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ナビスコカップ決勝・・「レッズのツボ」が炸裂し、リーグにとって大いなる刺激になる新しいタイトルホールダーが誕生・・アントラーズvsレッズ(0-4)・・(2003年11月3日、月曜日)

ヤッタ〜〜ッ! やっとレッズが、はじめてのタイトルを手中にした!

 そこでの喜びのバックボーンにあったのは、もちろん、新しいタイトルホールダーの出現によってリーグに「変化」がもたらされ、雰囲気が活性化されることで体質がポジティブに変容することです。それは、リーグにおけるパワー構造の変容とも表現できますかね。それが、リーグに新しいエネルギー(心理パワー)を注入するに違いないと思うのです。

 変化こそ常態・・。諸行無常・・。とにかく、人間が歴史を刻んでいくなかで、一つだけ変わらなかったことは、常にそこに「変化」があったということです。生活者に対する「変化」という刺激・・。それこそが社会的な活力の源なのかもしれません。

 リーグ、天皇杯、リーグカップ(ナビスコカップ)のいずれかのタイトルを取ること。その意味するところは心理・精神的なパワーアップでしょう(もちろんリーグチャンピオンというタイトルは別格ですが・・)。ナビスコカップ優勝というタイトルがレッズ選手たちに与える自信ソースは、ものすごく大きいということです。もちろんチームマネージメントのやり方によっては、その自信レンジ(幅とか領域とかいう意味)が際限なく増幅させつづけることだって可能になるでしょう。ワールドカップや各種クラブ選手権の歴史をヒモとくまでもなく、「タイトル」という自信ソースは、重要な心理・精神バックグラウンドになるものなのです。

 頂上をきわめた浦和レッズ。その勝負強い「徹底サッカー」も相まって、押し詰まった「Jセカンドステージ」の融資用争いでも存在感を増幅させていくに違いない?! これから浦和レッズが、この自信ソースを、どのように実効あるカタチで心理マネージメントに活用・応用していくか・・。そのプロセスにも注目していれば、これからの「J」が何百倍も楽しいモノになること請け合いです。

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 さて試合ですが、私はアントラーズが有利だと踏んでいました。その根拠のもっとも大きなところは、彼らの危機感の高まり。

 中田浩二、熊谷、本山、フェルナンドなど、多くの怪我人を抱え、リーグ前節では、ヴィッセルに痛い敗戦まで喫してしまった彼らは、スリーバック(=ファイブバック)でゲームに臨むなど、試合前から守備を固めると宣言していましたからネ。だから私は、「そうなったら、はじめから攻め手のバリエーションが少ないレッズにとっては厳しい戦いになるだろう・・ツートップとパスの出所を抑えられ、逆に二列目や三列目の飛び出しを基調にしたカウンターを狙われたら(マンマークだからこそ、最初のマーキングがうまくいかなければ連鎖的に守備ブロックの組織が破綻していく!)・・」なんて思っていたのですよ。

 そして実際に立ち上がりのゲーム展開は、レッズにとって厳しい雰囲気が漂っていたという次第。しっかりと人数をかけてレッズ攻撃を受け止め、カウンターやセットプレーだけではなく、しっかりとボールを動かす組織プレーで攻め上がってくるアントラーズ。そこには、やはり「大波」のような迫力があると感じられたのです。

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 ところで・・。両チームともに守備を固めて慎重に攻め上がるという展開を見ていて、すぐに、今年5月にマンUのホーム、オールドトラフォードで行われたチャンピオンズリーグ決勝、ACミラン対ユーヴェントスの試合を思い出していましたよ。何せ、両チームともに、スリーライン(そのバランス)を極力崩さず、安全性を重点においた「前後分断」の攻めを繰り出していくのですからネ。

 まあとはいっても、組織プレーと個人プレーが「より」バランスした攻めを展開するアントラーズに対し、例によって「個のドリブル勝負」が主体のレッズという、両チームの特徴的な対比は面白かったし、CL決勝がゴールゼロでPK戦にもつれ込んだことを思えば、ゴールラッシュだったこの試合のエキサイティング度は測り知れませんでしたけれどネ。

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 とにかく私は、立ち上がりの10分を観ていて、「これは、アントラーズが勝負強さを発揮するパターンにはまってしまうのかもしれないな・・」なんて思っていたのです。

 立ち上がりの時間帯、一発ロングパスを基盤にしたカウンターや(ツートップのエウレルや深井も危険な突破を魅せている!)、例によってのセットプレーでのチャンスメイクなど、アントラーズの勢いが(確信レベルが)徐々に増幅していると感じられましたからね。だからこそ前半13分にレッズの山瀬が挙げた先制ゴールには、「起死回生」と呼べるほど重要な意味があった・・。

 そのゴールですが、左サイドでボールをもった内舘のサイドチェンジパスがキッカケになりました。このシーンでは、パスを受けた内舘が、間髪を入れずにサイドチェンジをイメージした。ここら辺りにも、レッズ選手たちの戦術的な徹底度がうかがえたものです。

 そして、逆サイドでパスを受けた「ブレイク・スルーの権化」田中達也。まずドリブルで縦方向にボールを運びます。相手ディフェンスの対応の観察というわけです。でもアクションが一度落ち着いたとき、アントラーズゴール前のスペースに、山瀬とエメルソンが飛び込んできた。田中が、そんな二人のボールなしのアクションを見落とすはずがありません。すぐに田中が、ドリブル突破からラストクロスへと仕掛けイメージを転換したと感じました。

