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コパ・アメリカ決勝・・ブラジルの「チームプレーのイメージシンクロ」レベルの高さにシビれて・・(1999年7月19日)

前半21分のブラジルの先制ゴールと、数分後のリバウドの追加点。これで、すべてが決まってしまいました。

 先制ゴールは、フラビオ・コンセイソンのフリーキックから。相手の「前」に走り込んだリバウドのアタマに正確に合わせ、それが「色々な可能性を秘めた意図のとおり」にウルグアイ右サイドに飛び込んだのです。

 このゴールには、いくつかのキーポイントがありました。まずブラジルが、流れの中ではチャンスを作り出すことが難しいに違いない・・という試合展開を考え、リスタート(特に相手ゴールに近い位置でのフリーキック)が大事!! ということを、選手全員がよく理解していたということ。チーム内のイメージが、高いレベルで「シンクロ(同期)」していたということなのですが、ここいら辺りにも、ブラジルの強さの秘密があります。

 ブラジルの守備プレーからは、自分たちのゴールが近くなったら、なるべくファールをしないようにするという意図が明らかに見えます。つまり、ウルグアイにフリーキックを与えないということなのですが、そこは「基本的なチカラの差」がありますから、逆にウルグアイの方は「身体で止める」ケースが多くなります(ブラジルは個人で突破するチカラがありますからネ・・)。ブラジルは、そこのところを良く理解していたから、流れの中でほとんどチャンスができなくても「大丈夫! 絶対にいつかは・・」という意識が浸透していたように感じるのです。

 次が、リスタートからは「ニア」と「ファー」を、うまく使い分ける・・、ただし、最初のチャンスや決定的なケースでは、(フリーキックが蹴られるポイントから)相手ゴールに近いスペース(ニア・スペース)を狙うという「意図」が、チーム全体に確実に浸透していた・・ということです。

 その「ニア・スペース」に、確実に一人が「後方から」入り込み、その選手のアタマに確実に合わせるのです。その状態で相手ゴール前に「流され」たボールは、(そのボールが「意外性のカタマリ」であることで)守備にとっては守りにくい、逆に攻撃にとっては可能性が高くなるということです。

 このケースでは直接ゴールに入ってしまいましたが、ゴール中央、遠いサイドには、ロナウド、アモローゾが「確実」に詰めていました。

 その数分後のリバウドのゴールですが、これからは、「決定的なラストパス」のタイミングは、一瞬しかない!! だから自分がパスを受ける「前の段階」で、確実に「次のプレー」のオプションを少なくとも「一つ」は確実にイメージしておく!! というブラジルの「攻撃のコンセプト」を、強く感じさせられました(それは才能というよりは、チーム内の『イメージ・シンクロ』レベルの高さといった方が妥当!!)。

 さてゴールシーンです。

 左サイドで、エメルソンとロベルト・カルロスが、パスとドリブルで、プレスをかけようとする相手を翻弄し、最後は、エメルソンからロベルト・カルロスにパスが回されます。

 それが「勝負の瞬間」でした。ロベルト・カルロスは、ボールが動いているときから、ウルグアイゴール前の状況を「イメージ」していたに違いないと思うのです。ボールを受けた後のロベルト・カルロスの「ピンポイント・センタリング(これは、サイドからのラストパスといった方が正しい表現かも・・)」を出したタイミングの早かったこと・・。

 それも、ゴール中央でポジションをとるウルグアイ・ディフェンダーの「鼻先」へ、そのラストパスを出したのですからネ。ロベルト・カルロスは、その「鼻先の前のスペース」へ、リバウドが、「後ろ」からスッと入り込んでくるというイメージをもっていたのです。

 もちろん中央のリバウドも、そのイメージで「ちょっと」動いたに違いありません。これこそ、世界トップレベルの「イメージ・シンクロ」コンビネーションプレーだったのです。

 その後のリバウドの、相手を置き去りにしてしまう「一発トラップ」、そして素晴らしい浮き球のシュートは彼の「才能」ですからコメントはありませんが、それにしてもブラジルの「(チームプレーの)イメージ・シンクロ・レベル」は素晴らしい。

 そのことは、グラウンド全体のいたるところで感じることができます。

 ブラジルの攻撃では、「ボールホルダー」、「最初のパスの受け手」、そして「決定的な仕事をする三人目、四人目のパスの受け手」、彼らのイメージが、常に高い次元で「シンクロ」していると感じるのです。

 一人がボールを持つ(ボールホルダー)。その前に、最初にパスを受ける選手がいる。ただ、「最初のパス」が出される瞬間には、確実に「三人目」の選手が、(最初のパスの受け手の前や後ろのポジションで)次のスペースへの「動き出し(フリーランニング)」をしているのです。

 そしてそこに、本当の高い確率で、そして「ここしかない!」という早いタイミングでボールが回されます。ダイレクトで・・。はたまた「素早いワントラップ」から・・。

 後半早々のロナウドのゴール。これまた、味方のクリアボールを拾ったリバウドの、「その後をイメージした」ボールコントロールと、その「リバウドの意図」を感じ、前のスペースへ爆発ダッシュを仕掛けたロナウドの、世界の「イメージ・シンクロ」によって生まれました。

 ルシェンブルゴ監督の優れた手腕を感じます。

 そんな高い次元の「イメージ・シンクロ・サッカー」に対し、ウルグアイの「ボールの動き」のカッタルいこと・・。ボールホルダーからのパスのタイミングが遅いから「有効な展開のチャンス」を逃し続けてしまう・・、無駄なドリブルも多い(ブラジルのクレバーな守備に、持たせられていた?!)・・、これでは・・

 それでも、二点目のゴールが入るまでのウルグアイの「チーム一丸となった守備」は感動モノでした。たしかにファールは多かったのですが、それでも、一瞬でも「気を抜く」ことなく、本当にチーム全体が「一つのユニット」になり、有機的にリンクしていました。そう・・、相手からボールを奪い返すという「守備の目的の達成」をターゲットにして・・

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 帰国したばかりで、まだ「タイム・ラグ」に悩まされている湯浅でしたが、それでも試合が始まったらトップフィット。ブラジルの、「個人的なチカラ」以外の、攻守にわたる「チームとしての強さの秘密」に目が冴えてしまって・・。

 次は、明日の「ナビスコカップ準々決勝」をレポートしましょうかね。チョット寝ようかな・・では・・




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