例えば、ワールドカップやチャンピオンズリーグなど大きな大会でのストーリー、「J」各チームのストーリー、欧州でチャレンジする日本人選手のストーリー、日本代表のストーリー、欧州各国リーグチームのストーリー等々。
なかでも、世界でも指折りの高質なサッカーを展開するレアル・マドリーのストーリーは深くて面白いことこの上ありません。昨シーズンは、ジダンの加入。今年は、「最前線のフタ」ロナウドの参加。そして様々な紆余曲折を経て「フタ」が開きはじめる・・。それはそれは、エキサイティングな物語だったのです。まあ、そんなレアル・ストーリーについては、「トピックス・トップページ」を下へスクロールし、何本も書いた以前のコラムを探してみてください。
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さてレアルにとっての勝負マッチがはじまりました。相手のアトレティコは11位という「ノー・モティベーション順位」ではありますが、相手がローカルライバルのレアルですし、彼らのホームスタジアム、ビセンテ・カルデロンでの試合ですからね。気合いは天井知らずといった具合。立ち上がりから、ガンガンとレアルを押し込んでいきます。
リーガ・エスパニョーラが「攻撃的なサッカーをする」と言われる所以は、とにかく、なるべく多くの人数を攻めに割こうとする「発想」がベースになっているからだと考えています。もちろん、だからこそ「次の守備でのバランス」を全員がイメージしている(でも後ろ髪を引かれることはない!)。要は、チャンスがある者はどんどんと上がっていく・・逆に、その流れに乗れなかった者は、しっかりと「次のバランス」を考える・・そのメリハリ・ピクチャーが、選手のなかに深く浸透し、互いの信頼関係が深い・・もちろん、基本的なバランサーは守備的ハーフ(シングル、コンビ、トリオなど)ではありますが・・。
そして彼らは、組織的なパスプレー(素早く、広くボールを動かすという発想)を基調に、誰もが、最終的な「個の勝負」を狙っている・・。そんな、「攻守のバランス感覚」、「組織プレーと個人プレーのバランス感覚」がいい・・だからスペインサッカーは魅力的・・ということでしょうか。
そんなことに思いをめぐらせていた前半5分。アトレティコが繰り出す「前への勢い」を、しっかりと落ち着いて受け止めていたレアルが、注意深い攻め上がりのなかで「個の才能」を爆発させてしまうのです。ジダンとロナウドのコンビネーション。
中盤の高い位置で、グティーからの横パスを受けたジダン(戻りながらパスレシーブ)。例によっての「細かく素早い」魅惑的ボールコントロールで、相手の視線と意識を引きつけてしまいます。この「ボールタッチ・リズム」は、特にジダンやフィーゴがうまい!
このことはまた別の機会に書こうとは思いますが、とにかくそのリズムは「特異」の極み。トッ・ト〜ン、トッ・ト〜ンというリズムでボールを運んでしまうのです。要は、相手のアタックアクション(反応)を誘う「トッ」というタッチの次の瞬間には、その相手の反応の逆を突くように「ト〜ン」とボールを動かしてしまうのです。その連続だから、相手は簡単に当たれない。そして視線と意識が引きつけられてしまう。この「特異なボールタッチリズム」を文章で表すのは難しいのですが・・。
この場面でもそうでした。トッ・ト〜ン、トッ・ト〜ンというリズムで、二人の中盤選手を引きつける・・このとき、最前線のロナウドは決定的スペースを狙っている・・アトレティコ最終ラインの二人のセンターバックも、ジダンの「球出しタイミング」を測るように「最終勝負のラインコントロール」を仕掛けている・・でも結局は、「特異なタイミング」でのスルーパスでウラを取られてしまって・・。まさに「ここしかない!」という素晴らしいタイミングのスルーパス。そしてそこからはロナウドの独壇場。ドカン!と、左足が炸裂したという次第。
それにしても、アトレティコのセンターバック二人がみせた「最終勝負のラインコントロール」はないよネ。ジダンがあれほど余裕をもっているのだから、ラインコントロール(オフサイドラインのコントロール)をやろうとしても、逆に、それをうまく利用されてしまうのは目に見えているのに・・。もちろんロナウドの動きも素晴らしかったのですが、とにかくあの場面は、絶対に「ライン・ブレイク」からのマンマークを選択すべきでした。
