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オリンピック予選・・日本代表vsホンコン代表(4-1)(1999年6月18日)

大きくチカラの差がある相手。完璧に日本代表がゲームを支配し続けます。ギリギリの互角勝負での(心理的・物理的)闘いという意味では、あまり見るべきものはなかったのですが、これからの日本ラウンド、最終予選を考えれば、「攻撃イメージのシンクロレベル」を高めるための試合だということでチーム内の意識を統一しておくことには意義があったということでしょう。

 とはいっても、これほど相手のマークがいい加減だと、あまり攻撃のトレーニングにもならなかったりして・・。ホンコンの選手たちは、たしかにボール(を持つ選手)にはチェックにいきますが、ボールがないところでフリーランニングをする日本選手たちを、本当に簡単にフリーにしてしまうのです。

 日本のボールの動きは(グラウンドがデコボコだとはいえ)軽快そのもの。そして、かなりの頻度でシュートチャンスを作り出します。ただ、何度も繰り返すシュートミス。柳沢が・・、吉原が・・。そのうちの何本かは、「ツイてなかった」では済まない「必然的」なシュートミス(シュートへのアプローチミス)でした。反省し、原点に戻って(イメージトレーニングも含め)しっかりと練習して欲しいものです。

 日本代表の攻撃では、中央突破とサイド攻撃という「崩し位置」のバランスはいいのですが、とにかく「決定的なシュートチャンス」を作り出すことに執心し過ぎ。美しいスルーパスや、一発で相手守備ラインのウラを突く中距離パスなどにこだわり過ぎなのです。

 相手は、ゴール前に集中しているのですから、そこをこじ開けようとするだけではなく、そんなホンコン守備の意図の裏をかくような「ロングシュート」などの意表を突く攻撃をうまくバランスさせるべきでした。あまりにもゲームを支配しすぎた日本代表は、「攻撃の変化」という、効果的な攻撃の「原則」を忘れてしまったようです。

 そんな、変化を演出すること(攻撃オプションの多様化)も攻撃の「イメージシンクロ」の重要なテーマなのです。

 ガガッと、柳沢と吉原が前へ突っかける。その瞬間に空く相手ペナルティーエリア際のスペースを使ってロングシュート!! また両者が、サッと下がってボールを受け、相手最終守備ラインが上がって出来たウラスペースを、二列目、三列目の選手が、トップを「追い越して」活用する・・。そんなふうに、できる限り広範囲の攻撃オプションに対するイメージを、チーム内でしっかりとシェアする。それが、「肉を切らせて・・」の闘いでは重要な意味をもってくるのです。

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 この試合でもう一つ注目していたのは、中村と小野が、ともに中盤の同じ「高さで(中央で)」一緒にプレーしたことです(トルシエ監督が、この二人を同時に中盤では使わないと言ったとか・・)。私の目には、かなりうまく機能していたように見えたのですが、それもテレビ観戦ですからネ。日本ラウンドで再びこの二人が一緒にプレーするケースがあれば、(一人がマンマークされたらもう一人が・・、また一人の調子が悪ければもう一人が・・など)今度はしっかりと「攻守にわたる機能レベル」を検証したいと思います。

 ハナシは変わりますが、ジェフ市原のエンゲルス監督の退任が決まったと報道されました。理由は、(かいつまんで言えば)チーム内の雰囲気に厳しさが足りず、選手の「危機意識」を十分に高揚させられていない?! 事実関係はよく分かりませんし、コーチのパーソナリティーによって様々なやり方がありますから、ゲルト・エンゲルス監督のコーチングについてはこれ以上深く入ろうとは思いませんが、そこで話題になった「緊張感」についてチョット触れたいと思います。

 それは、低いレベルの相手であるにもかかわらず、この試合での日本選手たちの「緊張感」、「危機意識」がものすごく高いと感じたからです。それは、彼らの守備への入り方を見ればすぐに分かります。また、ボールがないところでの「動き」にも、彼らの気合いを感じます。

 それもこれも、トルシエ監督の「闘う意識を高揚させるチームマネージメント」の成果だとするのが妥当な評価でしょう。

 トルシエ監督が、(中村、小野、稲本の途中交代や厳しい批評など)「人間心理のダークサイド(瞬間的な憤り、怒り、憎しみなど)」を激しく揺り動かすような「刺激」までをも駆使し、選手たちの「心理・精神的なダイナミズム」の更なる活性化にチャレンジしていると思うのです。

それは、一つ間違えばチーム崩壊につながってしまうようなリスクではあります(もちろん相応のアフターケアーはしているハズですが・・)。ただそれがなければ、国際的な大会へ向けた「肉を切らせて骨を断つ」という極限の勝負に勝ち残れないことも事実です。

 本番のオリンピック予選へ向けて、着々と、物理的、心理・精神的な準備が進行していると感じます。




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