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実力の差がそのまま結果に表れた・・カザフスタンvs日本代表(0-2)・・(1999年10月9日)

日本代表の先発で目立ったのは、稲本、遠藤のボランチコンビを含む「守備ブロック」が、先日の韓日戦のメンバーと変わらなかったということです。このブロックに対するトルシエ監督の信頼を感じます。

 さてゲーム・・

 ホームゲームなのに守備的な戦術で戦うカザフスタン(当然、狙いはカウンター!!)。カザフの監督は、しっかりと日本チームを観察していたようで、基本的な「実力の差」を十分に理解しているようです。総合的なチカラが違う場合、「仕掛け方」を考えなければ確実に守りに破綻をきたしてしまいますからネ。

 対する日本チームも「注意深い」立ち上がりです。最悪のグラウンドコンディションを考え、中田も含め、中盤でのドリブルや(タメ狙いの)無理なキープは極力避け、とにかくしっかりと止め、しっかりとパスを回しながら(しっかりとボールを動かしながら)、ココゾ! の勝負所を慎重に待つ・・ということに神経を集中しているようです。

 グラウンドが悪いため、日本のボールの動き(ステーション数、速さ、広さなど)は、通常の半分程度といったところ。素早いボールの動きで相手守備を攪乱する・・というところまではいきません。ボールの動きが鈍いことで、どうしても中盤で相手のチェックに引っかかり、相手ゴールまで「効果的」に迫ることができないのです。

 相手守備ブロックが、中央を固めている(スイーパーを入れた確実な最終ライン?!)、日本代表も、後方からの押し上げに「まだ」注意深い・・といったところ。

 前半20分を過ぎたあたりですが、一度カザフが「人数をかけて」攻め込んできた状況がありました。そこでボールを奪い返した日本代表が、最前線へ一発ロングパスを送り込んだのですが、それが高原のチャンスにつながってしまいます。

 そのロングパスが、相手最終守備ラインとGKとの間に飛んだことで、カザフのディフェンダーとGKとのコンビが(理解が)一致せず、その一瞬のスキを高原が突いたのです。相手に「少し来させて」、ロング一発のカウンター・・というのも一つの策だな・・なんて感じていました。

 ただそんなことを思っていた矢先の前半25分、「世界の中田」が爆発してしまいました。相手陣に少し入ったところでボールを持った中田が、「ほんの少し」前方へドリブルし、そのままロングシュート!! 蹴られたボールは、見事にカザフゴールの左隅へ・・。先制ゴ〜〜ル!!

 ちょっと「遠慮がち」に中田を祝福するチームメートたち・・。そんな彼らの微妙な態度にも、中田に対する「畏敬の念」がにじみ出ていました。

 中田は、「このグラウンド状態や、中央を固めるカザフ守備では、相手最終守備ラインのウラを突くようなパスを通すのは難しい・・。相手を最終守備ラインからおびき出すことも含めて、とにかくイッパツ、ロングシュートだ・・」ってなことを狙っていたに違いありません。このゴールの直前にも、こぼれ球を25メートルくらいのところから、ドカン!と狙っていましたからね。

 中田のスーパーゴールで、カザフは攻めて行かざるを得ない状況に追い込まれました。よしよし、やっとカザフが、守備ブロックを「開けなければ」ならない状況になってきた・・

 ・・ってなことを思っていたのですが、うまく日本のカウンターが決まりません。(両チームともに)トラップミス、コントロールミスを繰り返してしまうことで、組織的なグループ攻撃を展開することもままならず・・といった具合なんです。

 (グラウンド状態を考えたら・・)この試合は、まず守備を固め、それをベースに「注意深く攻め上がる(リスクチャレンジも抑え気味に・・)」という性格にならざるを得ない・・ということなんでしょうね。韓日戦で、効果的、決定的な押し上げを何度も魅せた日本代表のダブルボランチ、稲本、遠藤も、ほとんど相手ゴール前に顔を見せることはありません。

 だからこそ、ロングシュートを「より」積極的に狙うことにした、中田の「判断の良さ」が目立つのです。

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 さて後半、カザフが、前半最後の時間帯で見せたように、かなり前へ重心をかけてきます。要は、攻めに人数をかけ始めたということなのですが、その勢いを「落ち着いて」受け止め、しっかりと組み立てる若き日本代表。彼らの、自信溢れるプレーは、ホント、頼もしい限りです。

 これで、ちょっと「攻め合い」の雰囲気が出てきたわけですが、相手が前に重心を掛け、守備でもかなり前からチェックし始めていることで、逆に、日本代表の「本来の展開力」が発揮されてきます。

 「待ち」で守られた場合、(グラウンドがデコボコということで)無理して仕掛けていくにはリスクが大きすぎるから、どうしても「静的」に攻めざるを得なくなってしまいます。ただ逆に相手が「前へ」勝負に出てきた場合、素早いパス交換で(前に重心がかかっている)相手守備ブロックを「すり抜けて」いける可能性が大きくなるというわけです。

 最初は「人数をかけ」、スイーパー的な選手を置く(?!)従来型だったカザフの最終守備ラインも、かなり「ライン気味」になってきます。こうなれば日本の「ウラ狙いスルーパス」が生きる!!

 その後カザフは、攻撃選手を交代出場させるなど、最終勝負に出てきたわけですが、その中心になったのは、一次予選で五ゴールも入れたカザフの核弾頭、ガリッチ。主に右サイドを攻め上がってきます。それでもセンタリングの精度が・・。また、センタリングを上げられる状況で、日本ゴール前で「反応」する選手もいません。確かにカザフは、ロングシュートへのトライなど、シュートを打つという意識は高いのですが、いかんせん「シュートの精度」が・・

 対する日本代表は、守備の薄い部分を突くという攻撃の原則通りにボールを動かし、高原が、小島から中田が、中田自身がドリブルで、はたまたこぼれ球を最後は稲本がフリーシュート・・などなど、本当に何本も「決定的なシーン」を演出してしまいます。

 カザフの押し上げは、前後の(人数的、ポジショニング的)バランスが崩れてしまうという稚拙なもの。だから、相手のウラスペースを突く(守備の薄い部分を突く)という日本代表の攻めが、繰り返し「ツボ」にはまってしまうのです。

 最後は、コーナーキックから稲本が決めて万事休す。

 これで、もしグラウンドが良かったら・・。予想されたことですが、総合的な「実力の差」が如実に結果に表れた・・といったゲームではありました。




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