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ナビスコカップAグループ第6最終節・・さて、ヴェルディーも復活・・これでまた「J」も白熱してくる・・ヴェルディーvsジュビロ(3-2)・・(2003年7月16日、水曜日)

さてナビスコカップのグループリーグ最終節。もうヴェルディー(勝ち点5、得失点差-4)には、自力でのグループリーグ突破はありません。あくまでも、レッズ(勝ち点5、得失点差-2)とヴィッセル(勝ち点7、得失点差0)の結果待ち。ということで彼らは、「薄い可能性」に賭けて、ガンガンとゴールを奪いにいくしかない。ヴェルディーは、ほぼベストメンバーでこの試合に臨んでいます。

 それに対し、既に予選突破を決めている(また数日後にはジェフとの大一番が控えている)ジュビロは、高原(GK)、成岡、菊地、西野、上本、大井といった若手を先発に送り出します。まあ福西(次のジェフ戦は、累積イエローで出場停止)や藤田、グラウといった、要所を締めるキープレーヤーをバランスよく配置してはいますがネ。

 ということで、ジュビロでは、特に成岡に大注目しようと思っている湯浅なのです。あっと・・、ヴェルディーでは小林慶行に注目しています。ここ何試合か見た限りでは、もしかしたら意識のポジティブな変化があったのかも・・なんて期待を持てますからね。

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 結局ゲームは、ヴェルディーが「3-2」で勝利をおさめたものの、もう一試合のレッズ対ヴィッセル戦では、レッズが「1-0」で勝利をおさめたことで、このグループからは、ジュビロとレッズが決勝トーナメントへ進出することになりました。

 それにしても、ヴェルディーは良い方向へイメチェンしている(私は、Jリーグでの試合も、しっかりと観察していますよ)。だから、この予選リーグでの敗退を、惜しいな・・と思っていた湯浅なのです。

 ヴェルディーの何が良くなったかって? それは何といっても、ボールがないところでの選手たちの動きの活性化を基盤に、攻めでのボールの動きが良くなっているということです。それが、格段に素早く、シンプルに、そして広いものになっているのです。選手たちの組織パスプレーイメージが活性化してきているからこそ、ボールがないところでの彼らの動きも格段にアクティブになっている。

 これまでは、足許パスを積み重ね、最後は、個の勝負で中央突破へという、ごり押しの攻めパターンをくり返していましたからね。そんな変化のない仕掛けでは、相手守備ブロックに抑えられてしまうのも道理というわけです。

 そして、イメチェンをはじめた彼らの攻め・仕掛けプロセスに、例によっての「個のエスプリプレー」による変化だけではなく、「組織パスプレーベースの変化」もミックスしてきているということです。だから、相手守備ブロックも、次を予測しにくい。

 もちろんそのイメチェンは、オジー・アルディレスの良い仕事の結果だとするのが自然でしょう。シンプルにボールを動かして攻めていく・・そんな基盤イメージがあるからこそ「個の勝負」の危険度も格段にアップし、攻撃の変化の「幅」も広いものになる・・。そんな善循環が回りはじめたヴェルディー。基本的に「個のチカラ」では高いものがありますから、これからが楽しみではあります。

 もちろん、その善循環の基盤が、うまく機能しはじめた中盤ディフェンスにあることは言うまでもありません。このゲームでは、フォーバックの前に、山田、小林慶行、平野を並べ、守備的ハーフトリオを組みました。覚えていますか、それって、昨年のセカンドステージ立ち上がりにヴェルディーが魅せた素晴らしいスタートダッシュのベースになったフォーメーションと同じですよ。当時は、フォーバックの前にバランス良くポジショニングするトリプルの守備的ハーフ(小林大悟、山田卓也、そして横浜FCから出戻ってきた高木成太)といった布陣でしたがネ。もちろん、二列目のエジムンドが素晴らしく機能していたこともありましたが・・。うまく機能するヴェルディーのサッカーを観ていて、ちょっと、当時の記憶がよみがえったものでした。

 前半は、そこがうまく機能し、ジュビロにまったくといっていいほどスキを与えませんでした。でも後半になって、徐々に「ほころび」が出はじめてしまった・・。まあそれには、決勝トーナメントに進むためには、もっとゴールをたたき込まなければならないという背景もありました。とにかく攻め上がってゴールを決めなければ、決勝トーナメント進出はない・・。ということで、特に右サイドの山田と柳沢のコンビが、どんどんと攻め上がっていったというわけです。もちろんそれは「偏った攻め」だから、そのサイドに「穴」が空き気味になってしまったのも道理でした。

 小林慶行は、基本的には上がらず、中盤守備を統率するだけではなく(うまくジュビロ攻撃を高い位置で抑制できていた!)、後方からのゲームメイクまでもうまくこなしていました。ボール扱いは言うに及ばず、攻守にわたるボールがないところでの(意志が込められた)全力ダッシュなど、全体的な出来は良かったですよ。攻守にわたるプレーイメージが大きく好転しているから、彼の本来の才能が、より活きるようになっているということです。

 それでも、前後のバランス(人数的・相互ポジショニング的)が崩れ気味になった後半では・・。まあ、あんな状況では、次のディフェンスを「ボカす」ポジショニングでジュビロの攻撃を遅らせるしかない・・。まあ、あれだけバランスを崩して攻め上がっていたし、逆にジュビロも同点ゴールを奪いにきていたから、中盤ディフェンスが甘くなって攻め込まれ、決定的なカタチを作り出されたのも道理といった展開でした(実際に、後半に2ゴールを奪われる!)。

 とはいっても、ヴェルディーは、本当に多くの魅力的なチャンスを作り出しましたよ。前半では、エムボマの2ゴール以外にも、平本の絶対的なチャンスがありました(ボールがないところでの全力ダッシュをつづけたからこそのチャンスメイク!)。また後半にも、山田やラモンが、これまたボールがないところでのアクションをベースに(決定的パスのレシーブを基盤に!)絶対的なチャンスを得ましたし、ハットトリックを達成した後のエムボマもフリーで持ち込むチャンスを得ました。それでも追加ゴールを奪えなかった・・。

 結果論ですが、それらのチャンスのうちいくつかのゴールが決まっていれば、他会場で勝利をおさめたレッズを得失点差が抑え、ヴェルディーが決勝トーナメントに進出していた・・。とにかく彼らのパフォーマンスが、予選リーグ敗退を残念だと思わせるくらい魅力的なものに高揚していることは確かです。

 柳沢将之、根占真伍、平本一樹、富澤清太郎、田中隼磨、小林大悟、飯尾一慶、玉乃淳などなど、とにかく優秀な若手が(それも十分に実戦経験を積んだ若武者たちが)目白押しのヴェルディー。オジー・アルディレスという優れた「ストロング・ハンド」によるリードで、セカンドステージには旋風を巻き起こすに違いない・・楽しみで仕方ありません。

 あっと・・この試合でハットトリックを達成したエムボマを忘れるところだった。正直言って、私は「もう彼は終わった選手」だと思っていました。ところが、この試合も含むここ最近のゲームで魅せつづける「キレ」。いや、本当にビックリしました・・シャッポを脱ぎました。彼もまた楽しみで仕方ありません。

 最後に、ジュビロの成岡。良かったですよ。潜在キャパの高さをしっかりと証明していました。もちろん、もっと「自分主体の積極プレー(=自己主張プレー)」を意識しなければいけませんが、とにかく彼の発展もまた楽しみです。

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 ということで、明日、朝一番のフライトで一路ヨーロッパへ。自分自身のイメージトレーニングという意味も含め、対峙する「異文化」をとことん楽しむつもりです。




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