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リーガ・エスパニョーラ最終節&コンフェデレーションズカップ(ブラジル対トルコ!)・・興味深いコンテンツが満載でしたよ・・(2003年6月24日、火曜日)

さて、デイヴィッド・ベッカムがレアル・マドリーへ移籍することになりました。「毎年、一人のスーパースター獲得する・・」。そう公言する会長(それに、もちろんホルヘ・バルダーノGM!)が、一昨年のジダン、昨年のロナウドにつづいて公約を果たしたということですが、さて・・。

 日本での、信じられないフィーバーのなかでレアルへ移籍する心境を語るベッカム(日本へ向かう飛行機に乗っている間に、マンUの公式HPで公表された!)。それでもレアルにとっては、最終勝負となるリーガエスパニョーラ最終節の直前だから迷惑千万だったに違いない・・。現場にとっては、大変な「ネガティブノイズ」になったと思うのですよ。

 実際に、何人かのレアル選手たちが、あからさまに不快感を公にしていましたしネ。このタイミングでの「ノイズ」に、選手たちをモティベートしなければならない現場スタッフの意図が絡むとは考えにくいから、それは「ビジネス・マネージメント」の所業(様々な思惑を背景にしたビジネスアクションの一環!)に間違いないでしょう。もちろんこちらは、そのビジネス的な思惑の背景が何なのかをは知る由もありませんがネ・・(例えば、スポンサー契約更新のタイミング等々、確実にビジネス視点のバックグラウンドがあった?!)。

 もちろん私は、コーチとして、ベッカムが加入したレアルのチーム作りプロセスに興味はあります。それでも、とにかく「やりすぎ(経済主導プロサッカーの傾向が見えすぎ)」という感覚は拭えない(まあ、世界一の年収=約350億円!=を誇るレアルだからこその移籍劇ではあるのですが・・)。

 たしかに、レアルのファンにとっては嬉しいことこの上ないのでしょうが、生活者をコアに置くという視点での、また世界共通のフェアなルール厳守が原則という視点での「サッカー文化の発展」にとっては・・。

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 さて、リーガ・エスパニョーラ最終節。「ノイズ」にもかかわらず、レアルのサッカーは相変わらず高質です(もちろん選手たちの内心は計り知れないけれど・・)。

 相手の視線と意識を「空白」にしてしまう素早いボールの動き・・そんなパスプレーと、個の勝負プレーがハイレベルにバランスした仕掛け・・等々。そしてそんな展開のなか、開始早々の8分にロナウドが先制ゴールを決めてしまうのです。左サイドで、ロベカルからのパスを受け、例によっての仕掛けの「タメ・ドリブル」で中へ切れ込んでいくフィーゴ。そして、タイミングを見計らった勝負のフリーランニングで決定的スペースへ走り抜けた(後方から、大きなワンツーでフィーゴを追い越して決定的スペースへ抜け出した!)ロベカルへのスーパースルーパスが決まったという次第(ロベカルからのラスト・トラバースパスが、ピタリとロナウドに合った・・ロナウドにとってはゴッツァン・ゴール!)。

 その後にも、グティーのタメドリブルと、ラウールの決定的フリーランニングがピタリとシンクロし、最後はラウールとビルバオGKが「1対1」になるという決定的シーンもありました(ビルバオGKのファインセーブで防がれてしまう!)。それに対し、どうしてもレアル守備ブロックを崩していけないビルバオ。

 あっと・・ところで、ビルバオのドイツ人監督、ユップ・ハインケスにとっては、これがビルバオでの最終ゲームということになります(来シーズンから、ブンデスリーガのシャルケ04の監督に就任)。

 さて試合ですが、その後の前半35分。ビルバオが一発ロングシュートを決め、ゲームを「1-1」の振り出しに戻してしまいます。20メートルのロングシュート。それも、レアルGKカシージャスがまったく動けないほどのスーパーゴール。ホントにビックリしました。そして、これは面白くなる・・なんて思ったものです。それでも前半ロスタイムには、ロベカルが、ゴール正面20メートルからの爆発フリーキックを決めてしまうのですよ。この時点で、優勝争いライバルのレアル・ソシエダは、まだ「0-0」。さて・・。

