々にカウンターを決めてしまう・・フ〜〜・・ってな、相手のツボにはめられ完敗を喫したハンブルクといったゲームでした。
ブンデスリーガでは、やっと調子を取り戻しつつあるのに、国際舞台では惨敗を喫してしまったハンブルク。それが、国内リーグ(ブンデスリーガ)に悪い影響を及ぼさなければいいのだけれど・・。
とにかく、マイチームが国際舞台から姿を消してしまったことで、楽しみが一つ減ってしまったと肩を落としている湯浅でした。
さて、では次の「雑感」に入りましょう。ジーコジャパン・・。
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「ボクは、スペースへパスを出すことと、スペースでパスをもらうことが得意です・・」。先日、知り合いの方から、中田英寿が中学生の頃、すでにこのような内容のコメントをインタビューで語っていたと聞きました。すごいネ、ホントに・・。
いまチュニジア戦、ルーマニア戦のビデオを簡単に見直しています。まあ観察の骨子はミッドフィールドなんですが、そこで中田英寿が魅せつづけた実効プレーの数々に改めて感嘆しながら、冒頭に紹介した中田のコメントを思い出していたというわけです。
たしかに「上手さ」では小野や中村の方が上でしょう(ここでの上手さの定義が問題の本質なのです・・でもそのテーマはまた別の機会に・・)。それでも実戦での実効プレーレベル(プレーコンテンツの実効レベル)では大きな開きがあります。攻撃でも、守備でも・・。
たしにか小野にしても中村にしても、守備意識は格段に高揚していると感じさせてくれました。これは試合後のレポートで書いたとおりです。攻守にわたるボールがないとろでのプレー意志の高揚。それでも、ビデオを見直してみると、やはりまだまだだと感じるのですよ。もちろんそれが、彼らの天賦の才と、うまく回りはじめた中盤(ゴールデン?!)カルテットの機能性の「更なる」高揚に対する期待値の高さを基準にした評価であることは言うまでもありません。
守備では、高い守備意識をベースにした確実なポジショニング(もちろんポールがないところでの、全力ダッシュも含めた素早い移動!)はいいのですが、実際のボール奪取となると心許ないし、ここぞ!というボールがないところでの勝負ディフェンスにも不安が残ります。
ここぞ!の勝負ディフェンス・・。「現象面」は、ボールがないところでの忠実マークを基盤にした中盤での効果的な勝負アタック(インターセプトアクションも含む!)など。味方との守備コンビネーションプレーイメージでは、例えば、中田や柳沢たちが前線から激しいチェック(チェイシング)アクションに入った状況でしっかりと「次」を狙っているプレーです。そんな状況で、何度、相手の苦し紛れの逃げパスを「カット」できないという守備での失敗シーン(間合いを空けすぎてアタックタイミングに遅れたシーンなど)を目撃したことか。また、それに関連しているのですが、相手ボールホルダー(パスレシーバー)に対するチェックの遅さも目立ちます。もっと忠実に、そして早いタイミングで(またダイナミックな雰囲気をぶつけるように!)相手に「詰め」ていけば、「次」で味方がボールを奪い返せる可能性が格段に向上するのに・・。
そんな中盤での勝負ディフェンス(爆発的なディフェンスマインド!)は、強い相手とのギリギリの競り合いという展開になったとき、決定的に重要になってきます。また、そんな積極的でダイナミックな「自分主体ディフェンス」を展開できれば、自分たちが主体になってゲームペース(試合展開・・ゲームの流れ)をコントロールできるという現象に対する自信も深めることができるでしょう。やはり、守備がすべての基本なのです。
また小野と中村の場合、どうしても自分たちがパサーになるという意識が強すぎるとも感じます。彼らの場合はどうしても、他の味方が決定的パスを出せるような「捨て石パスレシーブ」が少なすぎると感じるのですよ。
ズバッと動いて、仕掛けのファウンデーションになるパスを受け、素早く(ダイレクトで!)より有利なポジションにいる味方へボールを動かす・・最初からそれを目標にボールのないところで動く・・もちろんそこでは、もっとも大事なパス&ムーブをくり返す・・要は、自分が捨て石になって周りを活かす・・そんな組織プレーイメージが希薄だと感じるのです。
そんな二人が中盤にいるから、どうしても仕掛けが遅く(単調に)なってしまう・・。ルーマニア戦レポートで書いた「落ち着いたプレーリズム」も、見方を変えれば、単調で遅いプレーリズムと言えないことはない・・。まあ判断の分かれるところでしょうが・・。
ポゼッションプレー(チーム内でボールを確実にキープ・支配すること?!)は、基本的には、焦らず落ち着いて組み立てる(仕掛けにはいっていく)ことを意味するのでしょう。でもそればかりだったら、今度は「ダイナミズムや活気が感じられない」という攻撃になってしまう。ゲームの流れのなかでは、必ず、しゃにむにタテへ押し込んでいかなければならない(前から!勝負を仕掛けていかなければならない)という状況が訪れるもの。そこで問われてくるのが、(特にボールがないところでの!)ダイナミックな中盤守備と、攻撃に入ったときの、ボールがないところでのダイナミックな動きなのです。その部分で、中村にも小野にも、まだまだ不安を感じるというわけです。
彼らのプレーが(攻守にわたる自分主体のプレー意志が!)発展しているからこその期待値(期待内容)の発展・・。とにかくやっと、「そのレベル」で彼らのプレーを議論できるところまできたということなのかもしれません。
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さてジーコのチームマネージメント。
ここまでチームの調子が上がってきているからこそ不安に思っていることがあります。チーム内での緊張感の維持。
いまは中田英寿を中心にまとまってはいますが(彼こそが唯一無二のチームリーダー・・要は、彼しかいない・・グラウンド上の監督?!)、もし彼に何かあったとき・・。
過去の名声だけじゃ(それは選手としても、またカシマでの功績も尊敬に値しますが・・)、監督の体はなさないのです。チーム状態が危機に陥りそうになったとき、ジーコが、カッコよさを捨てて「悪者」にもなれるか・・チームをギリギリまで戦わせるために、選手たちの「心理のダークサイドパワー」までをもアクティベイト(活性化)させることができるか・・。
とにかくチーム内の緊張感をギリギリまで高めなければ(先発組が、ここでいいプレーしなければ次はない・・と心底感じるような心理環境を整えなければ!)、必ずチームのモラルは減退します。もちろんそれがチームの崩壊につながる・・。
またチーム戦術的には、ジーコの「美しさ」を追求する姿勢が強すぎれば(勝負強さをもイメージした泥臭い戦術要素に対する意識が希薄になれば!)、まだ世界の一流の域までは到達していない日本代表は、必ず何らかのしっぺ返しを食らう・・という不安もありますしネ・・。
とにかく、自分の学習機会しても、これからのジーンジャパンをしっかりと見つめていこうと、時差ボケながらも思っている湯浅なのでした。