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天皇杯準々決勝・・アントラーズの「ツボ」が炸裂!・・またジュビロ対ヴェルディー(2-1)についても一言・・(2003年12月23日、火曜日)

やっぱりマリノスの方が全体的に動きのあるサッカーをやっている・・だからアントラーズよりは効果的にスペースが使えている・・。ゲームの立ち上がり、そんなことを考えていましたよ。

 両チームともに守備が安定しているのは衆目の認めるところでしょう。だから私は、まず両チームの攻撃コンテンツに対する観察に集中していたのですが、そこで、組み立て段階でのアントラーズのボールの動きが、止まった味方への足許パスが目立つなど、全体的に緩慢だと感じられたのです。それに対してマリノスは、動いている選手への素早いタイミングのパスが目立つなど、人とボールがよく動くダイナミックサッカー。だから冒頭の第一印象が、まず脳裏に浮かんだというわけです。ところが・・。

 アントラーズのボールの動きですが、見方を変えれば、メリハリがあるなんていう表現ができるかもしれません。要は、組み立てでの「ポゼッション安全パス」と、仕掛けでのリスキーパスが、選手たちのイメージのなかで明確に区別されているということ。その基本的なアイデア(チーム戦術的な発想)は、日本代表にもつながります。まあ、だからこそ(仕掛けへシフトアップするシーンを演出する頻度が低いから!!)、どうも全体的に活気に欠けるというイメージがつきまとってしまうということなのかもしれませんがネ・・。あっと、またまたハナシが逸れてしまいました。これは、ジーコジャパンの人気がいま一つ盛り上がらないという事実の背景に潜むテーマですから、第二回目の「ザ・対談」など、それについてのディスカッションは機会を改めて展開することにしましょう。

 ということでアントラーズの攻めからも、同様に、全体的には「動きが活性化しないパッシブサッカー」という印象が残ってしまうというわけです。とはいっても、見方を変えれば・・チーム内でボールをキープするという統一されたイメージと、そのポゼッションをベースにして、チャンスを見計らった仕掛けに入っていく(急激にテンポをアップさせていく!)というイメージが、メリハリ良くバランスしている・・なんていう表現がつかえないわけでもない。

 アントラーズの攻撃で典型的な仕掛けスタートサインは、足許への安全パスをつないでいるなかで、味方ボールホルダーが「局面勝負」に競り勝った状況です。足許パスを素早くトラップする・・そこへ相手ディフェンダーがアタックにくる・・そのアタックを巧みにかわし、ある程度フリーでボールをキープする・・それこそ「仕掛けの起点」・・。それが、仕掛けスタートの明確なサインになるというわけです。もちろん、足許パスをつなぐなかでのワンツーや、チョン!と戻すバックパスで仕掛けの起点(ある程度フリーでボールを持つ味方)を演出してしまうといったシーンも多々ありますがネ・・。

 アントラーズが勝負を挑んでいくシーンを観察すれば、彼らが脳裏に描いている仕掛けイメージが、チーム内で明確にシェアされていることがよく分かります。だからこそ、急激にテンポアップする状況では、何人もの選手たちが、仕掛けの流れに効果的に参加してくるというわけです(=もちろんイメージシンクロプレーのこと!)。そこでの(最終勝負を明確にイメージした)周りの味方の攻撃参加の勢いはレベルを超えている・・。

 また彼らの場合は、そんな仕掛けコンビネーションのスタートイメージに、一発ロングパスやサイドチェンジパス、はたまたアーリークロスでの最終勝負イメージも確実に(メリハリ良く)ミックスしてくるから強い。それが、彼らが前半に挙げた三ゴールのベースにあったというわけです。

 先制ゴールのシーンでは、左サイドで小笠原がボールをもった時点で、ヘディングゴールを決めた本山が、明確な最終勝負イメージを描写しながら、中央ゾーンを全力ダッシュでゴール前へ詰めてきました。そこには、小笠原なら、必ず正確なクロスを合わせてくれるという確信があった・・そしてまさ、その最終勝負イメージ通りに・・ってな具合。このシーンで本山が魅せた、後方からの「消える全力フリーランニング」は、見事の一言でした。

