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U22オリンピック代表・・自分主体のアクティブプレーが活性化したからこそ見えてきた、攻撃でのグループ戦術的な課題・・日本代表vsミャンマー代表(5-0)・・(2003年5月3日、土曜日)

2日前のゲームの後、記者会見で山本監督がこんなことを話していました。「後半は、森崎をちょっと上げたので攻撃がうまく回りはじめた・・」。たしかに森崎は、前半はゼロだったのに、後半は4本もシュートを打ちました(後半だけではチームNo1!)。

 なるほど・・。ということは、選手たちは、監督に言われたプレーに固執し(固執し過ぎ?!)、刻々と変化しつづけるゲーム状況に、自分主体の判断で対応できていなかったということか?! 膠着したゲームを打開していくためには、様々な意味での「計画外アクション」が必要になってくるのに・・。

 もちろんそれも「バランス感覚」。ゲーム戦術を根底から乱してしまうようなプレーは御法度です。それでも、第一戦でのゲームの流れからすれば、前半の森崎は、阿部や松井との前後のコンビネーションで、もっと押し上げていってもよかった・・。

 イレギュラーをつづけるボールを足で扱うという不確実性要素が満載されたサッカー。最終的には「自由」にプレーせざるを得ないサッカー。だから監督は、選手たちに対し、基本的なゲーム戦術に対するイメージだけではなく、クリエイティブなルール破り(攻守にわたるチーム目的を達成するためのゲーム戦術破り)「にも」チャレンジしていけるだけの強いマインドも植え付けなければいけません。サッカーでは、いかに「背反する要素」をうまくバランスさせるか・・もっといえば、いかに、選手たち自身で柔軟に判断し、実行していけるだけの積極マインド(リスクチャレンジ・マインド)「も」養成していくのか・・ということが重要なテーマになってくるのです。

 自ら、攻守にわたるポジショニング&人数バランスも崩していけるだけの強い意志を持たなければならない・・それがなければ、その後の「バランシング感覚(=高い守備意識)」も発展していかない・・というわけです。何といっても、ゲームがはじまってしまえば、監督の出来ることは限られていますからね。後は、選手たち自身の「判断力・実行力」に任せるしかないという現実がそこにあるのです。

 言われたこと「しか」やらない・・やろうとしないロボットなど要らない。だからこそ選手たちは、向かうべき理想型イメージと、変化の激しい現代サッカーの基本的な(戦術的な)メカニズムに対する理解を深めていかなければならないのです(それも監督のもっとも重要なタスクの一つ)。不確実なグラウンド上において、自分主体で、チームの(攻守の)目的を、臨機応変に達成していくために・・。

 あらっ・・?! まだゲームがはじまってもいないのに語る・・語る。失礼しました。まあ、自分主体プレーヤーとして私が高く評価する鈴木啓太が、この試合ではキャプテンとして先発していることもありまして、どうしても期待が高まってしまうというわけです。さて・・。

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 初戦を「3-0」で切り抜け、心理・精神的に楽になったから?! いや、私はそう思いたくはありません。ミャンマーとの第二戦で日本代表が展開した積極ゲームの背景は、あくまでも、選手たちの自覚レベルの向上(見てろよ!という気概も?!)の結果だと捉えたい。より「能動的」な心理活性化の成果としてのゲーム内容の向上だと考えたいのです。

 ということで、ヤング日本代表のゲーム内容は、格段にアクティブ&ダイナミックなものになりました。自分主体の判断と決断、そして実行という視点で・・。もちろん鈴木啓太も、攻守にわたって素晴らしくダイナミックなプレーを展開します。

 たしかに彼は、そんなに並はずれた才能をもっているわけではありません。それでも、チームにとって価値のある実効プレーを攻守にわたって展開しつづけるのです。このチームに欠けていた中盤でのリーダーシップ。この試合では、確実に鈴木啓太が、周りからの信頼をベースにしたリーダーとして機能していたと思う湯浅です。

