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やったネ・・アンダー20日本代表(その2)・・(1999年4月16日)

いや、素晴らしくドラマチックな試合でした。この勝利は、日本代表に「ツキ」も味方し始めていることの証明のように思います。

 この試合には、二つの「大きな流れ」がありました。

 一つが、先制ゴールを挙げ、それまでの「素晴らしい内容」に、よりアクティブな「勢い」が乗っていった、後半の中盤過ぎまでの時間帯。そしてポルトガルGKが負傷し(交代人数制限を使い切っていたため、フィールドプレーヤーがGKに!!)、彼らが10人で戦わなければならなくなってからの時間帯。

 ポルトガルは、10人になって、またフィールドプレーヤーがGKをやらなければならなくなって、ほとんどの「ロジック(戦術的計画など)」から解放され、それこそ「限りなく自由に」、積極的にリスクにチャレンジし続けます。そして日本代表は、足が止まり、完全に「心理的・肉体的な悪魔のサイクル」に落ち込んでしまいます。

 これぞサッカー・・、これぞ『サッカーは心理ゲームであることの証明』といった試合展開になったわけです。

 そこでのポルトガルの勢いを、「捨て身の積極性」とでも表現しましょうか・・。彼らの、中盤からでもどんどんとドリブル勝負を仕掛けていく鬼神の勢いに、日本代表は完全に呑まれてしまったのです。そして同点ゴール・・PK戦・・

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 暑い、暑い。湿度が低いとはいっても37度ですからね・・。ということで、両チームともに中盤での無理なプレッシャーを極力さけるような、比較的エコノミカルな進め方でゲームに入ってきました。

 日本チームは、安易に最終守備ラインを上げ過ぎず、運動量も控えめに、ポジションバランスを保ちながら、局面的に、そして効果的にディフェンス勝負(プレス)を仕掛ける・・といった具合。それでも要所では、最終守備ラインをズルズルと下げずに、相手を何度もオフサイドに陥れてしまうような積極的な(守備での)リスクチャレンジです。

 それにしても、日本チームの「大きな自信」には隔世の感があります。相手は、世界の強豪、ポルトガル(8人が一部プロチーム所属)。それに対し、まったく憶することなく、自信をもってボールを扱い、積極的に仕掛けていくのです。

 日本人の外国人コンプレックス(サッカーネーション・コンプレックス?!)は、(特に若い世代は)ほとんど払拭されているのかもしれません。それもこれも、世界的な情報化や「J」のポジティブなインフルエンスです。そこでは、(たしかに少なくなったとはいえ)まだ多くの世界トッププレーヤーが活躍していますし、全体的なレベルも格段の進歩を見せていますからね。

 また、彼らのレベルを超えた自信は、トルシエ監督の「心理マネージメント」の成果だともいえそうです。

 「サッカークリック」に掲載されている、大住氏のトルシエ監督インタビュー記事で、彼が「日本選手の技術レベルは、世界トップに匹敵する。あとは、そのことに確信し、自信をもってプレーすれば、確実に世界とも対等に勝負できる・・」と言っていたのですが、世界を知る彼の言葉に、選手達の「確信レベル」が高揚しないはずはありません。

 また、ポルトガルが、中盤で細かなパスを回して攻め上がるタイプということも、日本チームの出来の良さの一つの要因になっていました。世界の実力トップチームならば、「ショート・ショート・ロング・・」という絶妙の組み合わせで攻めてくるものです。その意味では、ポルトガルは、まだその域にまでは達していないと感じます。ポルトガルのフル代表も同じようなサッカーで、まだ世界の頂点レベルには至っていませんからね・・。

 前半は、確実な守備から、何度も決定的になりかけるようなチャンスを作り出すなど、確実に日本のペース。そして後半4分。日本が素晴らしい先制ゴールを挙げます。

 まず左サイドでボールを持った本山が、得意のドリブルで、相手を一人外し、そのまま中央へドリブルで上がっていきます。左サイドのタッチライン沿いに開く永井。この二人のイメージシンクロレベルは、格別の芳香をはなっています。案の定、(2-3人の)相手のアクションと注意を十分に引きつけた本山が永井にパス。ある程度フリーでパスを受けた永井は、「遅れて当たりにきたことで」十部に対応できない相手ディフェンダーを翻弄し、後方から中央へ上がってきた遠藤へパスを回します。

