ラジオの解説でエネルギーを使い果たしてしまったので、ここでは、ポイントを絞り込んで短くレポートすることにします。まず、前半の見所だった「19歳対決」。ジュビロ成岡とセレッソ酒本のマッチアップのことです。両者とも、存分に持ち味を発揮していましたよ。若者がブレイクするプロセスの証人になれることほど幸せな瞬間はないから、とにかく目を皿のようにして二人を観察したものです。
酒本(さけもと)は、例によって、確実なディフェンスをベースに、右サイドからのドリブル突破と決定的クロスに賭ける。対する成岡は、これまた忠実なディフェンスをベースに、組織プレーを基調にした仕掛けプレーを展開する。そのサイドで両チームが仕掛けに入る度に二人の対決シーンが見られるのですからネ、まさに見所てんこ盛りといったところ。両人の(19歳同士の)意地もありますからネ。
ところで、準決勝で2ゴールしたジュビロの成岡。この試合でも、特に攻撃で素晴らしい実効プレーを展開しました。彼の場合は、何といってもパス&ムーブがクレバーで効果的。なかでも、吹っ切れた「三人目の飛び出しランニング」が特にインプレッシブです。だからこそシュートを打てる(ジュビロの前半5本のシュートのうち、成岡が2本もシュートを放った!)。
ここは勝負所だ!と、(相手のマークから消えるように)スッと最前線へ上がっていくタイミングやコースは、まさに「センス」としか言いようがありません。何度、彼が絡んだ決定的仕掛けプロセスを目撃したことか。彼には「消えるプレーの王様」ってな称号を贈りましょうかね。
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この試合は、両チームともに仕掛け合うというエキサイティングな展開になりました。両チームともに、負けたくない!・・というのではなく、勝ちたい!・・というサッカーを展開していたということです。だからこそ盛り上がった。観客の皆さんは、「よし! 十分に元を取ったぞ!!」なんて、ご満悦で家路についたに違いない・・。
やはりサッカーの魅力は「解放」なんですよ。要は、「自由」こそがサッカーの魅力の本質だということです。もちろん「過ぎた解放」は混乱を招くばかりですがネ・・。理想的なのは、規制(戦術)ファクターがしっかりと機能し、なおかつ、限りなく解放ファクターに覆い隠されている・・という状態ですかネ。この試合には、そんな雰囲気があった(そんな理想型がうまく機能していた!)と思っている湯浅なのですよ。
そんな全体的なゲームの流れのなかで、勝負の行方を決定したのは監督の采配でした。
まず動いたのはセレッソの塚田監督。後半から、酒本の代わりに徳重を送り込んだのです。準決勝のアントラーズ戦でも「交代キーマン」になった徳重。この試合でも、後半の立ち上がりから、セレッソ仕掛けの演出家になります。セレッソ選手たちは、彼の能力の高さを知っている・・だから、その能力を活用しようというアイデアを前面に押し出している・・。セレッソ選手たちは、徳重へのパスを強く意識するだけではなく、ボールを持った徳重が「個の勝負」を仕掛けていきやすいようにサポートポジションに就いたり、個のドリブル勝負からのラストパスを受けられるスペースへフリーランニングをしたりと、彼の能力を十二分に発揮させようとしていたのですよ。もちろんその背景に、準決勝アントラーズ戦で徳重が魅せつづけた高質なプレーコンテンツがあったというわけです。そして、前半では押され気味だったセレッソのサッカーにホンモノの勢いが乗ってくる・・。
塚田監督は、ここが勝負だと思ったのでしょう。後半10分には、左サイドバックとして攻守にダイナミックなプレーを展開していた原信生の代わりに、フォワードの西澤も投入するという決断をします。そしてセレッソの攻めの勢いが倍加していく。勝負所を逃さず、選手たちに対する明確なアピールという意味も含めた選手交代を敢行する。見事な采配だな・・。塚田監督のウデに拍手をおくっていた湯浅でした。
