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自信あふれる日本オリンピック代表、韓国代表を「内容」でも制圧・・韓国vs日本(0−1)・・(1999年9月27日)

絶対に勝つぞ!! アンダー22韓国代表の、極限まで高まった「やる気のポテンシャル」を感じる立ち上がりです。彼らの中盤でのプレッシャーからは、本当に日本代表の一人もフリーにしないゾ! という気合いが直に伝わってくる・・。また攻撃でも、チャンスになるかならないかというファジーな状況でも、パスの受け手が、全力でスペースへ抜け出ようとします。これは大変な戦いになる・・

 ・・なんていうのが第一印象でしたが、10分もすると、日本代表の若武者たちの「自信あふれる戦い」が目立つようになってきます。その自信がクレバーな戦い方につながっているわけですが、相手の「ボールに集中する」プレッシャーを、素早く、それも「次のスペース」を意識した落ち着いたプレーで、うまく「かわして」しまうのです。トントント〜〜ン・・なんていうダイレクトパスが何本もつながってしまったりして・・

 韓国代表の、とにかくガンガンに押し込んでやるゾ・・という気合いも完全に肩すかし。もっといえば、相手の「前への勢い」を逆手にとるような冷静でクレバーな戦い・・ってなわけです。いいじゃありませんか・・

 そして、平瀬、高原の間をぬうように(彼らが動いてできたスペースへ)、後方から小笠原、遠藤、はたまた稲本などが、どんどんと上がってきます。素早く、広いボールの動きをベースに、たまには(韓国のプレスをうまく外し)しつかりとボールをキープするだけではなく(タメの演出ですヨ)、ココゾの勝負所で、しっかりと「リスク・チャレンジ(決定的スルーパス、単独ドリブル勝負など)」を敢行する。素晴らしい・・

 日本での「第一戦」では、逆に韓国の「勢い」に押し込まれ、消極的になってしまう面を露呈したアンダー22日本代表。それも「中田」がいたのに・・。それに対し、この試合での日本代表の戦いぶりでは、最初の時間帯での韓国代表の「大パワー」に気後れして消極的になってしまうような気配も感じません。

 そして逆に、「プレスを外され続けた」韓国の中盤守備の「足」が止まり気味になってしまいます。冷静に、そしてクレバーに「大パワーで(つまり通常以上のペースで)押し込もうとする相手に対抗するセオリー」ともいえる、素早く、広いボールの動きを、いとも簡単に演出してしまう若き日本代表。頼もしい限りです。

 また、宮本、中田、中澤で構成する「フラット・スリー」、ダブルボランチの遠藤、稲本による「中央守備ブロック」が素晴らしい。韓国が、どちらかといえば「直線的」に攻め上がってくる傾向が強いこともあるのですが、その確実なディフェンスは特筆ものです。また明神と本山の「サイド」も、堅実な守備をベースにした「大胆な攻め上がり」を魅せます(遠藤と稲本による、彼らが上がった際のバックアップも見事!)。

 中盤での、ダイレクトパスを効果的にミックスした「素早く、広い」展開。そして時折見せるバックラインからの「一発ロングラストパス」。はたまた、小笠原、本山、高原、平瀬などが魅せる、自信あふれる「勝負ドリブル」などのリスクチャレンジ。心地よいことこの上ありません。

 日本代表の「フラットスリー」ですが、前述した「中央の守備ブロック」が強固なこと、つまり遠藤と稲本による「前での守備」がうまく機能していることで、韓国の攻めが、ほとんど日本代表のウラスペースを突くところまでいきません。

 日本での「第一戦」では、前回のレポートにも書いたように、韓国の「タイミングの良い決定的スペースへのロングパス」が非常にうまく機能していました。それに対してこの試合では、そんなロングパスは本当に数えるほど・・。それも、「タテパスを簡単に出させない・・」という、日本の前線から中盤にかけての守備が徹底しているからです。こんなに「高い位置での守備」がうまく機能していたら、日本の「フラット・スリー」も気持ちよく「ラインコントロール」ができるに違いありません。

 またGK、曽ヶ端も、日本ゴール前に「太平洋」のように広がる「決定的スペース」を、鋭い感覚でケアーします。一度なんて、30メートルくらいゴールから飛び出して(当然ペナルティーエリア外!)、ヘディングで相手のタテパスをクリアしてしまったりして・・

