「ウイニングチーム・ネバー・チェンジ」という原則をまもり、最高のハーモニーを見せる「結束したチーム」で勝負に臨んだトルシエ監督(後半のゴタゴタについては後述)。そして日本のツートップがそれぞれゴールを決めて決勝に進出・・理想的ではありませんか・・
日本の前半は、三人の最終守備ライン、五人の中盤、そして高原と永井のツートップが、本当に美しいハーモニーを奏でていました。たしかに後半は押し込まれる場面が続きましたが、それでも日本の最終守備のラインコントロールは最後まで積極的(この、自分たちから守備の仕掛けを敢行していく姿勢が素晴らしい!!)。そしてGK南も、集中した素晴らしいプレーを披露しました。
誰がヒーローというわけではありません。全員が、本当に全員が、「組織と個人のバランス」を保ち、『総合的には』、「これぞモダンサッカー」という戦いを、世界中に披露したのです。
日本代表の若武者たちによる、世界に対する「日本サッカーの存在感アピール」。彼らに心から感謝したいと思います。
とはいってもトルシエ監督は、「これでまた日本のメディアは、この伸び盛りの若者たちをスーパースター扱いにするなどして、彼らをサッカーにとっては有害な世界へと誘惑するんだろうな・・」などと悩んでいるに違いありませんけれどネ・・。
さて試合のレポートです。
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前回の世界ユース選手権での準優勝チーム、ウルグアイ。彼らが日本を警戒している。ホンキで警戒している。日本が、世界に「強豪」として認知されている。それは、それは、感慨深い立ち上がりではありました。
試合は、両チームともに中盤を厚くし、そこで「タイミングを見計らったプレス守備」を仕掛けるといった「注意深い」展開ではじまりました。内容は、本当に互角。それでも、組織プレーと個人勝負プレーのバランスでは、日本の方にわずかに分があるといった展開です。日本では、本山と酒井の攻め上がりが目立っています(特に本山は、チャンスとなったら左右の両サイドを使ってしまう!!)。
そして前半の22分、興奮の瞬間が訪れますす。日本の先制ゴール! 高原。
右サイドから中央の小野へボールが戻ってきます。一度、トップの高原とダイレクトパスを交わした小野が、今度は左サイドの本山へパスを回します。パスを受けたとき、中央トップの高原が、近寄ってきます。
それが勝負の瞬間でした。
本山は、そこで高原にパスを回すのではなく、高原に相手守備が引きつけられたことを敏感に察知したに違いありません。『コイツさえ抜けば、前には広大なスペースが・・』ってな具合。そこで彼が勝負を仕掛けたのは、「勝負師の嗅覚」そのもの。そしてドリブル突破からの、中央へのゴロのセンタリング。高原のダイレクトシュート。ゴ〜〜〜ル!!
高原は、左サイドで小野からのパスを受けた本山を、中央、やや下がり気味のポジションでバックアップする体勢にあったのですが(そこで相手守備を引きつけてしまった)、そのことで、本山の勝負ドリブル突破の瞬間に「二列目からの飛び出す」という、何とも効果的なカタチになったというわけです。
それは意図したプレーに違いありません。一度、戻り気味に、そして再びタテへ・・そのことで、センターフォワードとしての「深い」ポジショニング・プレーができるというわけです。
勝負場面では、ロングボールの多用が目立つウルグアイ。それに対し日本は、同じようなロングラストパスへのトライあり、小野の(素早いダイレクトコンビネーションからの)スルーパス狙いあり、本山や高原のドリブル突破トライあり・・・と「攻撃における変化の多彩さ」では、ウルグアイを寄せ付けません。素晴らしい・・
ただその一分後・・。
ウルグアイの同点ゴールは、日本チームのちょっとした「気のゆるみのエアーポケット」が原因だったとも表現できるでしょうか。
フリーキックから左サイドに開いたウルグアイ。そこから「ダイレクトに近いタイミング」で再び中央へ戻ってくる・・。それは「定石」なのですが、日本守備の意識は、ほとんど全員が、その「左サイド」に釘付けになってしまいます。日本ゴールの「ファーサイド」側には、二人のウルグアイ選手たちが全くフリーで・・。
こんな状況になってしまったのは、最初のフリーキックが、ゴール前ではなく、明らかに左サイドのタッチライン際にあるスペースを狙ったものだったからです。その瞬間、(ウルグアイから見た)左サイドから、右サイド(つまり日本ゴールのファーサイド側)へ走り込んでくる数人のウルグアイ選手たち。ただ彼らをマークすべき日本選手たちは、ボールを見てしまい、(ウルグアイから見た)左サイド寄りから、ゴール中央付近へ戻ってくるだけでした(自分たちの後ろでフリーになっているウルグアイ選手たちに気付かなかった?!)。
