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オリンピック予選(日本ラウンド)・・日本代表vsマレーシア代表(4-0)(1999年6月28日)

まず柳沢について・・

 私は、「規律厳守(緊張)と限りなく自由(リラックス)」というある意味では背反する「心理環境」を確立する・・もっといえば、瞬間的にその二つの心理(精神)状態を「激しく行き来させながら」うまくバランスをとる(その振幅が大きければ大きいほど効果絶大!)・・そのことが、強いチームに成長するための「心理・精神的ベース」を醸成するという表現をよく使います。

 ただ原則(スタートライン)は、あくまでも「規律厳守」(規律の内容そのものの是非は別として・・)。それを破った柳沢には、チームの(社会的、心理・精神的、戦術的などの)コンセプトを守るという意味も含めて、相応の罰を与えるのが当然。サッカーネーションでもこんなことは日常茶飯事ですが、それに対する罰は、「組織を守る」という意味も含め、(もちろんケースバイケースですが・・)厳格を極めるのです。そして次に注目されるのは、これからの柳沢の言動ということになります。

 まあ、(自分勝手な言動などの)失敗と懲罰は、選手が心理・精神的に成長するキッカケ(チームの目的や自分の立場の再認識機会?!)になるものですし、柳沢には、これを自分自身の成長のための良い機会と捉え「前向きに反省」してもらいたいものです。

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 さて試合・・

 立ち上がりの日本代表の出来はもう散々。中盤での「ボールがないところでの動き」が消極的なことで、ボールの動きも停滞気味。もちろんそれには(休養十分の)マレーシアの中盤守備がレベルを超えてダイナミックだったこともあるのですが、それにしても・・。試合は完全に膠着状態(というか、マレーシアの勢いにタジタジといった状態)です。

 こんな時間帯にこそ、相手の勢いを「受け止める」のではなく、それを完璧に凌駕してしまうくらいのエネルギーを相手に感じさせ、逆に相手の心理を「受け身」にしてしまうようなダイナミックプレーを展開しなければならないのに・・

 特に、世界大会へ向けた「地域一次予選」では、相手の勢いを受け止め「様子を見る」なんていう態度は退歩そのもの(もちろん最初の時間帯の日本代表は、押し込まれた・・っていう表現が適当ですけれどネ・・)。最終予選へ向け、どのようなサッカーをやるのかというチーム内の「イメージ・シンクロ(統一)」を極限にまで高めるために、とにかく「前へ!(積極的な仕掛け!)」という姿勢を『最初から』前面に押し出さなければならないのです。

 そんな停滞した雰囲気を打破したのが、右サイドで「ココゾ!」の単独ドリブル勝負にトライし、PKを勝ち取った中村でした。その先制ゴール以降、やっと日本代表のプレーに活気が戻ってきます。

 チームの活気・・それは、「オレがやったる!」という選手たちの「自主的・積極的」な姿勢が(チーム全体として)相乗効果を発揮している状態のこと。そんな「積極的な態度(仕掛け)」がないサッカーなんて・・

 そんな「活気」がもどってきた日本代表のプレーを象徴していたのが、本山のスーパーなドリブル突破からの三点目だったというわけです。

 後半の日本代表は、前半最後の時間帯の「心理・精神的な好調さ」を維持し、最初から最後まで仕掛け続けました。たしかに要領の悪い拙攻が続いたこともあって(同時に、相手の守備での集中が途切れなかったこともあって)ゴールを奪うことはできませんでしたが、それでも、攻守にわたって仕掛け続けるという積極的なリスクチャレンジ姿勢を維持したこと(そして何度か、前半にはなかった決定的なカタチを作り出したこと)は高く評価できます。

 パッシブ(受け身=消極的)に相手のサッカーに合わせるプレーでは、「結果」が伴ったとしても、(特に若い世代における)成長という視点では、かなりの(戦術的、心理・精神的な)問題を残すことになってしまいます。

 この年代のサッカーでもっとも大事なこと。それは、「勝負を意識した仕掛けを継続する(リスクにチャレンジし続ける)姿勢」なのです。

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 小野と中村の「ダブル・チャンメーカー」ですが、ある程度はうまく機能してきているとすることができそうです。この二人の間には、「互いにレスペクトできる(互いに敬意を払う)緊張感(これがディベートのベース!)」があると感じるのです。互いに、パス出しだけではなく、「受け役」も交互に務めるなど、かなり高い「プレーイメージ・シンクロ・レベル」を感じます。

 ただし私は、(確かに徐々に良くなっているとはいえ)小野の、中盤での「積極的にプレーに絡んでいく姿勢」にはまだまだ不満です。彼ほどの才能の持ち主なんですから、決定的なパスだけを狙ったり、確実に勝負パスが来るという状況での「決定的なフリーランニング」だけではなく(四点目の山下へのパスなど、確かに彼の効果的プレーには才能を感じさせる美しさはありますが・・)、どうしてもっと「組み立てプレー」に絡んだり積極的に単独勝負ドリブルを仕掛けたりしないのでしょう・・。不満です。

 そんな小野のパッシブプレーを象徴するのが、「組み立て段階でのパス&ムーブ」の少なさ。タテにパスを出し、そのまま全力ダッシュでリターンパスを受け(ワンツー!)、再び次に展開・・そして、最終的な勝負シーンにも積極的に絡んでいく・・今の彼には、そんな「組み立て段階にも積極的に絡むダイナミズム」が最も必要だと感じるのです。

 彼には、意識を高く保ち(高い集中レベルを維持し=考え続ける姿勢の維持!)、もっと積極的にボールに絡んで欲しい、もっといえば、『決定的な場面だけに絡もうとする』のではなく、もっと『クリエイティブなムダ・プレーにも積極的に絡むべき』だと思うのです。

 ちょっと意味不明(気味)ですが・・ガンバレ、小野伸二!!

 小野だけに注目しましたが、リーダーシップにあふれた宮本が統率する(リスクチャレンジの中でも)安定した最終守備ライン(中澤のハードパフオーマンスは特にインプレッシブ!)、「目立たない功労者」、ボランチの遠藤(明神や石井もいまっセ)、超攻撃的ウイングバック、本山、酒井(広山、市川?!)、パフォーマンスをかなり上げてきた「チームプレーに徹するチャンスメーカー」、中村、そしてかなり充実してきたトップ(ここでは名前を挙げることは控えましょうかネ・・)。

 頼もしい限りじゃありませんか・・

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 これで日本代表が最終予選に駒を進めました。

 最終予選、そこは「肉を切らせて骨を断つ」というホンモノの闘いの場。「世界を目指す若き才能たち」には、そこを、かけがえのない「チャレンジの場」として捉え、「自らを信ずること」で、これまで自分がイメージしていた限界を超えた「戦う姿勢」を追求し続けて欲しいモノです。




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