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ワールドユース(1)・・立派な、本当に立派なサッカーを展開しただけではなく勝利まで勝ち取った若武者たちに乾杯!!・・日本対イングランド(1-0)・・(2003年11月30日、日曜日)

ヤッタ〜〜!! 後半8分に、坂田が決勝ゴールをたたき込んだとき、中身の濃いこの試合にのめり込んでいたこともあって、瞬間的に拳を突き上げていました。

 FC東京を「あそこ」まで引き上げた(その絶対的な基盤を作り上げた!)大熊監督が指揮を執るU20日本代表。とにかく、ものすごく高い守備意識が特徴です。もちろんそれは、オールコートマンマークなどという型にはめるものではなく、全員が「自分主体で仕事を探しつづける」というクリエイティブなものです。そんな創造的なプレー姿勢は、なんといってもボールがないところでの守備に如実に現れてくる。とにかく彼らは、周りの状況を素早く判断するなど「考えつづけている」とビンビン感じさせてくれるのですよ。そんな、選手たちの考える姿勢、そして勇気をもって決断し実行していく姿勢を発展させるのも監督の仕事・・いや、特に日本の場合は、そのタスクが最も重要なものかもしれません。

 とにかく日本の若武者たちの、自分主体の守備意識の高さに感じ入っていた湯浅なのです。そのベースは、もちろん、選手たちに深く浸透した「互いに使い・使われるメカニズムへの理解」。だからこそ攻撃にも(守備意識に対する互いの信頼関係が確立しているからこその)吹っ切れた勢いを乗せることができる。

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 立ち上がりの時間帯。日本は、相手を見ていました。要は、相手のチカラを体感し、自信レベルを高揚させようとしていたということです。もちろんそれは守備において・・。そして徐々に前への勢いを加速していったのです。

 イングランドは体力面では日本よりも少し上かな・・なんて思って見はじめたのですが、日本もまったく負けてはいない。スピード、パワー、競り合いでの当たりの強さなどのフィジカルは互角。もちろんテクニックも互角(いや、器用な日本人だから見方によってはそれ以上?!)。戦術的な発想レベルでは、攻撃の変化という視点で、確実に日本の方が上でしょう。まあ心理・精神的なところでは、社会的な環境もあるからやはりイングランドなのだろうな・・でも、決して競り合いで気圧されるいるワケじゃないし・・まあこれも「J」による環境整備の賜というところなのかも・・なんて思っていました。ということで、心理・精神的な部分でも、「あの」イングランドに対して目立った弱みを感じることはまったくなかったということです。

 そして徐々に日本代表のサッカーに自信が満ちあふれていく・・。イングランドは、選手から監督まで(テレビ画面に、表情や態度が映し出されている!)、やはり日本を「イージー」に考えているようです。オレたちが日本なんかに負けるはずがない?! だからこそ、こちらは気分爽快! 立派なゲームを展開してくれた、若く、聡明で、エネルギッシュな大熊監督に大拍手なのですよ(彼に対するこの表現は、FC東京時代もよく使った!)。

 それでも前半24分には、まさにイングランドという攻めを成就されかけてしまいます。GKからの、ドカン!というアバウトなロングボールが最前線まで飛んでいきます。そこでの競り合いでボールがこぼれた瞬間、その競り合いに参加した選手、周りの二人の選手たちが、まさに「バクハツ」といえる勢いで前のスペースへダッシュしたのです。瞬間的にボールを見てしまった日本選手は、その流れに置き去りになってしまう。そして二本のダイレクトパスと、三人のフリーランニングが有機的に連鎖し、日本代表ゴール前に広がる決定的スペースを攻略されてしまったというわけです。

 最後は日本GK川島のスーパーファインセーブで事なきを得たものの、完璧に守備ブロックを崩されたシーンでした。ロングパスを出し、その競り合いでボールがこぼれた瞬間に、複数の選手たちがタテスペースへ飛び出していく・・。そんな「イングランドのツボ攻撃」もまた体感コンテンツにしっかりとしまい込んでおかなければ・・。

 まあ、そんなピンチはあったものの、全体的な試合の流れとしては、日本代表が、相手のチカラを体感しながら徐々にペースを上げていき(徐々に自信レベルを高揚させ)、前半も押し詰まったころからは、完全にイングランドをサッカー内容で凌駕するというレベルまで発展をつづけたという、まさに「勝負マッチのなかで大きく成長した日本代表」といった展開でした。

 とにかく、素早く拾い組織パスプレー(クリエイティブなボールの動き)と、最終勝負シーンだけではなく中盤も含むグラウンド上の至るところで展開される、勝負ドリブルやタメキープなどの「個のエスプリプレー」が、本当に心地よくバランスしているのです。もちろんそれも、このゲーム立ち上がりに、ディフェンスをベースに自信&確信レベルを高揚させていったという「心理プロセス」の賜というわけです。

 そして、ハイレベルなクリエイティブ組織&個人プレーが決勝ゴールとなって結実する・・。素晴らしかったですよ。鳥肌が立ちました。左サイドでバックパスを受けた小林大悟(湯浅注釈:これは小林大悟ではなく、本当は鈴木規郎選手でした・・読者の方から指摘され、アッと気付いたけれど後の祭り・・ということでそのまま単純に名前を入れ替えるのではなく、お詫びも入れることにした次第・・本当に鈴木選手には悪いことをしました・・鈴木選手の、その後の最終シーンを明確にイメージ描写したラストサイドチェンジ勝負パスに乾杯!!)・・ちょっとタメキープして相手を引き寄せながら逆サイドに視線をはしらせる・・そして相手のアタックがとどく寸前に、逆サイドで全くフリーになった徳永めがけてクロスボールを送る(これは決定的サイドチェンジパス!)・・ボールが到達するまでコンマ数秒の「余裕」があった徳永は、次の勝負プレーを決断し、そして実行した・・そう、寄ってきた相手ストッパーの背後スペースに入り込んだ坂田へのダイレクトラストパス・・それが見事に、本当に見事に決まった・・そして坂田は、ヘッドで押し込むだけ・・。いや、本当に見事な決勝ゴールでしたよ。

 特に後半8分の決勝ゴール後のプレー内容がよかった。もちろん全体的には押されていたし、セットプレーでも相手の力づくの仕掛けにピンチはあったけれど、流れのなかではイングランドに仕掛けの形を作らせなかった(ウラの決定的スペースを突かれたり、フリーシュートを打たれるようなシーンはまったく作らせなかった)だけではなく、攻めでも、まさに自信あふれたプレーを展開したのですよ。相手に寄せられてもまったく動じることなくボールをコントロールしたり、そこから相手のプレッシャーを身体で抑えながらキープして、次の効果的な展開につなげてしまったり・・。まさに余裕の展開という雰囲気なのですよ。それも、「あの」イングランドを一点リードしているというのに・・。

 イングランド関係者の表情が、前半の途中からどんどんと暗くなっていったのが印象的でした。眉間のしわの深さも、試合中に二倍になった・・?!

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 内容的にも、まさに相手を内容的に凌駕して「勝ち取った」という表現がふさわしい立派なファーストウィン。気分爽快この上なし! これからの彼らの「大会プロセスでの発展」に対する期待が極限まで高まるじゃありませんか。

 次は火曜日のコロンビア戦。手強い相手ですよ。イングランドとはまったくといっていいほど異なるタイプのチームですからネ。だからこそなおさら、「ホンモノの発展を遂げることができるかもしれない・・」という期待が高まるわけです。




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