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ナビスコカップ決勝・・感激のエキサイティングゲームは、PKでレイソルが制す・・レイソルvsアントラーズ(2−2)・・(1999年11月3日、水曜日)

いやいや、ホント、久しぶりに(内容が伴った)スーパーエキサイティングなゲームを見せてもらいました。両チームともに何らかの「タイトル」が欲しかったとはいえ、最後までまったく集中が途切れることのない緊張感あふれる試合を展開した彼らに、感謝、拍手・・です。この試合を観戦された観客の皆さんは、ホント、得した・・

 実のことをいうと、ロスタイムの(本当に、あと数秒でタイムアップというタイミングの)レイソルの起死回生同点ゴールが決まる直前、コンピューターをバックパックにしまっていたんです。「まあ、試合はこのままだな・・」ってな雰囲気だったんですが、それが・・

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 レイソルでは、守備のリーダー、ホン・ミョンボ、攻撃の核、ベンチーニョ(ケガ)が出ていません。西野監督は、「今の状態だったら、北嶋の方がいい・・」という発言を繰り返していたのですが、北嶋にとってそれは、本当に大きなモティベーションになったことでしょう(当然西野氏もそのことを意図しているに違いない・・)。

 それにしても、ホン・ミョンボが出場停止なのは痛い・・

 対するアントラーズでは、守備の重鎮、秋田が出場停止、またマジーニョもいません。まあ総体的には「ハンデはイーブン」といったところでしょうか(でも、ホン・ミョンボの欠場のハンデを考えると、ちょっとレイソルに不利かも・・)

 試合は、開始早々の五分に大野が挙げた、レイソル先制ゴールの後、一進一退を繰り返す「互角」の展開になります。それでも、「忠実、堅実」を絵に描いたようなレイソルの最終守備ラインと中盤の守備によって、レイソルが徐々に試合のベースを握りはじめます。

 レイソルの守備は、かなり「マン・オリエンテッド」。まず「人」を見る。まず、中盤でフリーになっている相手を確実にマークする・・という「シンプルな発想」のディフェンスを、それこそ「忠実・堅実」にこなします。

 それは、クリエイティブなニオイはあまり感じない「単純」な守備戦術だともいえるのですが、それでも、この試合のレイソルくらい「徹底」していたら・・。ここ数試合、レイソルの試合を追いかけているのですが、そこでの結論が、彼らのチーム戦術のキーワードは、「徹底的」・・に尽きるというものです。

 「我々は、たしかにリスタート(フリーキック、コーナーキックなど)からの失点はあるが、試合の流れの中では、相手にシュートチャンスを作らせないだけの自信があった・・」

 試合後の西野監督のコメントなのですが、それが、レイソルの「戦術的コンセプト」を如実に物語っています。「シンプル戦術だが、それを徹底すれば、必ず結果がついてくる・・」、それです。

 「中盤、最終守備ラインでは、一人もサボることなく、徹底してフリーマンをマークする(常に自分から、パスの来そうなフリーマンを探す!)。そしてボールを奪い返したら、なるべく時間をかけずに(カウンター狙いとは基本的な発想が違いますがネ・・)、サイドを経由して相手ゴールに迫る・・」。そんな、レイソルの戦術コンセプトが見えてきます。

 そのコンセプト通り、この試合でも、ダブルボランチの下平、バデアは、ほとんど最前線の決定的場面に絡んでくることはなく、後方での守備バックアップに徹しています。そのかわりに、両サイドの酒井、平山が積極的にオーバーラップを仕掛けていくのです。特にこの試合では、右サイドの酒井の活躍が輝きを放っていました。

 対するアントラーズも、基本的には「マン・オリエンテッド」守備システムなのですが、この試合では、「マークの受け渡し」が鈍く、相手を「タイト」にマークするタイミングも遅れています(マークのズレ・・なんて表現しますよネ・・)。レイソルの「ボールの動き」が俊敏だったこともあるのですが、基本的には「前気味のリベロ」である本田を支援すべき、熊谷、阿部、ビスマルクの守備参加が、前半はうまく機能していなかったと感じていました。

 ただそこはアントラーズ。徐々に、リズムを悪化させていたポイントを「自分たち自身で」修正し、やっと前半30分を過ぎたあたりからペースを盛り返すようになっていきます。

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 さて後半。前半最後の時間帯でやっと自分たちのペースを取り戻したアントラーズが盛り返し、試合は、「膠着状態」などとは別物の「動的(ダイナミック)な均衡状態」というエキサイティングな展開になります。

 両チームともに、交互にチャンスを作り出すのです。エキサイティングなことこの上ない展開ではあります。一点を追いかけるアントラーズが押し込み、逆に「虎の子」を守り切ろうとするレイソルが守備的に・・、そんな展開を予想していたのですがネ・・

 ただアントラーズの攻めからは、以前のような「危険なニオイ」を感じません。

 マジーニョ、長谷川、ビスマルク、柳沢などが、それこそ「縦横無尽」にポジションチェンジし、そこに、二列目、三列目の選手たちがどんどんと絡んでくる・・そんな、以前のダイナミックな展開は面影もなく、出てくるのは、(確かにある程度はチャンスを作り出せるとはいえ・・)、ビスマルクを「起点」に、柳沢、鈴木のツートップが最前線でパスを待ち受ける・・というもの。これでは「驚き」なんてありません。確実・堅実なプレーを続けるレイソル守備陣に、アントラーズの攻めが簡単に跳ね返されしまうのも道理・・といったところではあります。

 ただ一瞬のスキを突き、阿部から柳沢へのタテパスから、柳沢が抜け出てセンタリングを送り込み、逆サイドで待ち受けていたビスマルクが冷静に決めるというアントラーズの同点ゴールが飛び出します。

 そしてその数分後には、阿部のスーパーFK。勝ち越しゴ〜〜ル!!

 それまで、「総体的」には試合の「流れ」を握っていたレイソルが、奈落の底に落ち込んだ瞬間でした。

 その後のアントラーズの試合運びは「サスガ」。確実な守備から(阿部、小笠原まで、基本ポジションを下がり気味にしている)、焦らず、落ち着いてボールを動かし(決して無理をしない)、チャンスを見計らった攻撃の押し上げを見せる。そんなふうにアントラーズは、急ごうとするレイソルの試合ペースを乱し続けます。サスガに名門。サスガにジーコの采配(心理マネージメント)・・。勝ち方を知っているアントラーズなのです。

 それでも、残り時間3分というところで、(何度も明らかなファール受けたにもかかわらず、かなりの頻度でレフェリーが流してしまい)フラストレーションのたまっていたビスマルクが、ファールで中断したときにボールを蹴り出してしまい、この試合での二枚目のイエローを受けてしまったのです。そして「退場」。

 もちろんその後レイソルは、全てを賭けて攻め込んできます。それでもアントラーズの「落ち着き」は変わらず・・。まあこれで終わったな・・と、コンピューターを仕舞いかけた瞬間(タイムアップまで残り数秒)、レイソルの同点ゴールが生まれます。そして、エキサイティングな延長戦とPK戦。

 そして、まれに見る好ゲームが、レイソルの優勝で幕を閉じました。




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