 そして遠藤の「ドリーム・シュート」。ここからは、完璧に日本ペースになります。イケイケ・ドンドンの日本チーム。ただ何度かのチャンスをゴールに結びつけることができず、逆にポルトガルが攻勢に出てきます。そしてそんな時間帯に、ゲームの雌雄を分けるアクシデントが起こりました。高原が、相手GKと接触し、彼の肩関節が脱臼してしまったのです。

 それまでにポルトガルは既に3人の交代枠を使い切っています。エステペスがGKのユニフォームを着てゴールマウスへ・・。これで勝負は決まったな・・誰もがそう思ったのですが・・

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 そしてここから、前述の「第二幕」が切って落とされたというわけです。

 それは、相手が一人少ないことで、気がゆるんだだけではなく(ネガティブ心理効果)、暑さと疲労から、集中力、運動量も奈落の底に落ち込んでしまった・・ということなのでしょう。

 ポルトガルの「捨て身の積極性」にタジタジの日本。プレスをかけようとはしますが、人数が集まっているだけで、ホンモノのプレスになっていない日本(誰も当たりにいかず「アナタ任せ」!)。だから逆に、そこから展開されて「守備の薄い部分」を突かれてしまう。

 そして、そんな消極的で受け身の姿勢が原因で、ポルトガルに同点ゴールを決められてしまいます。

 右サイドでドリブル・キープする「たった一人」のポルトガル選手。そこに、三人の日本人ディフェンダーが集まりはしますが、例によって、効果的なプレスを仕掛けるのではなく全員が「アナタ任せ」。これでは・・。

 案の定、そこから中央へ展開され、これまた「フリー」のクラウディォに素晴らしいロングシュートを決められてしまいます(遠藤の先制ゴールと酷似するシュート!)。

 ただそこからの日本は、相手の同点ゴールに刺激されて再び積極的になるのではなく、より消極的、受け身のプレーに終始するようになっていってしまいます。逆に、ポルトガルの「捨て身の積極性」は天井知らず・・・

 延長でも同じような展開です。日本の守備ラインが下がりすぎ、そこに中盤の守備選手達も入ってきてしまうモノですから、相手2人に対し5-6人の日本人ディフェンダーという構図になってしまいます。これでは、後方から上がってくるポルトガル選手をチェックできるはずがありません。

 日本チームは完全に足が止まってしまっている・・、日本のマークが完全に狂っている・・、誰も、上がってくるボールなしの選手をマークしていない・・、受け身の守備に終始・・、あ〜〜

 ポルトガルの選手達は、例の「捨て身の積極性」で、(コスタやシモンなどが)面白いようにドリブル突破を成功させてしまいます。このポルトガルの集中力と執念・・。これはもう「プロの歴史の差」としか表現しようがない?!

 ただ、そんな「悪魔のサイクル」にはまり込んでいる状況に、何とかしなければ・・と、最後のチカラをふり絞るかのように立ち上がったのが、左サイドに下がり、それまでまったく足が止まっていたキャプテン、小野でした。一度、二度と、ワンツー突破にトライするなど、延長の後半になって急にアクティブに勝負を仕掛けはじめたのです。どこにそんなエネルギーが残っていたのだろう・・

 そして最後は、酒井(?!)からのパスを受け、そのまま左サイドから決定的なシュートを放ったりもします(惜しくも相手GKにはじかれる?! アッ、コイツは本物のGKじゃないゾ!!)。この小野の姿勢を見ていて、ホッと胸をなで下ろした湯浅でした。

 それにしてもポルトガルの「七番」、エステペス。PK戦も含めて、本当に立派なゴールキーパーぶりではありました。たぶん、こんな状況も想定し、緊急事態のGKとして少しはトレーニングしていたのかも・・

 結局、何度もドリブル突破で決定的なシュートを放っていた「あの」コスタがPKを失敗して勝負が決まったわけですが、それにしてもドラマチックな試合ではありました。試合後、ポルトガルの選手達が、エステペスを取り囲み、慰め、感謝(?!)していた光景が強く印象に残っています。

 さてこれで「運」と「ホンモノの自信」まで手に入れた日本代表。次は、メキシコ(4-1でアルゼンチンを撃破)との準々決勝です。何も失うモノのない若き日本代表、とことん自分たちの「チカラ」を出し切って欲しいモノです。




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