 攻守にわたって、プレーにダイナミズムが感じられるようになった日本代表。ミャンマーを押し込みつづけます。それでも、ミャンマーも立派な闘いを展開する。忠実なだけではなく、危急状況での自分主体のカバーリングなど、クリエイティブなディフェンスを魅せつづけるだけではなく、ボールを奪い返したら、しっかりとした技術を駆使して攻め上がろうとするミャンマーの若武者たち。爽快なヤツらです。それに彼らは、日本代表を(ある視点では)追い込み、本当の意味での覚醒につながるキッカケを与えてくれましたからネ。だから、二つの退場劇は残念で仕方ありませんでした。まあ、後半のヤツは、止めに入った鈴木啓太に頭突きを食らわせたのですから仕方ない・・。

 さて、守備ブロックを固めてくるミャンマー。そのプレーもある程度のレベルに達していますから、日本代表が、パスとフリーランニングを連鎖させる(コンビネーションを駆使する)仕掛けによってミャンマー守備ラインのウラを突いていくというシーンは希です。まあそれには、日本代表のパスタイミングが遅く、不正確だということもあります。

 特に、仕掛けのタテパスの質が悪い。不正確だし、出てくるタイミングも遅い。だから、後方からの「サポートの動き」にも勢いが乗ってこない。だから、タテパスが通ったとしても、次、その次の切り崩しに必要な「後方からの押し上げ」もままならない。要は、タテへの仕掛けパスに対する「期待値」が低いから、周りのチームメイトたちも、ボールのないところでの勝負の動きを繰り出すイメージ的なキッカケを掴みかねているということでしょう。

 特にディフェンスを固めている相手守備ブロックのウラを突くためには、後方からの(二列目、三列目の)押し上げをベースにしたコンビネーションが大事になってきます。またミャンマーは、簡単にドリブルで振り切れるような柔な相手ではないですからね。相手にとって、「見慣れないヤツ」が唐突に顔を出してくる(タテのスペースである程度フリーでボールを持つ)・・というシーンを作り出さなければならないということです。要は、いつも言っている「タテのポジションチェンジ」のこと。実際、(特に)鈴木啓太の飛び出しで何度チャンスを作り出したことか。

 ということで鈴木啓太。この試合でのMVPは、間違いなく彼でしょう。後方からの飛び出しでは(タテのポジションチェンジの演出では)、前述したように彼の動きばかりが目立っていました。もちろん、中盤での忠実ディフェンスをベースにしてですから(協力プレスへの仕掛け、最終守備ラインを追い越してしまうようなボールがないところでの忠実マーク、インターセプト等々)、その攻守にわたる実効パフォーマンスは本当に称賛に値します。すごく上手いわけではないけれど、実効レベルでは、チームにとってこれほど価値のあるプレーヤーはいない。

 彼のクラブチームでは「規制」に縛られっぱなしですからね。それから「解放」され、活き活きとプレーを楽しんでいたに違いない鈴木啓太に対し、心からの拍手をおくっていた湯浅でした。鈴木啓太についても、彼が交代出場した瞬間にチームの心理パワーが倍増した・・という前々回の「U22レポート」(コスタリカ戦)を参照してください。

 少なくとも自分たち主体で「アクション」を起こしつづけるダイナミックなサッカーが展開できるようになったからこそ、上記のような、攻撃でのグループ戦術の課題についてもレポートできるようになったということです・・。

 互いの、クリエイティブで高い守備意識を心理的な基盤にした(行っても大丈夫!という相互信頼レベルの高揚を基盤にした)アクティブなタテのポジションチェンジ(もちろんサイド攻撃でもそれが基本!)。

 オリンピック地域最終予選というギリギリの勝負に臨んでいく彼らにとって、攻守にわたる自分主体のプレー(リスクチャレンジ)のベースになる心理ダイナミズムの高揚という課題とともに、(それに直結する?!)そんな「攻撃でのグループ戦術的な課題」も見えてきました。




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