 後半も同じような展開です。攻めはするけれど、レアルの守備ブロックを崩しきるところまではいけないビルバオ。それに対し、頻度は多くないにせよ、例によって「組織と個」がハイレベルにバランスした仕掛けから、相手ディフェンスのウラを突いてしまうレアル。もちろんそこでのキーポイントは「ボールがないところでの勝負のフリーランニング」。組織プレーと個人勝負プレーが高質にバランスしているからこそ・・そのイメージが全員に深くシェアされているからこそ、活発な「ボールがないところでの勝負の動き」が出てくるというわけです。

 とはいっても追加ゴールを奪うところまではいけないレアル(後半6分に飛び出した、ジダンとロナウドによる「大きなワンツー」からの、ジダンの決定機は素晴らしかった!)。そんななか、(別会場の)ソシエダが、先制ゴール、追加ゴールを決めたという情報が入ってきます。この状況で、もしビルバオが同点ゴールを決めたら・・。

 さてドラマの予感・・なんて思っていた後半16分、やっちゃいました。レアルの追加ゴール。

 後方でボールをもったマケレレから、前線二列目にポジショニングするジダンへ、例によってのズバッという正確なタテパスが通ったのです。そのボールを、これまた夢のように素早く正確なトラップでコントロールして振り向いたジダンから、ギリギリのところでオフサイドラインから抜け出したロナウドへのラストスルーパスが通されたという次第。まさに「夢のような素早いコンビネーション」。やはり才能が演出するゴールシーンは美しい。なんといっても、相手が「守備イメージ」を描写する時間を与えないほどの素早いパスによる仕掛けですからネ。

 とにかくヤツらの「バスタイミング」はレベルを超えている。素早いボールコントロール・・素早いタイミングでの、鋭く正確なパス・・。守っている方に「次のターゲットイメージ」を描かせないタイミングのボールの動きを演出しつづけるレアルというわけです。

 その後は、もう完全にレアルがゲームを掌握し、確実にリーグ優勝を決めたという次第。たしかに、優勝争いライバルのソシエダは、攻守にわたる高質なチームプレー(ハイレベルな守備意識をベースにした質の高い戦術的発想!)で存在感を示しました。とはいっても、選手個々の才能をチームプレーに反映させたという視点での「全体的な内容」からすれば、やはりレアルに一日の長があったのは確かな事実です。

 その意味でも(また、リーグプロセスにおいて、「最前線のフタ」というネガティブ要素を改善したことも含め!)、自ら勝ち取ったリーグ優勝だったという称賛を惜しまない湯浅なのです。もちろんそれは、経済バックグラウンドなどの「外郭的な要素」を排除した、純粋サッカー的(スポーツ的)なものですがネ・・。

 ・・と、そんなことを思っていたとき、ニュースが飛び込んできました。レアルのデル・ボスケ監督が解任! 私の称賛は、もちろんそのほとんどが彼に向けられたものだったのですが、そのデル・ボスケがレアルと袂を分かつ・・そしてベッカムも来る・・。

 これは、誰が監督に就任しようと、難しい舵取りを迫られることは必至。さて、来シーズンのレアルも、この上ない学習機会となるに違いない・・。

 それにしても、あれ程の成果を挙げつづけたデル・ボスケ監督の解任は解せない。もしかしたら、経済主導の(際限のない欲望の虜になった?!)レアルマネージメントに嫌気がさしたのかも・・。何といっても、彼の心理マネージメントがあったからこそ、チームが(ベンチウォーマーたちも)一つにまとまっていたのでしょうからネ・・。

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 さて、コンフェデレーションズカップBグループの勝負マッチ、ブラジル対トルコ。この試合は、もし引き分けだったら(得失点差によって)トルコが準決勝へ進出するという状況です。とにかくブラジルは勝つしかない・・。

 試合がはじまってすぐに、「あっ・・これは大きくチカラが違う・・あとはサッカーの神様が登場するかどうかだな・・」なんて思っていました。組織的な守備力、組み立ての展開力(ボールの動きの質)、局面での攻守にわたる個人のチカラ、そして仕掛けの「変化の演出の質」などなど、どれをとっても、やはりブラジルの方が一枚も二枚も上手なのです。

