湯浅が、ドイツのテレビ(WDR=西部ドイツ放送)にインタビューを受けました。質問の骨子は、ドイツのサッカーコーチ養成システムは、日本でどのように受け止められているのか・・というもの。インタビュアーは、最近の低迷から、ドイツサッカーのレピュテーション(名声)が極端に落ち込んでいるのではないか・・、またそのことでドイツのコーチ養成コースの評価も下がっているのではないか・・と心配しているようです。
「ドイツサッカーでもっとも優れているところは、子供からプロまで、一貫した『コンセプト』に基づいてコーチングされていること。そのシステマチックな構造は、疑いもなく世界有数だ」
「たしかに最近のドイツサッカーは低迷しているし、若いタレントも多くは排出していない。ただそこには、『一貫したシステム』だからこその方向転換の可能性がある。コンセンサスさえ得られれば、一気に、コンセプトのベクトルを良い方向へ変えることができるだろう。世界有数の「システマチック構造」だからこそできることなのだが、そこで行われている内容も含め、ドイツのコーチ養成コースは、日本でも(まあエキスパートたちに限ってかもしれませんが・・湯浅の内心でした・・)まだまだ評価が高いんですヨ・・」
そんな風に答えました。
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いまドイツでは、「自国サッカー低迷」に関するディスカッションが盛んです。このインタビューも、「ドイツを代表するコーチのミーティング」ということで、かなり批判的な「視点」で行われたというわけです。
たしかに、(結果が伴わない場合の)メディアからの強烈な攻撃という背景があるために、若いタレントが育ちにくい(チャンスを与えにくい)・・、新しいシステムに「トライし難い」ことは確か。ただそれに対しては、メディアの報道姿勢だけに非を求めるのではなく、コーチ連中も責任の一端を背負わなければなりません(もっと彼らがイニシアチブを発揮しなければならないのに!!)・・
とにかく今回の国際会議は、ドイツサッカーの低迷(硬直したサッカー?!)という背景だけではなく、現ドイツ代表監督のエアリッヒ・リーベック、ブンデスリーガを代表するクリストフ・ダウム(この両名ともコーチ連盟の副会長)、それ以外にも、シュティーリケ(現ドイツ代表コーチ)、ルーベッシュ、カルツ、ネッツァーなど往年の名選手や、ユルゲン・コーラーなどの既にコーチライセンスを取得している現役プロ選手など、多くの「著名人」が参加している・・、一昨年のトヨタカップチャンピオン、ボルシア・ドルトムントも、二時間の「トレーニング・ユニット」を披露する・・などなどで、メディア注目度は別格でした。
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硬直した(伝統に固執する?!)ドイツサッカー・・。その代表選手が、「ドイツ的に堅実、確実な守備システム(リベロ付きのスリーバック)」です。
今回の国際会議では、そこのところにも大きくスポットが当てられました。
詳しいことは別の機会に書きますが、要は、「堅実、確実なスリーバック(リベロ入り)」と、クリエイティブな能力が求められる「ライン・ディフェンス(ラインフォー、ラインスリー)」の比較というわけです。
スペインのバルセロナで行われたチャンピオンズリーグの決勝、マンチェスター・ユナイテッド対バイエルン・ミュンヘンの試合でも、ドイツ的なスリーバック(前気味のリベロ=この試合ではマテウス)の堅実さが証明されたわけですが(これについては、以前の湯浅HPコラムを参照)、それでも、堅実さだけでは将来につながりません。もっと選手のクリエイティビティーを伸ばせるようなシステム的な工夫が必要なのです。
もちろんドイツのコーチ連中も、そのことは十二分に分かっています。それでも、影響力の大きな「場(つまりプロサッカー)」での新しい守備システムへのトライには、それ相応の勇気が要るのです(二三試合負け続けたら、すぐにメディアの攻撃対象になり、コーチのイスまで失いかねない・・)。
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ただドイツでも、さまざまな「変化・進化」への模索がなされるようになっています。
その一つが、シュツットガルトの監督、ラルフ・ラングニックがトライしている「守備の発想」です。それは「ボールの動きをターゲットにする守備プレー(ボール・オリエンテッド・ディフェンス)」。
基本的には、自らがオフサイドラインをコントロールする「ライン・ディフェンス(フラット・フォー)」。その前の四人から五人の中盤も、フラットなラインを基調にします。そして、相手のボールの動きをしっかりと見定め、『次のボールの動き』にターゲットを絞り込んで(予測して)、パスを受けた相手だけではなく、その周りに対しても「必要・十分」なプレスをかけて(ボールホルダーへのプレス状態の見極めが重要!!)ボールを奪い返し、一気に相手ゴールへ・・ってな「システム(チーム戦術)」です。
でもこのシステムは難しい。また「レベルを超えた積極性」「集中力」「勇気」などが必要です。チーム内に「ヨシ! イケルぞ・・」ってな雰囲気が出てくるまでは苦労の連続でしょう。もしかしたら、シュツットガルトは、このシステムで負け続けるかもしれません。そうなったら・・
なんとかドイツにも「新しいトライに対し時間を与え」たり、「若いタレントにチャンスを与える」余裕ができればいいんですがネ・・。とにかく「結果に対するプレッシャー」は、もう天文学的・・。だからどうしても「実践」では、従来の(守備)システムで戦ったり、将来のある若手よりも「実績のある外国人やベテラン」ってな具合になってしまうんですヨ。
メディアも含む「サッカー産業」全体が、共通のコンセンサスをベースに、新しいことにトライする「スペース」を作り出さなければ・・。ドイツには、「かの国」とは違い、ドイツコーチ連盟の国際会議など、それを可能にする「システマチック構造」が整備されていると思うんですがネ・・