これはウルグアイの「ワナ」だったのでしょう。彼らのクレバーな戦術ともいえます。よく世界では使われる「勝負の瞬間の戦術」。ウルグアイ選手たちは、最後のセンタリングを上げた左サイドの選手、そして(ボールが左サイドに展開されたにも関わらず)日本のファーポスト側に走り込み続けたウルグアイ選手たち。そしてそこへ、ゴールと「人垣」の間隙を縫うように通された、ゴロでの「ラスト・センタリング」。これは、ウルグアイによる「ワザあり」の同点ゴールだったとすることができそうです。
さてこれからホンモノの勝負がはじまる・・・。
そこからのウルグアイの攻撃は、背の高いフォワードを生かそうとするロングボール主体。何度か、アブナイ場面を作られてしまう日本代表。ただ我らが若武者の「自信レベル」は、本当に天井知らず。そんな押し込まれそうな雰囲気をものともせず、ボールを奪い返したら、小野を中心に、組織と個人がうまくバランスした攻撃を展開してしまいます。素晴らしい・・。
そして34分。日本に追加点が生まれます。中央後ろ目の遠藤から、左サイドの本山へ。彼は、ドリブルを仕掛ける素振りをします。ただすぐに「変化」して「タメ」を演出!! そこから、最前線の永井へスルーパスが出たのです。それは、本山のドリブルを警戒し、バックアップするために、ウルグアイの最終守備ラインが上がり気味(オフサイドトラップ?!)になった瞬間に出たスルーパスでした。永井に対するのは「たった一人のディフェンダー」。
そこからの永井の「最終勝負」については、もう解説の必要はありません。やっと永井が、彼本来の優れた才能を、勇気をもって開花させた追加ゴールではありました。
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さて後半です。まず交代。遠藤に代わって稲本、本山に代わって加地が、それぞれ出場です。守備を固めようというわけでしょうか。
日本はフォーバックにします。確かに前半は、左の本山、右の酒井が上がり気味だったこともあったから(それでも遠藤と小笠原のカバーリングは、ある程度うまく機能していたとは思うのですが・・)、両サイドをより固めるというということなのでしょう。
トルシエ監督は、「気配が見えたら、結果につながる前に先に動く・・」と言います。そんな彼の「判断」で、中田、辻本、手島、加地のフォーバックにし、中盤は、小野、稲本と小笠原、そして酒井ということになりました(ツートップは変わらず)。さてどうなるか・・
そして結局この交代、システム変更が裏目に出てしまいます。
まず稲本が、試合勘が戻っていない、コンディションが万全でないなど、様々な理由で、運動量が少なく、ほとんど機能しないのです。中盤の守備が機能しなければ、このチームの生命線は断たれたようなもの。案の定、これまた一気に選手交代をしたウルグアイに、危ないカタチを何度も作られ、日本の守備ラインも、下がり気味になってしまいます。あ〜、このままでは「消極的な悪魔のサイクル」に入ってしまう・・アブナイ・・。
そう思っていたら、16分間プレーしたところで、稲本が石川と交代です。稲本が機能しないということで、再び「スリーバック」に変えたトルシエ監督。例の「結果が出てしまう前に・・」ということなのでしょうが、このシステム変更、選手交代は(特に本山を代えたことには??が付く)、明らかにトルシエ監督の「勇み足」だったように思います。
ただここから、(たしかにチョット時間はかかりましたが)日本代表チームの積極性がもどってきます。押し込まれ、守備ラインが下がってしまいますが、それでも、自己判断での積極的なプレー姿勢が戻ってきたのです。現象面では、下がりすぎといえないこともありませんが、それでも選手たちの「高い意識・集中力」を感じ、「これだったら大丈夫・・」と感じていたものです。
そしてタイムアップ。試合後、稲本の顔にも満面の喜びが表現されていました。彼自身の深層の心情を思うと、「立派だなコイツは・・彼だったら、世界に抗せるホンモノになれるに違いない・・」、そう思ったものです。
最後になりましたが、このチームの「大会期間中」の「心理的な」成長には、目を見張るものがあったことを付け加えたいと思います。
それは、とりもなおさずトルシエ監督の為した成果。彼に対する信頼感が高まっていなければ、後半の「ゴタゴタ」でチームが崩壊していてもおかしくないのです。「監督、判断をミスったな・・でもサッカーをやるのは自分たちだ・・」そんな高い意識を感じたものです。そのことについては、今週アップデートする「Yahoo Sports 2002 Club」で取りあげようかな・・。
さて、決勝のスペイン戦。我らが「ウイニング・チーム」は、小野が出場停止だったとしても(彼は、イエロー二枚で決勝は出場停止)、日本サッカーを、世界に十二分にアピールできるだけの立派な戦いを披露してくれるに違いありません。
この試合ですが、試合当日に別の予定がはいっているため、アップデートが少し遅れるかもしれません・・ご容赦アレ