まあ、そんな駆け引きもサッカーの本質的な魅力なのですが(そんな駆け引きではなく、全てのチームが、創造性のカケラも感じられない忠実マンマークになったら確実にサッカーは衰退する!)・・。
さてこれで、試合開始早々に、レアルが一点リード。
それにしてもロナウド。周りのチームメイトたちとの「プレーイメージ」が噛み合うようになってきました。以前は、まさに最前線のフタとして、彼がポジショニングする最前線ゾーンを「塞いで」いたのですが、いまでは、動いてパスを受け、シンプルに展開パスを回して上がっていくという前後左右の「組織的な動き」も魅せるようになっているのです。だからこそ、自分自身が良いカタチでシュートに入れるシーンも増えてくる。やはり攻撃の基本は「変化」なのですよ。以前のように、ごり押し(=まさに個のチカラだけ)でシュートにいくのではなく、しっかりとボールの動きの流れに乗ることで、より変化のあるプロセスを経てシュートシーンに入っていけるようになったから、そのシュートチャンス自体の「質」も格段に高まったということです。また、ビックリすることに、守備にも積極的に絡んでいきますよ。
最前線に「張り付いて」いるのではなく、行動半径を広げることで、自ら、後方から決定的スペースへ入り込むという決定的フリーランニングを仕掛けることも可能になるし、味方にスペースを作り出すこともできる。以前は、最前線に張り付くロナウドをイメージして、ラウール、ジダン、フィーゴが、ボールを動かしながら仕掛け、最後の瞬間にロナウドへ・・というイメージが目立っていました。それでは、相手に仕掛けのリズムと最終ターゲットを読まれてしまうのも道理だったというわけです(ここら辺りも、以前のコラムを参照してください)。
やはり「環境」が人を育てる・・ということでしょう。徐々に、周りの味方とのコミュニケーションも改善されていったということです。もちろんそこでは、ロベカルという個人的な友人のチカラも大きかったのでしょうが・・。
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そんなことを考えていたら、またまたレアルがゴールをたたき込んでしまって・・。前半18分。今度はラウール。
右サイドで、ジダンからの夢のようなサイドチェンジパスを、アトレティコの左サイドバック、セルジとうまく「入れ替わる」ような素晴らしいトラップを魅せたフィーゴ(腿でのトラップの方向を、最後の瞬間にスッと縦方向へ変えた!)。そのまま抜け出して、まさにイメージ通りの「トラバース・パス」を決めたのです。そう、相手GKと最終ラインとの間に広がる「細長いスペース」を、ゴールラインと平行に横切ってしまうようなクロス(ラストパス)。そのパスが、動きながら、相手マークの背後を「回る」ように最終勝負のピンポイントへ入り込んでいたラウールにピタリと合う。まさに、フィーゴとラウールの「最終勝負イメージ」が、ピタリとシンクロしたとう瞬間でした。トラバース・パスが、ファーポストスペース(=最終勝負ピンポイント)でピタリと合ったというわけです。フ〜〜、素晴らしい。
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この試合では、マケレレとグティーが守備的ハーフコンビを組みました。もちろん、後方も含む広範囲ディフェンスはマケレレ。そしてグティーは、後方からのゲームメイカーというイメージでしょう。それでもグティーは、守備でも秀でたチカラを発揮します。カバーリーグの眼ばかりではなく、スライディングでの一発ディフェンス勝負も効果的。とにかくレアルは才能の宝庫です。もちろんその背景には、いまの「経済主導プロサッカー」があるわけですが・・(01-02シーズンでの年収ランクでは、マンUに大差を付けてレアルがトップ・・約360億円!!)。まあそのテーマについても別の機会に・・。
試合ですが、その後もレアルが得点を重ね(前半31分には再びロナウド、後半29分には、ジダンのフリーキックから再びラウール!)、終わってみれば「4-0」の大勝でした。
また、今節までトップをキープしていたレアル・ソシエダが、セルタ・デ・ビーゴに「2-3」で負けたことで(セルタのホームゲーム)、一試合を残した第37節を終了した時点で、レアル・マドリーが、逆に「勝ち点2」の差を付けてトップに立ちました。
最終節は、レアル・ソシエダ、レアル・マドリーともにホームゲーム。相手は、マドリーがビルバオ(UEFAカップ出場を競っている!)、ソシエダがアトレティコ・マドリー。さて・・。