 また日本の最終守備ラインは、韓国が「タテへのロングパス」を出すような状況では、タイミング良く「後方」にポジショニングし(ベストタイミングで下がり)、決定的スペースを狭めてしまいます。彼らの「フラット・スリー」は、柔軟に「進化」していると感じる湯浅なのです。

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 この試合では、「中田がいない中盤の要」と考えられている(ちょっと腰を痛めている?!)中村の代わりに、小笠原が先発しました。韓国の「早く強烈なプレス」を予測して、中盤でちょっと長くキープする傾向のある中村ではなく、「まず」シンプルにボールを動かそう・・というマインドの小笠原を、「二列目(トップ下=チャンスメーカー)で使う・・。それって、トルシエ監督の「ファイン・プレー」かも・・

 中村のことをよく知る韓国選手たちは、彼が出てきたら、周りへの「準プレス」から、そこへの「最終プレス」を狙ってくるに違いありませんからね。それが、先発したのは、「ボールをこねくり回さず、シンプルに素早いタイミングでパスをつなぐタイプ」の小笠原。そして結果として、韓国の「プレス」が、かなりの部分でかわされてしまう・・。韓国選手たちが自信をなくし、「最初の勢い」を殺がれてしまうはずです。

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 後半、左サイドの本山に代わって中村(左のアウトサイド)、高原に代わって柳沢が登場です。どんなサッカーになるのか・・興味が絶えない・・。

 後半は、20分くらいまで典型的な膠着状態。

 左サイドの中村も、軽快なボールの動きのリズムに逆行することなく、シンプルにパスをつなぐだけではなく、時たま効果的なロングパスにトライするなど、前半の「良いサッカーイメージ」にガッチリとフィットするプレーに徹します。

 20分前後の、韓国の爆発的なカウンターからの二本の「チャンス」。日本代表、遠藤の、小笠原とのクレバーな「タテのポジションチェンジ」からのポストに当たるシュート。見応えある戦いが続きますが、試合の「実質的なペース」は完全に日本のものです。

 25分、小笠原に代わり、レッズの城定が登場。そして中村が、チャンスメーカーのポジションに入ります。さて・・

 (前述したことで)ちょっと心配になった湯浅でしたが、その中村が早々に魅せます。素早いボールキープから、交代したばかりなのに左サイドをオーバーラップしてきた城定へスルーパス。城定は、ためらい無くセンタリングを送り込みます。そのボールを福田、柳沢とつなぎ、最後は、これまたタイミング良く上がっていた遠藤が決定的なシュートを放ちます。

 遠藤ですが、彼の押し上げのタイミングの良いこと。それも、彼の考え続ける姿勢(つまり高い集中力)を基盤に、「ここだ!」という強い決断からの押し上げ(つまり、リスクチャレンジ)に対する思い切りの良さの賜ってなところです。

 遠藤は、中村が中盤でキープしている瞬間における、これまたベストタイミングでの「韓国ゴール前の決定的スペース」への走り抜けを魅せたり(中村からのスルーパスは失敗しましたが、そのレベルの高い意図には鳥肌が立ちましたヨ・・)、はたまた、稲本が上がった後の、全力でのカバーリング・・、ほんとうに良い選手です。

 そして35分、韓国の一瞬のスキを突き、右サイドでボールをうまく奪った明神が、そのまま駆け上がり、韓国ゴールの「ニアポスト」へ鋭いセンタリングを送り込みます。それを福田がゴールへ・・。でも公式発表は「オウンゴール?!」。ただ、福田、柳沢の「ニアポスト」への爆発的なフリーランニング、その勢いからすれば福田のゴールといっても過言ではない!!

 このゴールでは、最初にボールを奪い、そのまま決定的なセンタリングを送り込んだ明神にも「0.5点」は上げなければ。彼は、右サイドでボールに触った韓国選手が、「後ろ向き」で、彼(明神)のことを「見ていない」こと(ボールに触る前に周りを見ていなかったこと)を機敏に察知し、「ボール奪取の勝負」に出ました。その「判断」に大拍手!!

 37分に柳沢(そして小競り合いの相手になった韓国選手)が退場になった後の、日本代表の「ユニット」になった守備プレー、そして相手の「前へのエネルギー」を逆利用した素晴らしいカウンター。いやいやホント、頼もしい限りじゃありませんか。

 この試合で魅せた、「中田の不在」をまったく忘れさせてしまうような、若き日本代表の「自信」。そのレベルは天井知らず。これも、「社会的なアティテュード」が格段に改善したトルシエ監督の、「心理マネージャー」としての大きな成果だといえるかも・・




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