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オリンピック予選・・日本代表vsフィリピン代表(13-0)(1999年6月12日)

この試合のテーマは、「厚く守ってカウンターを狙う」という戦術の相手と対戦したときに、どのように相手の守備を崩してゴールを奪うか・・というものでした。

 相手に厚く守られた場合、いくらチカラの差があってもそれを切り崩していくのは難しいものなのですが、それでも立ち上がりに二点を奪った日本代表。

 厚く守られても(多くの人数をかける守備的サッカーでも)、相手守備を崩して点を奪えるようになった若き日本代表の選手たちに、ホンモノの「高いプロ意識」を感じ、頼もしく思ったものです。

 この最初の平瀬の二点ですが、それは、相手にボールを奪われ、彼らが「少し押し上げ」ようとする状況で再びボールを奪い返し、そこから本当に「素早く(ダイレクトなどをミックスした二〜三本のパス・センタリング、決定的なフリーランニングと超速のドリブル勝負)」相手ゴールに迫ったことで生まれました。

 これなのです。厚く守る相手からゴールを奪うコツは。ゲームを支配し、攻撃をビルドアップする(組み立てる)ような展開のとき(つまり相手守備の組織がしっかりしているとき)は、そう簡単には相手の守備ブロックを崩して、彼らのウラを突くことはできません。ですから逆に、相手にボールを奪われた状況の方がチャンスにつながるのです。面白いですよね。そして、攻めようと、相手の「重心(意識)」が少し上がり気味になったときにボールを奪い返した瞬間にチャンスが訪れるというわけです。

 そこいら辺りにも、トルシエ監督の「優れた意識付け能力」を感じます。現代サッカーでは、相手からボールを奪い返してから「二〜三本以内のパス」で決まるゴールが、全体の六割〜七割を超えているのですからね(もちろんそれらのゴールが生まれた「状況」についてはもっと詳細に分析・定義する必要があるとは思いますが・・)。

 この二点目が入ってから(15分を過ぎたあたりから)、急にフィリピンの守備における集中が途切れてしまったように感じます(少しフィリピンが立ち直った後半もまったく同じ展開)。ロングボール、早めのセンタリングなどの場面で、日本代表の最前線の選手、はたまた小野や中村などの二列目から飛び出していく選手に対するマークが、極端に甘くなったのです。そして日本代表の大量得点・・・

 日本がボールをキープする中盤でのフィリピンのチェックがあまりにも甘いことで、日本代表の最前線、中盤選手たちが、「確信をもって」決定的なフリーランニング(パスを受けるための、ボールがないところでの動きのことですヨ)を次々と仕掛け、そこへ正確なスルーパスがどんどんと通されます。それは気持ちいいことでしょう、楽しいことでしょう。

 この試合では、前後半ともに最初の「10分間」が勝負の分かれ目だったということでしょうか。

 それでも、(特に、フィリピン守備が集中力を切らしていない時間帯で)相手が固めている「中央」へ攻め込む傾向が強すぎる、プレーの「ペースを変える」ことがままならない(いつも同じ速いペース!)など、課題も見え隠れします。

 相手が中央に固まっているのですから、より頻繁に外から仕掛けていくことで相手守備をサイドへ分散させれば、もっと効果的な攻めを展開できたでしょうし、たまに魅せる「中央突破」も、もっと効果的になったに違いありません。

 また「ペースチェンジ」ですが、要は、相手の守備が下がり、中央を固めている状況で、無理にそこをこじ開けようとするのではなく、後方でボールを回し、相手の最終守備ラインが上がった「ウラ」をロングパスで突いたり、中盤で「歩くようなドリブル(意図をもったタメ)」などで相手守備を挑発するようにおびき寄せ(ちょっと守備ラインを上げさせ)、そのウラを突くなどの、高度な「騙しプレー」をもっと見たかったということです(これだけチカラの差があるので、ワガママを言う湯浅でした・・)。

 そんな課題が「少しは」見えましたが、それでもこの試合が、これからの「肉を切らせて骨を断つ」ホンモノの勝負に臨む若き日本オリンピック代表にとって、(たしかに基本的には攻撃だけでしたが・・)チームの中での「プレーイメージのシンクロ(一致)レベル」を高めるという意味で、良いトレーニングになったことだけはたしかでした。




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