トピックス


「J」第七節、アントラーズvsレイソル(1-2)(1999年5月19日)

閑散とした国立競技場。中位同士の対戦だから・・?、ウイークデイだから・・?、雨だから・・?、カシマから遠いから・・?・・ということなのでしょうかネ。

 ぞれでも、メンバーからすれば(両チームともにほぼベストメンバー)かなり面白い試合が期待できるのに・・

 序盤の、ペースのせめぎ合いが続く中、まず8分、ビスマルクのスーパーフリーキックが決まります。いや素晴らしいゴール。観る方にとっては、「これで、もっと積極的な仕掛け合いが見られるゾ・・」ってな具合に期待が高まります。序盤のゴールは、その意味では有りがたい限りです。

 そんな期待通り、ゲームは白熱の様相を呈してきます。そのシンボルとなったのが、レイソルが14分に挙げた、絵に描いたような「世界レベル」の同点ゴール。

 レイソル最終守備ラインのホン・ミョンボの攻め上がりがキッカケになります。最前線でしっかりとボールをキープし、中の加藤へ横パスを出すホン・ミョンボ。パスを受け、ちょっと「タメ」を作る加藤。この瞬間、アントラーズ守備陣の足と視線が止まります。そのタイミングで加藤は、横にいるベンチーニョへパスを出し、自身は、アントラーズ守備陣を引きつけるようにタテへ爆発的なダッシュを仕掛けます。ただベンチーニョが「イメージ」していたのは、アントラーズゴール前中央の決定的なスペース(GKと最終守備ラインの間に広がるスペース)。そしてこの瞬間、タメられていたエネルギーが爆発します。

 満を持して待ち構えていたストイチコフが「爆発」したのです。タテへ抜け出るスタートタイミングは絶妙。そしてその勢いは鉄の壁をも突き破ってしまう?! 一瞬にして、アントラーズ最終守備ラインを追い越します。そしてベンチーニョから、彼が狙う決定的スペースへ、これまた夢のようなタイミングと方向、強さと質(浮き球)のラストパスが通ります。ストイチコフのワールドクラスのトラップテクニックについては、もう何もいうことはありません。素晴らしく美しい同点ゴールではありました。

 ここからは、阿部がケガで退場してしまったこともあって(代わって本山が登場)、もう完全にレイソルペースになってしまいます。レイソルでは、明神、下平の堅実なボランチコンビ、ホン・ミョンボが魅せる攻め上がりと守備ラインの統率力、そして、相手守備ラインを崩すために「世界レベルのアイデア」を駆使するストイチコフ、ベンチーニョのトップコンビが非常に目立っています。そして中盤での素晴らしいボールの動き・・

 ただ30分を過ぎたあたりから、アントラーズも目を覚ましたように危険な攻撃を仕掛けはじめます。その後、両チームともに、素晴らしく活発なボールの動きをベースに、危険な仕掛けを繰り返します。

 名良橋のセンタリングから、長谷川がダイレクトシュートを放つ・・、本山が、中盤をタテに突き抜けるドリブルから、それはもう「キャノン・シュート」と呼べるようなスーパーシュートを放つ・・、また逆にレイソルでは、加藤が、5センチ外側を、右ポストをかするように惜しいシュートを放つ・・フ〜〜〜

 ホラ、言ったとおりにエキサイティングゲームになったじゃないか・・ってな具合に、一人悦にいる湯浅なのです。

------------------

 後半、両チームともに「互角に」仕掛け合うといった展開は変わらず、興味深い内容のゲームが続きます。

 とはいっても、仕掛け合いながらの「膠着状態」であることは確か。こんな状態を打開するには、ショート・ショート・ロング、また、最終守備ラインからの一発ラスト・ロングパス、はたまた、中盤からの「勝負ドリブル」などなど、「攻撃の変化」がもっとも効果的なのですが、まだ両チームともに、「限界」のリスク・チャレンジを仕掛ける時間帯ではない・・と感じているのかも・・

 アントラーズの鬼木に代わってリカルドが入ってきました。私はリカルドのことはあまり評価していません。ボランチであるにもかかわらず、そのプレー態度があまりにも消極的、緩慢・・という印象をもっているのです。ということで、アントラーズは、自ら勝つチャンスを放棄してしまった?!・・なんて思ったりしたものですが、予想に反して、この試合でのリカルドの積極性には目を見張るものがあります。やっと彼も、危機意識に目覚めたんでしょうかネ・・。この積極的なペースを最後まで維持できたから、私の評価も変わるとは思うんですが・・

 別の注目選手、本山。彼には、もっともっと積極的な仕掛けプレーを展開して欲しいと思います。ナイジェリアでの世界ユース選手権のときのように・・。何となく彼のプレーからは、プロにはあるまじき「遠慮」を感じるのです。

 プロは「個人事業主」。誰も助けてくれませんし、進む道は、自分自身で切り開いていくしかありません。そのことについての自覚がまだ足りないのかな?! 彼には、しっかりとした「心理マネージメント」が必要だと感じます。あれほどの才能なんですから、とにかくもっともっと大きく伸びるはずなんですから・・

 試合は、残り15分で俄然ヒートアップしてきます。両チームも、ここが勝負だと、積極的な攻撃を仕掛け続け、どんどんとシュートにトライしてきます。

 攻撃の目的は「シュートを打つこと」。ゴールは結果にしか過ぎません。両チームの、そんなセオリー通りの積極的な攻撃が試合を盛り上げる、盛り上げる! シュートシーンのないサッカーなんて、塩気のない料理みたいなもんですからネ。さてここいら辺りから、エキサイティングな最終勝負の時間帯に入ってきます・・

 30分を過ぎたころから、アントラーズの柳沢が絡んだ危険な攻めが目立つようになってきました。特に37分に魅せた柳沢の単独突破は特筆もの。最後はシュートまでいったのですが、そこに至るまでに、ほとんどファールというチャージを続ける二人のレイソルディフェンダーを引きずるように、強引な突破を見せます。そんなところにも、柳沢の「心理的な進歩」を感じたものでした。

 ただ試合は、まだまだどちらに転んでもおかしくない展開。これは最後までまったく分からないナ・・・・ってなことを思っていた矢先、レイソルの決勝ゴールが入ってしまいます。

 それは44分。右サイドでボールをもったストイチコフが、例によって落ち着き払ったサイドチェンジのパスを(例によって糸を引いてます)、逆のサイドにいるベンチーニョに送ります。こんなキックを持っている選手がいたら、チームのプレー範囲が何十メートルも広いものになるのはアタリマエってなもんですよネ。ストイチコフは、レイソルに次元を超えた「プレーイメージ的」な資産を与え、それが今シーズン躍進の原動力の一つになっているようです。

 さてパスを受けたベンチーニョ。軽く胸でトラップし、そのままシュート気味のボールをゴール前へ蹴り込みます(もしかすると本人は本当にシュートのつもりだったりして・・)。そのボールに「ラッキー・タッチ」してゴールを奪ったのは片野坂でした。

 その後のアントラーズの怒濤の攻め。ただレイソルのGK、南が心理的に押し込められるはずもなく、彼の安定したプレーぶりでレイソルゴールを守り抜きました。

 最後に、アントラーズのリカルドについてですが、私の最終的な評価は、「前よりはパフォーマンスは上がったけれど、外国人選手としてはまだまだ物足りないナ・・」というものです。

 調子を上げながら勝てないアントラーズ。セカンドステージでは、大いにリーグを盛り上げなければならない主役の一人として、しっかりとした建て直しをおねがいしましょう。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]