 追加ゴール(二点目)シーンでは、小笠原が、完璧な仕掛けのコアとして最後まで機能します。中盤の高い位置でボールをもった小笠原・・まず右サイドの本山へのサイドチェンジパスを出す・・パスを受けた本山は、ドリブルで中へ切れ込んでマリノス守備ブロックを引きつけ、次の瞬間には小笠原へパックパスを返す・・それを受けた小笠原は、一度タメてから、左サイドスペースをフリーで上がってきた青木へのラストパスを通してしまう・・。まあ、青木が魅せた、切り返しからのシュートも見事でしたけれど、そこに至るまでのプロセスに、(仕掛けに入ったときの)アントラーズ選手たちが脳裏に描いていた仕掛けイメージが、しっかりとシンクロしていたことを認識させられたものです。まさに、勝負所におけるイメージの優れた有機連鎖ってわけです。大したものだ・・。

 また三点目のシーンでは、右サイドでの「起点の演出」とタイミングのよい追い越しフリーランニングによって、まったくフリーでタテパスを受けた内田が、素早いタイミングでクロスを上げ、それが、逆サイドでフリーになっていた小笠原のアタマにピタリと合った・・というゴール。お見事でした。

 強固なディフェンスブロックを基盤に、攻め急ぐのではなく、前線スペースを広げるような(相手守備ブロックを前へつり出すような)安全確実なパス回しをベースに、急激なテンポアップ(爆発)で「そこ」を突いていくという明確な共有イメージに支えられた仕掛けを繰り出していくアントラーズ。

 その意味でこの試合は、まさに彼らのツボにはまったという内容だったと言えそうです。前半の三点ともに、「押し込んで挙げた」というのではなく、攻撃ブロックの位置的なタメ(安全確実なパス回し)を演出しながら、最後の瞬間に、ドカンッ!と突っかけていったことで生まれたという印象が強く残りましたからネ。

 別の見方をすれば、アントラーズが、全体的には拮抗したゲーム展開のなかで、「局面」でカウンターのような状況を演出できていた・・とも言えそうです。それこそブラジルの真骨頂?! 素晴らしいテクニックをベースにしたボールポゼッションから相手守備ブロックを誘い出し(守備ブロックに穴を演出し!)、最後の瞬間での爆発的なテンポアップで「そこ」を突いていく・・。

 今回の天皇杯でも、彼ら本来の勝負強さが存在感を発揮しそうな予感が・・。

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 ジュビロ対ヴェルディー戦についても短くレポート。

 ヴェルディーの「つなぐサッカー」ですが、この試合では、かなり「動的」でハイレベルなモノに発展していましたよ。ヴェルディーについては、止まった味方への足許パスや安全パスばかりの低次元サッカーだ等、ちょいと以前から厳しいコメントがつづいていましたから、この試合でのアクティブなサッカーに、ちょいと彼らを見直していた湯浅です。これまでは、出来る能力が十二分に備わっているのに、斜に構えたプレー姿勢など、一生懸命プレーしようとする意志が前面に押し出されていませんでしたからネ(少なくとも私が見た試合の多くは、その傾向が強かった)。彼らは「一生懸命にプレーすること」を格好悪いことだと思っている?! もしそうだとしたら、それこそ本当にカッコ悪〜〜い!

 それがこの試合では、ちょいとイメチェン。まあそれには、この試合でのメンバーにボールプレイヤーが少なかったこともありそうです。そこで中盤ダイナミズムを中心的に演出していたのは、山田卓也、小林大悟、そして、ものすごく行動半径が広い桜井直人でした。

 この試合でのヴェルディーは、ジュビロに負けず劣らずの、人とボールがしっかりと動くサッカーを魅せてくれました。とはいっても、どうしても最終的な仕掛けプロセスでは、エムボマのところで「流れ」がよどんでしまう・・。

 組織パスプレーと個人勝負プレーをうまくバランスさせながら仕掛けていくヴェルディー選手たち。素早く広いパスとボールなしの動きがうまくシンクロするなど、オジーが監督に就任した当時には魅せてくれていたハイレベルな有機連鎖コンビネーションへの期待が高まったものです。でも結局は、その流れがエムボマのところで止まってしまうのですよ。もちろんエムボマがボールを持ったら、半分くらいは、ゴールを期待させてくれるような危険な雰囲気を演出してくれるのですが、でも全体としては、やはりマイナス面の方が大きいように感じられる(だからイタリアでも使われなかった・・)。ということで、まだまだエムボマは、ヴェルディーにとって「諸刃の剣」というレベルにとどまっているようです。

 対するジュビロですが、やっと後半に入ってから、「安定」して彼ら本来のサッカーが展開できるようるようになったという印象でした。実効ある守備意識を基盤に、人とボールが、クリエイティブに、そして活発に動きつづけるダイナミックサッカー・・。まあ彼らについては、準決勝(対エスパルス戦)でもレポートしますので・・。




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