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オリンピック日本代表・・もっとバランスのとれた緊張感(闘う雰囲気)を高揚させなければ・・U22日本代表対コスタリカ(1-1)・・(2003年4月1日、火曜日)

硬い・・硬い。立ち上がりのU22日本代表は、攻守にわたって足がアクティブに動かず、局面で後手後手にまわるシーンが続出なのです。注目が集まるホームの(オリンピックチームとしてのお披露目マッチの)プレッシャー?! このチームには、まだまだ「心的にひ弱だ・・」というイメージがつきまとっていますからネ。

 「硬い」の意味ですが、それは、攻守にわたり、様子見で「待って」しまうシーンが目立ちすぎるということです。選手たちのプレー姿勢に、ボールへ絡んでいこうという強烈な意志が前面に押し出されてこない。サッカーでは、「行かなければ」ミスが目立つことはありませんからね。選手たちが、「行かなければミスを犯すことはない・・」という心理的なワナにはまっている?! それを、受け身で消極的なプレー姿勢と呼ぶのですよ。

 どうした・・そんなペースをつづけたら取り返しがつかないことになってしまうゾ! 攻守にわたって自ら仕掛けていかなければ、チームのダイナミズムが活性化するはずがないじゃないか!! そして、心理的な悪魔のサイクルのワナが・・。

 それでも10分もしたら、若き日本代表のプレーが、徐々に活性化してきます。まあ逆に、コスタリカの、立ち上がりの猛烈な勢いが収まってきたから・・という見方もできますすがネ。

 とにかく日本代表のプレーが、ボール絡みでも、ボールのないところでも積極的になったのは確かなこと。もちろん積極プレーにはミスが付きものです。でも逆に、そんな「ミスという刺激」があるからこそ、闘う心理ベースを見出していけるのも確かなことなのです。リスクチャレンジが出てくれば、それが刺激になって、周りのボールがないところでのプレーも活性化するでしょうし、味方のミスをバックアップするという意志も高まるもの。そしてそれが、チーム全体のマインドを高揚させる。それこそが「アクティブプレーの善循環」というわけです。

 それさえ機能しはじめたら、リスキープレーにチャレンジしていく者にしても、味方がカバーしてくれるという確信を持てるだろうし(相互信頼の重要性!)、ミスをしても、間髪を入れずに次のディフェンスへ参加できるもの(自然と身体が動くもの)なのです。

 覚醒し、自分たちのゲームを展開しはじめたヤングジャパン。抜け出した松井から、ベストタイミングで飛び出した中山へのスルーバスが決まったり(相手GKが素晴らしい飛び出し)、サイドを突破した阿部からのグラウンダークロスが中央の大久保にピタリと合うなど(大久保の体勢が逆で、シュートしたボールは大きくバーを越えてしまう!)、リスクチャレンジプレーからチャンスを作り出しはじめます。そんななかで飛び出した阿部勇樹のスーパーFKゴールは、まさに順当な先制弾でした。

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 ただ、後半も同じようなベースで立ち上がり、ゲーム全体をコントロールしていた日本代表でしたが、そんなポジティブなゲーム展開が、コスタリカの選手交代によって、急に逆流しはじめてしまいます。後半9分の、最終守備ラインのミラーと中盤のブレネスの選手交代が、コスタリカ選手たちのマインドを劇的に活性化したのです。その交代は、ベンチからの「攻めろ!」というメッセージそのものだったのでしょう。

 どんどんと右サイドを攻め上がっていくブレネス。それによって、コスタリカチーム全体が押し上げるようになったというわけです。

 前半は中盤を支配していた日本代表ですが、その時間帯から、急に下がり気味になってしまいます。相手が押し上げてきたら、「より前で!」粘り強い積極ディフェンスを展開しなければならないのに・・。要は、日本代表(対ウルグアイ)のレポートでも述べたように、中盤ディフェンスがゲームの流れを決めてしまう決定的なファクターだということです。そして、忠実でダイナミックな中盤ディフェンスで日本を凌駕し、試合の全体ペースを掌握していくコスタリカ。

 中盤ダイナミズムを支えなければならなのは、何といっても守備的ハーフコンビの森崎和幸と阿部勇樹。前半は、コスタリカが守備的なゲームを展開していたこともあって、積極的に攻撃へも絡んでいくなど、攻守にわたって余裕をもってプレーできていました。それが、コスタリカが(全体的に!)攻め上がってくるようになった途端、立ち上がりのように、受け身で消極的なプレー姿勢に落ち込んでしまったのです。守備的ハーフは、物理的にだけではなく、心理的にもチームのダイナモ(発電器)。その二人が、ともに下がり気味になってしまったら、スペースが空いてしまうことも含め、中盤でのボールをめぐるせめぎ合いでもイニシアチブを握られてしまう・・。

 そして日本代表のゲームペースが、どんどんと落ち込んでいきます。後半25分には、(日本代表の横パスがカットされ)同点ゴールまで奪われてしまって・・。その(コスタリカの)横パスカットにしても、前へ、前へと押し上げているコスタリカのエネルギーを「受け身」にしのごうとする日本代表の消極プレー姿勢が、そのまま結果につながったというものでした。

 そんな展開は、後半30分くらいまでつづきます。後方からのバックアップが「薄い」から仕掛けていくことがままならず、中盤で簡単にボールを奪われつづける日本代表。心理的な悪魔のサイクル・・。しかし、そのサイクルを断ち切った選手がいました。鈴木啓太。

 能力は高いけれど、強烈な意志の表現(グラウンド上の自己主張)という視点では大きな課題を抱えている森崎和幸に代わっての登場です。そして鈴木が、これ以上ないほどの「刺激」として機能するのです。交代出場は、後半30分のことでした。

 長髪を振り乱しながら、攻守にわたって全力でボールを追いつづける鈴木啓太。特に、ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェックが忠実でダイナミック。どんどんと相手からボールを奪い返してしまいます。そして、鈴木が魅せつづけた、絶対に勝負所へ絡むぞ!という強烈な意志が、オーラのようにチームメイトたちへ伝播し、彼らを覚醒させるのです。鈴木啓太のダイナミックプレーによって、周りの味方の攻守にわたる動きも、急に活発になったことは誰の目にも明らかだったと思います。また、その後に入った田中達也も、チームダイナミズム高揚(積極プレーへの覚醒!)に一役かっていました。

 結局(ホームとしては不本意な?!)「1-1」という結果に終わってしまったとはいえ、選手たちにとっては(またまた?!)有意義な学習機会になったことでしょう。不確実な要素が満載されたサッカーは、(恐ろしいほどに)本物の心理ゲームだ・・やはりサッカーは、中盤での積極ディフェンスが全てのスタートラインだ・・。

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 中盤を支配されはじめた後半。日本代表は、「自ら」ペースアップすることがままなりませんでした。

 リーダーシップの欠如?! 「フザケルナ! もっと厳しくアタックしろ! 抜かれても足を止めるな! 前線も戻ってディフェンスに入れ!!」。そんな、鬼の形相で叱咤するリーダー・・。まあ、これまでに何度も言われてきたことですが・・。

 とにかく「世界」を目指さなければならないこのチームは、もっと張りつめたテンションというか、「闘う雰囲気」というか、そんな厳しい心理環境を整備する必要がありそうです。個人的には、能力の高い選手たちが集まっているのですから・・。

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 あっと・・日本代表ゲームの詳細な分析については、またまた「次」へと先送りにせざるを得なくなってしまいました。ご容赦アレ・・。




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