どんどんとサッカーの内容が停滞しはじめるジュビロ。彼らは、セレッソの前への勢いに心理・精神的に押され「擬似」悪魔のサイクルに入っていきます。ボールを奪い返しても前へ行かず、横パス(安全パス)をつなぐばかり・・だから、前線へボールが出てもサポートの動きが遅れてしまう・・。そして、そんなドン詰まり状況で、今度はジュビロの柳下監督が動くのです。彼は、後半22分、左サイドバックの成岡に代えて、トップの中山ゴンを投入したのです。そしてそれが、まさにツボにはまることになります。
柳下監督は、私がヨミウリサッカークラブでコーチをしていたとき、ヤマハで現役でした。非常に冷静でクレバーなリーダー的存在。よく覚えていますよ。だから彼の采配がピタリとはまったときは嬉しさがこみ上げてきたモノです。「よし、柳下、うまい選手交代だぞ!!」ってネ。
とはいっても実は私は、文化放送の解説で、「成岡に交代・・?? そうかな・・。いまのジュビロの仕掛けの多くは成岡の押し上げが起点になっているのに・・」なんてことを喋っていました。でもそれだったら、ゴンを誰と代えるのか・・まあ前田という選択肢もなきにしもあらずかな・・ってなことを思ったものです。その交代について、柳下監督が、試合後の記者会見でこんなことを言っていましたよ。
「セレッソは、森島を右サイドに入れた・・そこからの森島のセンターへのフリーランニングに不安を感じていたから、そのゾーンに服部を移動させることにした(交代の成岡に代えて服部を左サイドバックに据えた!)・・その代わりに名波を下げ、前田を二列目にする・・その交代がうまく機能したと思いますよ・・とはいっても、いま考えれば、中山の投入は遅すぎたと言えないこともないけれど・・」。
その後の展開は、ご存じの通り、ゴンの登場で「スピリチュアル・エネルギー」を倍増させたジュビロが、セレッソのゴールを陥れるということになったというわけです。そこではセレッソが、ゴンの登場で「スピリチュアル・エネルギー」を大きく減退させてしまったという面もあったことでしょう。サッカーはホンモノの心理ゲーム。まさに、選手交代が生み出したゲームの(心理的な)流れの揺動というわけです。それが実際のゴールにつながってしまうのですから、ジュビロは笑いが止まらない・・。そして私は、中山ゴンのスピリチュアルエネルギーの大きさと、柳下監督の確信レベルに高さに対して、「恐れ入りました・・」って言っていました。
その後、もう一度、柳下監督の「感覚」が冴えわたる交代がありました。グラウが退場になった後半80分から3分後の、前田と菊地の交代のことです。グラウの退場で、完璧に「押せ押せ」になるセレッソ。逆に、セレッソの前への勢いをうまく抑制できずバタバタしはじめてしまうジュビロ守備ブロック。そんなタイミングで投入された菊地が、素晴らしい守備での機能性を発揮したのです。何度、菊地のダイナミック&忠実な粘りディフェンスがセレッソの仕掛けの芽を摘んだことか。私は菊地のことばかりを見ていました。「ヤツは、柳下に、ものすごくカツを入れられてグラウンドに送り込まれたに違いない・・」。
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両監督は、ディフェンダーを外してフォワードを投入するという積極策を魅せました。それも、試合がエキサイティングに盛り上がった背景にあったということです。こんな変化に富んだエキサイティングマッチですからネ、ラジオ解説にリキが入らないはずがない・・。試合後には、ちょいと声が枯れちゃったりして・・。とにかく、純粋ゲーム観戦でも、ラジオ解説でも、とことんサッカーを楽しんでいた湯浅でした。
またビデオを見返してからレポートするかもしれませんが、数日後には、リーガエスパニョーラやプレミアリーグがあるし、中田ヒデが入った(?!)ボローニャも含めたセリエも再開してしまう。また高校選手権もあるし・・。
とにかくこの2-3日は、完全休養することにします。旧年中は、読者の皆さんからたくさんの「良質スピリチュアルエネルギー」をもらいました。今年もよろしくお願いします。
最後になりましたが・・。新年、明けましておめでとうございます。今年が皆さんにとって(皆さんの自分主体のアクティブ人生にとって)良い年になるよう心から祈念します。