 どんどんと決定機を作り出すブラジル。イランが放った、ポスト直撃のヘディングシュート・・アドリアーノの、GKが飛び出してガラ空きになったトルコゴールへのシュート(ゴールに入っていたトルコディフェンダーが、かろうじて足を出して防ぐ・・まさに奇跡のディフェンス!)・・そして23分には、バックラインからのダイレクトでのロングパスを、うまくオフサイドラインから抜け出したアドリアーノが受け、そのままトルコGKのアタマを越すロビングシュートを決めて先制ゴール!!・・その後も、右サイドで抜け出したアドリアーノからの決定的クロス攻撃がトルコゴールを襲う・・等々。それに対しトルコは、ブラジルゴールへ迫ることさえ叶わない・・。

 ただ徐々に、そんなイージーなゲーム展開が、ブラジル選手たちのプレーから緊張感を奪っていくのです。イージーなプレーマインドが、ディフェンスに現れはじめていたということです。前半の彼らは、守備的ハーフを三人(エメルソン、ヒカルジーニョ、クレベルソン)にした手堅いゲーム戦術で試合に臨みます。それが殊の外うまく機能する・・だからこそ、二列目センターでチャンスメイク「だけ」をイメージするロナウジーニョの才能も活かされた・・。しかし徐々に、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェイス&チェックが甘くなり、トルコのボールの動きを抑制しきれなくなっていくブラジル。

 後半立ち上がりの時間帯は、逆にトルコが押し上げるという展開にゲームが変容していきます。もちろんブラジル守備ブロックは強いから、押されながらも、要所はキチッと抑え、機を見た危険なカウンターを仕掛けてはいくのですが(ゲーム展開としてはブラジルの思うツボだったのでしょうが・・)、ブラジルチーム全体に蔓延したイージーマインドのヴィールスは、確実に増殖をつづけていると感じていた湯浅なのですよ。そしてコトが起きてしまいます。後半8分。

 最前線で決定的スペースを狙うトルコのカラデニズが、ピタリのタイミングで決定的スペースへ飛び出したのです。この瞬間、彼をマークしていたブラジル選手は(ルシオ?!)、「オフサイドだ!」と手を上げる・・ただ、逆サイドには、ブラジルのストッパー、ジュアンが残っていた・・。そして一発のタテパスを受けたカラデニズが、ブラジルGKジーダの頭上を抜くロビングシュートを決めてしまうのです。さて・・。

 ここから、本物の心理ゲームの真骨頂という展開になっていきます。このままいけば準決勝進出というトルコが攻撃の手を緩めず(同点ゴールの後、守りに入らず、積極ペースの攻撃的プレーを維持しようとした姿勢は称賛に値する・・でも結局は押し込まれる展開になっていったけれど・・)、逆にブラジルは、弛んだ組織プレーイメージを回復させることができず、前半に魅せたようなチームプレー主体ではなく、限りなく「個」に偏った仕掛けをつづけるようになってしまう・・。

 一度ヴィールスに冒された「組織プレーマインド」を回復させることほど難しい作業はない・・それは、そこでのキーポイントが、心理的には苦しいボールがないところでの動き(クリエイティブなムダ走り)にあるからに他ならない・・また、そんな小さく縮こまったプレーペースを再び活性化できるようなグラウンド上のリーダーも見あたらない(どうもエメルソンは大人しすぎるという印象・・)・・。

 たしかに後半29分には、素晴らしいミッドフィールドの突破ドリブルで抜け出し、トルコ守備ブロックの視線とアクションを釘付けにしたアレックスからのラストスルーパスが決まりかけたけれど(右サイドでマウリーニョが魅せた決定的フリーランニングへのラストパス)、結局サッカーの神様は、ブラジルには微笑まなかった(シュートが、トルコGKルシュトゥーの正面に飛んでしまった!)。

 逆に後半36分には、完璧なカウンターで抜け出したバスチュルクからのラストパスを受けたオカンに逆転シュートを決められ万事休してしまったブラジル・・(後半ロスタイムにはアレックスが同点シュートを決めたけれど時すでに遅し)。

 サッカーは、有機的なプレー連鎖の集合体であるからこそ(真の意味でのチームゲームであるからこそ)本物の心理ゲームだ・・その事実を反芻していた湯浅でした。

 実力チームがトーナメントから消えたことは寂しい限りですが、まあそれもサッカーですからね・・仕方ない。さてこれで準決勝の組み合わせが決まりました。フランス対トルコ、コロンビア対カメルーン。内容があればレポートするつもりですので・・。




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