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堪能しました「頂点マッチ」・・マンチェスターユナイテッドvsパルメイラス(1−0)・・(1999年11月30日、火曜日・・深夜)

久しぶりの「世界トップレベルサッカー」。堪能しました。

 基本的な特徴からすれば、マンチェスターが「組織的」にチャンスを作り出すことで、チーム内の「イメージ(チーム戦術)」が統一されているのに対し、パルメイラスは、どちらかといえば「個人勝負」中心の攻め。久しぶりに、「コンチネンタルサッカー」と「南米サッカー」の対決という構図のサッカーを見た思いがしたものでした。

 マンチェスターでは、組織プレーの中に、ギグスという「単独突破アクセント」が非常にうまくミックスしています。彼がボールを持ち、ドリブル勝負にかかった場合、周りの選手たちのパスを受ける動き出しが、ドリブル突破の「後」というタイミングになるのです。このレベルまで、チーム内の「イメージシンクロレベル」を高めるには、本当に長い時間がかかるはず。脱帽です。

 マンチェスターの「組織プレー」の特徴としては、まず何をさしおいても「ワン・ツー・スリー・・」という、ダイレクトでのパス回しを挙げなければなりません。その小気味の良いことといったら・・

 彼らは、「パス&ムーブ」を忠実に実行するだけではなく、「アッ、あそこでボールを奪い返せる!!」というタイミングで、すかさず守備から攻撃へ切り替えた動きをスタートさせるのです。何度彼らの、「スーパー・クリエイティブ・フリーランニング」に溜め息が出たことか・・。そんな忠実なパス&ムーブやフリーランニングですが、基本的には「パッサー(ゲームメーカー)」であるベッカムや、ドリブラーであるギグスなどの「才能プレイヤー」たちも「例外」ではないところに、サー・ファーガソン監督の、戦術&心理マネージャーとしての手腕を感じます。

 日本サッカーの将来を担うべき若武者の一人、レッズの小野選手には、そんなところも見習って欲しいと思った湯浅でした・・

 対するパルメイラス。彼らの攻撃では、勝負ゾーンに入ったら、プレッシャーをかけられて仕方なくパスを出す以外は、必ずといっていいほどドリブルで仕掛けてきます。もちろん最後のシュートまで最終勝負を仕掛け続けようというのではなく、それは、まずマンチェスター守備組織を「ある程度崩す」ことを目的にした「ドリブルでの突っかけ」なのです。

 周りのチームメートも、その「突っかけ」に合わせ、最後の瞬間でパスを受けられるポジションへ猛烈なダッシュを繰り返します。その迫力満点の「仕掛け」に感動を覚えます。

 要は、最終勝負シーン一歩手前での「仕掛け」のやり方に、両チームの特徴が出ているというわけです。

 マンチェスターの場合、カウンターの状況ではなく、組み立てて攻め込む場合、ワン・ツー・スリーという素早いボールの動きを基本にするために、どうしても最前線で人数をかけなければなりません。そこにマンチェスターの弱点が垣間見えました。パルメイラスの素早いカウンター攻撃に、しばしば、(戻りが間に合わなかったり、中盤が上がりすぎで)人数が足りなくなり、中盤守備がうまく機能しなくなってしまうのです。

 マンチェスターのシステムは、最終守備組織である「ラインフォー」の前に、キーン、スコールズ、バットの三人を並べ、その前に(右よりに)ベッカム、左にギグス、そして最前線にスールシャールが張るという、彼らにしてはちょっと「変形」のシステムを採用していました。

 サー・ファーガソン監督が、試合後のインタビューで、「パルメイラスが、4-2-2-2のシステムで、ちょっと前気味の中盤を増やしているから、我々も中盤の中央を固められるフォーメーションにした・・」と述べていたのですが、それは彼らが「カウンター狙い」のゲーム戦術で試合に臨んでいたことを示します。

 ただ予想に反してパルメイラスは、パウロ・ヌネスとアスプリージャのツートップの後ろに、アレックス一人を入れ、その他のジーニョ、ガレアノ、サンパイオが、これまた中盤の中央に入り、最終守備ラインと中盤のラインが、かなり「人をタイトにマークする」ような守備戦術(マン・オリエンテッドな守備戦術)で試合に臨んできたのです。

 これも完全に「カウンター狙い」のシステム。ということで、偶然にも(というか、一発勝負では当然?!)この両チームは、ほとんど同じゲーム戦術で試合に臨んでいたということになります。

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 序盤はマンチェスターが「押し気味」に試合を展開していきます。パルメイラスにとっては、狙い通り?! 足の速いアスプリージャを中心にした「カウンター」がどんどんと出てきます。

 ただマンチェスターの中盤選手たちが、交互に最前線まで上がっていくこともあって、徐々に彼らの中盤守備に「空いてしまう」傾向が出てきます。要は、アレックスやジーニョ、ガレアノといったパルメイラスの中盤選手たちに対するマークが、過密日程や時差ボケなどからくる疲労で?! 戻りきれなかったり、集中が途切れたりで甘くなっていったのです。そして、20分過ぎからは、パルメイラスが、かなりゲームを支配しはじめます。

 22分、パウロ・ヌネスの「スルー」からボールを持ったアスプリージャが、アレックスへラストパスを通します。その場面は、まさに、またとない決定的チャンスでしたが、マンチェスターのGK、ボスニッチが「軌跡のセービング」でシュートを跳ね返します。