 そして鋭い切り返しで「時間をつくった」田中の左足から、まさにピンポイントというラストクロスが、山瀬のアタマ目がけて美しい糸を引いていった・・。

 山瀬のヘディングゴールシーンですが、そこではアントラーズ守備ブロックに二つのミスが重なりました。一つは、秋田が山瀬へ身体を寄せるタイミングが遅れたこと、そしてもう一つが、GK曽ヶ端の飛び出しミスです(クロスをキャッチするイメージか、エメルソンへクロスが届くと予測して飛び出してしまった?!)。まあラッキーなゴールだと言えるでしょう。ラッキー?! そうです・・何せそのラッキーゴールが、これ以上ないというプロセスと結果を引き出したのですからネ。

 その後、リードを許したアントラーズが、守備ブロックを少し「空け気味」にして攻め上がりはじめたことは言うまでもありません。それでも、レベルを超えた徹底度を魅せつづけるレッズの(オールコート)マンマーク守備ブロックは、崩れる気配さえない。両サイドの対戦ペア以外では、坪井vsエウレル、ニキフォロフvs深井、小笠原vs鈴木啓太、青木vs内舘といったところでしょうか。とにかくそのマークがズレないだけではなく、決定的場面でのマーキングも抜群の安定感を見せつけるのですよ。もちろんそのバックボーンに、オフト体制になってから徹底してきた守備意識の高揚があることは言うまでもありません。そしてそんな守備意識の高揚が、一発勝負のファイナルにおけるギリギリの勝負所で功を奏するのだから、こちらは拍手を贈らざるを得ません。例えばこんなシーン・・。

 前半22分ころでしたかネ、アントラーズが、小笠原を起点にした素晴らしいチャンスを作り出した場面です。そのプロセスはこんな具合でした。

 名良橋とパス交換してボールをキープした青木が、鈴木の厳しいマークを背負っている小笠原の足許へパスを付ける・・鈴木を身体で押さえながらピタリとボールをコントロールする小笠原・・才能が光り輝いた瞬間・・そして素晴らしいタメから(名良橋をマークしていた平川の視線と意識を十分に引きつけてから)、タテの決定的スペースへ抜け出した名良橋へのスーパースルーパスを決める・・そしと名良橋がダイレクトで、レッズゴール前への決定的グラウンダークロスパスを送り込む・・そのイメージターゲットは、走り込んでくるエウレル・・でもそこには、忠実にマークしつづけていたニキフォロフがいた・・。

 素晴らしいマンマーキングシーンでした。たしかにニキフォロフは、まだレッズにきてから日は浅いのですが、あれほどのキャリアを持つ世界の強者ですからね、すぐにチームコンセプトを理解したということです。もちろん、そんな素早い理解プロセスの背景に、(二年越しで培ってきた)チーム内に徹底したハイレベルな守備意識があったことは言うまでもありませんよね。

 そんなキチッとした守備ブロックを基盤に、得意のカウンターを仕掛けていくレッズ。先制ゴールによって、彼らが得意なゲーム展開に「持ち込む」ができたというわけです。前半32分のカウンターは鋭かった。山瀬から田中へのタテパスが通る・・そこから田中は、迷うことなくドリブル勝負・・相手の大岩をズバッと置き去りにしてそのままシュート!・・僅かに左へ外れたけれど、その迫力カウンターが、アントラーズの組織的な攻めの勢いを(人数をかけるための心理パワーを)減退させたことは確かだった・・。

 また試合が進むなかでアントラーズに、また別のブレーキがかかってしまって・・。前半26分に、攻撃の核、エウレルが肉離れで交代してしまったのです。とにかく、状況は、どんどんとレッズに有利な方向へ傾いていく・・。神様にも味方されたレッズといったところです。神様も、「J」に、新しいタイトルホールダーという新風を吹き込もうと考えた?!

 そんな神様の意図と意志は、後半もつづきます。まず後半3分に飛び出したエメルソンの追加ゴール。

 左サイドで余裕をもってボールをタテへ運ぶ平川。完璧なルックアップを維持できています。そして、最前線でそのサイドへ寄ってきたエメルソンが、平川との「アイコンタクト」から、ズバッとタテの決定的スペースへ抜け出す。この時点で、マークしていた秋田は完全に置き去り(マークのポジショニングミス)。またバックアップに寄ってきていた大岩にしても、正確なカバーリングポジションに就くのが(例によって)遅れたために、エメルソンを止められず、最後は、エメルソンの切り返しにドタッと尻もちをついてしまう始末。エメルソンのスーパーアクションでした。

 またその8分後には、左サイドの最前線でボールを持った田中が、例によっての吹っ切れたドリブル勝負にチャレンジし、池内、秋田をかわして中距離キャノンシュートを決めてしまう・・。そしてその4分後には、小笠原が二枚目イエローで退場処分になってしまう・・。

 この時点で(田中のブレイクスルー・スーパーシュートが決まった時点で?!)、既に実質的な勝負は決していたわけですが(完全にアントラーズは心理パワーを失った!)、そんなプロセスを反芻すればするほど、背景で影響力を行使していた「神様パワー」を感じたりして・・。

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 とにかく、最高の集中力とパフォーマンスによってレッズが勝ち取ったはじめてのタイトルを、心から祝福したいと思います。素晴らしい勝利でした。もちろん、彼らが展開する、勝負強さだけをターゲットにした「セキュリティー規制サッカー」に、レベルアップ(発展)という視点で限界があることはいつも書いているとおりですが、それにしても、これほど見事に「レッズのツボ」が炸裂したら、それはそれで心地よいことこの上ありません。

 それにしてもエメルソンは凄い・・それにしても、田中達也のブレイクスルーはレベルを超えている・・。次の「J」が楽しみじゃありませんか。

 乱筆・乱文、失礼。




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