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オリンピック予選(日本ラウンド)・・日本代表vsネパール代表(9-0)(1999年6月26日)

まず、日本ラウンドが始まる前のトーナメントの状況から・・

 ご存じのとおり、ネパールのファンがグラウンド上に飛び込んできたことで没収試合になってしまった(ホンコンラウンドでの)ネパール対マレーシアは、FIFAの裁定で、中断された88分までの「1−1」で試合成立ということになりました。

 結果、ホンコンラウンドが終了した時点でのランキングでは、「若い(七人が15歳〜16歳)」ネパールが二位につけています。実力では確実にマレーシアの方が上。それでも、ドイツ人監督、シュピットラー氏の指導によって、「勝つこと(勝ち点を挙げること)」にこだわるサッカーを展開したネパール。「勝負強いドイツサッカーの心理的なエッセンス」をたたき込まれているんだろうなって思っていたんですがネ・・。

 日本代表チームでもっとも注目していたポイントは、中村と小野が「同じ高さの中盤」でプレーすること、また彼らと、柳沢と吉原のツートップ、はたまた両サイドの本山と酒井との絡みで、どのくらい「シュートチャンスを作り出す」ことができるかということでした(ボランチの遠藤は基本的に残る)。そして・・。このことについてのコメントは(この時点では深く突っ込むことはないということで)必要ないですよネ・・

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 ネパールは、本気に勝ちにきました。立ち上がりの中盤でのダイナミズムが、そのことを如実に表しています。それでも、そんな彼らの「気合い」は完全に空回り。たしかに中盤で動き回ってプレスをかけようとはするのですが、肝心な「勝負の瞬間でのマーク」の甘いこと。また攻撃にうつったときの「ボールの動き」も停滞気味。これでは・・

 それには、国立競技場の「グラウンドの良さ」も大きく影響していたように感じます。日本が、ネパールの「ダイナミックではあるが肝心な瞬間には甘い中盤プレス」を、数本の(ダイレクトを織り交ぜた)素早いパスで、簡単にハズしてしまうのです。これは、グラウンドが悪かったホンコンでは見られなかったことです。

 この試合は、「実力差がありながら仕掛けすぎて自ら墓穴を掘った」典型的なゲームでした。ネパールは、しっかりと守ってカウンターという、より確実なサッカー(ゲーム戦術)でこの試合に臨むべきでした。

 日本代表にとっては、もう「楽しくて仕方ない」といった試合内容。自分たちの「仕掛けプレー」がすべてツボにはまってしまうんですからネ。

 フリーランニングすれば確実にパスが出されるだけではなく、その「一人が抜け出したチャンス」に、周りの味方も確実に反応しているんですからネ。ボールを持った選手の「攻撃のオプション」の多いこと。そして自分たちがイメージするもっとも美しい攻撃を、それこそ繰り返し仕掛け続けることができるんですから・・。羨ましい限りではあります。

 それでも、これで世界とも対等に・・なんて考えないで欲しいですね(もちろんそんなことを思っている選手は皆無でしょうが・・)。どんな世界の一流でも、運動量が落ち、戦術的なコンセプトがバラバラになったら、それこそ「三流のサッカー」しかできないことは世界の常識ですし、ネパールは、基本的な実力で、日本代表よりもかなり劣るんですからネ。

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 この試合の日本代表は、実にノビノビとプレーしました。トルシエ監督が演出する「ギリギリの緊張感」から解放され(?!)、限りなく自由に、そして自主的に、アクティブサッカーを展開したということなんですかネ・・

 「緊張と自由(リラックス)」・・。そんな「背反する心理環境をうまくバランスさせること」が(その振幅は大きければ大きいほど良い!!)、強いチームの「心理的ベース」なのですが、トルシエ監督が南米にいっていることで、(どちらかといえば)「自由(・・な方向へベクトルが振れた)」な雰囲気が、日本オリンピック代表選手たちのプレー姿勢に「かなりポジティブ」に作用したようです。

 もちろん、チームの雰囲気が継続的に「自由」に振られ続けていたら、すぐに緊張感が失われていきます。それも、修復できないくらいに・・。

 後半、たしかにネパールの守備が安定してきたこともあったのですが、それ以上に日本代表の「ボールがないところでの動き」にダイナミズムと鋭さが欠けてきたことで、前半には面白いように完璧に相手守備ラインを崩していたのが、逆に「危険なニオイ」がとんと失われていきます。

 これって、「自由な(リラックスした)雰囲気」に振られ過ぎ?! それは分かりませんが、日本選手たちの動きに鋭さとダイナミズムが欠けてきたことだけは確かなことです。まあこれだけリードしているんだから?!・・イヤイヤ、次の(最終予選ラウンドの)強敵に対する際に重要になる「イメージ・シンクロ・レベル」を、こんな理想的な機会をつかって極限まで高めておかなければ・・

 さて次は、最強の相手マレーシア。ここで、今のオリンピック日本代表の本当の実力(状態)が試されるに違いありません。(いまの?!)「緊張と自由(リラックス)」が互いに高次元でバランスした雰囲気を維持し、「自主的(能動的)に楽しむようなアクティブ・サッカー」を展開して欲しいモノです。




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