 「この試合では、マンチェスターのGKが良かった・・」。パルメイラスのフェリペ監督、マンチェスターの、サー・ファーガソン監督、そして最優秀選手に選ばれたギグス選手が、異口同音にインタビューで話していました。

 その後も、ゲームをコントロールし、チャンスの芽を作り出すパルメイラス。相変わらず、中盤でのマークが甘いマンチェスター。そんな展開が続いていた34分、マンチェスターが狙っていた「カウンター」が、見事に、本当に見事に決まってしまいます。

 マンチェスター左サイドのアーウィンから、同サイドをタテへ爆発フリーランニングで抜け出たギグスへ正確なタテパスが通ります。パスを受けたギグスは、例の「ターボパワー」で、カバーリングにきたジュニオール・バイアーノをブッちぎってゴール前へセンタリングを送り込みます。

 このセンタリングが上げられる瞬間の、パルメイラスゴール前の状況はこうです・・

 中央を、左右にフェイントをかけながらゴールへ突進し、最後は「ニアポスト側」を狙おうとする意図を見せていたマンチェスターのトップ、スールシャールの動きにつられ、パルメイラスのディフェンダーとゴールキーパーが、ゴールポストの「ニア側」へ寄り過ぎのポジショニングをとってしまいます。ただセンタリングは、GKのアタマを越えるような高いボール。案の定、ゴールキーパーは「バンザイ」をして、ボールを後方へ見送ってしまいます。遠いポスト側へ飛んでいくボール。そしてその先には・・

 マンチェスターのカウンター攻撃では、常に一人がニアポストへ入り、逆のファーポスト側(遠いポスト側)へ、必ず一人は中盤から走り込むことが「チームの決まり事」になっています。そして、このシーンでも、中盤の守備的な位置から、「ここがチャンス!!」と、キーンが、爆発的なダッシュでマークを振りきり、ベストタイミングで上がっていたのです。フリーシュート!! 先制ゴール!!!

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 後半は、どんどんと攻め上がるパルメイラスに対し、効果的、危険なカウンターを仕掛けるマンチェスター・・という展開が続きます。

 立ち上がり数分で、交代したマンチェスターのヨークが、きわどいシュートシーンを演出し、直後に、パルメイラスのアスプリージャが決定的シュートを放ちます。

 次に出てきた決定的チャンスは13分。パルメイラスの、信じられないような横パスミス(それも自軍ゴール前での!!)を拾ったヨークが、まったくノーマークのギグスへラストパスを送ります。そしてギグスがフリーシュート!! ただボールは無情にも、右ポストを外れていきます。

 直後には、アスプリージャと交代したばかりの、パルメイラスのオゼアスがシュート(GKの正面)。19分には、マンチェスターの完璧なカウンターチャンスを、ギリギリのタイミングでサンパイオが防ぐ。逆に23分には、パウロ・ヌネスがドリブルで抜け出てシュート。24分には、左サイドでジーニョからパスを受けたジュニオールが、マンチェスターゴール前のスペースへ(ニアポスト側)、後方から超速ダッシュで入り込んだアレックスへ、本当に「ピタリ!!」と合うセンタリングを送り込むが、アレックスのヘディングシュートが、僅かに左サイドへそれる。そして29分、CKからのこぼれ球を、オゼアスが、至近距離からシュート(マンチェスターのGKが、奇跡的に手に当ててセーブ!!)・・・。

 その後は、マンチェスターが、左サイドのギグスを中心に攻め立てますが、ゴールにいたらず、逆にパルメイラスがカウンター一発で、マンチェスターのゴール前まで迫ってしまう。フ〜〜〜

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 試合は、そのままマンチェスターが一点リードで終了し、「サウスアメリカン・ヨーロピアン・カップ」が、はじめてイングランドクラブに飾られることになりました。

 それにしても、素晴らしい「仕掛け合い」でした。

 一点を追うパルメイラスの怒濤の攻め上がり。マンチェスターの素晴らしいカウンター攻撃。見るものをトリコにしてしまいます。

 また、一点を守るマンチェスターが、受け身に守ろうとするのではなく、最後まで「攻めの姿勢」を崩さなかったことも特筆もの。そんなところにも、ファーガソン監督のパーソナリティー、サッカーに取り組む姿勢を如実に感じた湯浅です。

 攻守にわたるリスキーな「仕掛け合い」がなければ「サッカー」ではないのです。

 自分たちの攻撃の「次」に相手に攻められることを心配したり、失点しないように・・なんて思いながらプレーしたり、はたまた攻撃では、相手にボールを奪われないように「安全に、安全に」パスをつなごう・・なんて姿勢でプレーしている限り、進歩のステップを刻むことなんて出来るはずがありません。

 『リスクチャレンジのないところに進歩もない!!』。そんな「普遍的な概念」を再認識させてくれるサッカーを展開した両チームに対し、『感謝の大拍手』を送りたいと思います。

 試合後のインタビューでは、両チームの監督が、これまた異口同音に「エキサイティングな良いゲームだった・・」と、内容に満足するコメントを残しています。

 百戦錬磨の両監督。それぞれに「決定的なピンチ(相手にとっては決定的チャンス!)」がありました。ただ、プロである限り、頂点を目指す限り、そんなリスクを「日常的な環境」として捉えなければならない・・。彼らのコメントには、そんなメッセージが込められていたに違いありません。

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 ちょっと疲れました。

 まだ、両チームの「守備戦術」で書きたいことがありますが、今は、ここまで書くので限界)。それは「2002」で書くことにします。

 ではまた、お休みなさい・・ということで、文章をちゃんと更正できませんでした・・ご容赦アレ・・




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