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ラツィオ対ペルージャは、ラツィオが貫禄勝ち(チーム記録の9連勝)・・(1999年2月8日)

この試合まで八連勝の強豪、ラツィオのホーム。前節で、サンプドリア相手に「完勝」ともいえる試合内容で久々の勝利を収めたペルージャが挑みました。

 この試合、ペルージャの立ち上がりは素晴らしい内容だったのですが・・。

 最終守備ラインの前に、堅実でダイナミックなプレーを繰り広げる、オリーヴェと新加入のレイコッソ。両サイドハーフの、ラパイッチとペトラッキ、はたまた中田が、いつも以上のアクティビティーで攻守に積極的に絡んでいきます。またペルージャの最終守備ラインが、ズルズルと下がりすぎなかったことも良い内容のベースでした。

 それでも、たしかに総合的なチカラでは明らかに(格段に?!)ラツィオの方が上。中盤での、忠実でクリエイティブな守備をベースに、ほとんどの場面でゲームを支配してしまいます。それでも、消極的にならず、どんどんと「前で勝負」するペルージャ守備。前半は、なかなか見応えのある内容でした。

 ただ結局、先制点はラツィオが挙げてしまいます。それまで何度か「ある程度のチャンス」を作っていたラツィオでしたが、完璧にペルージャの守備ラインを崩すところまでいきません。これはもしかすると・・と思っていた前半41分。サラスの「本当にクレバー」な判断によって、ヴィエリが先制点を決めてしまったのです。

 得点シーンですが、ヴィエリに入ったタテパスが、競り合いの中で浮いてしまい、ペルージャの最終守備ラインとゴールキーパーとの間の「猫の額ほどの決定的スペース」にこぼれます。ただそこには、ヴィエリとともに(同じタイミングで)、その決定的なスペースへ走り込んでいたサラスがいたのです。瞬間、副審(ラインズマン)は、サラスの動きに全神経を集中したに違いありません。以前だったら、完璧なオフサイドなのですからネ。

 ただここで、サラスの才能が光り輝きます。サラスは、「アッ、ボールが来る!」と感じた瞬間、プレーに参加するのを止めてしまい、「オレ関係ないヨ!!」ってな具合にトボトボと歩いたのです。彼の周りでは、両チーム選手たちの爆発的なエネルギーがぶつかり合っているにもかかわらず・・。

 新しいオフサイドルールを、クレバーに、そして完全にこなしている証拠・・といったサラスのインテリジェンスを証明するプレー。さすが、昨年のフランスワールドカップで、チリの「サ・サ・コンビ」といわれた、「世界の」サモラーノのパートナーです。

 これは、地力に勝るラツィオが、完璧な内容で、ペルージャにまったくチャンスを与えなかったといった試合でした。

 ラツィオの強さですが、まず彼らの忠実で、クレバー、そしてダイナミックな中盤守備を挙げなければなりません。とにかくそれは世界レベル。中田も含め、ボールを持っているペルージャの選手を中心に(そこを中心に「次」を予測する!)、そこからのボールの「動き」を完璧に予測したような、「次のアタック」(パスの受け手のところへの的確なプレッシャー)だけではなく、少しでもペルージャのボールの動きが「停滞」したら、「瞬間的に」複数のラツィオ選手たちが詰めてきてしまいます。それも「守備での読み」が為せるワザ・・というわけです。

 また攻撃では、彼らのボールの動きが目立って、目立って・・。ほとんどのケースで、ダイレクト、ツータッチでパスを回し、攻撃の起点が出来たところで、スルーパス、ドリブル勝負などのダイナミックな「仕掛け」にトライしていくのです。

 また、ペルージャの中盤守備が素晴らしく、ラツィオの攻撃がうまく機能しなかった前半では、「これはダメ」だと、中盤での組立のためのパス回しだけではなく、適当に「シンプルなロングパス」をミックスするようになります。そこいらへんの判断(つまり、攻めのバリエーションの判断)は、イタリア代表のマンチーニ、アルゼンチン代表のアルメイダが中心になっていたのですが、そこら辺りの「発想の柔軟性」も、彼らの強さの秘密なのです。

 ラツィオ、エリクソン監督の手腕が十二分に伺える素晴らしい試合内容だったわけですが、これほどの「チカラの差」を見せつけられては、ペルージャの「会長さん」も、この敗北に納得せざるを得ないですネ。

 最後に中田について。

 ユーヴェントス戦ではデシャン、この試合ではアルメイダと、とにかく「世界トップのボランチ」たちが、彼をかなり意識してマークしていることを感じます。それほど、彼の実力が認められているということです。この試合でもそうでしたが、とにかく彼には、ワンチャンスを「決定的なシーン」につながけしまう能力がありますから、それを世界の選手たちがもっともケアーしていたというわけです。(この試合では)あまり活躍できる場面がなかったとはいえ、(これまで通り)彼の一挙手一投足に「ダイヤモンドの輝き」を感じていた湯浅でした。

 ユーヴェントスの、デシャン、ジダン、ダヴィッツという「世界の強者たち」の言葉を借りるまでもなく、強いチームにいった時の彼の活躍が、今から目に見えるようです。

 ペルージャが、総合力では、セリエのトップチームとはかなりの差があることは事実。中田には、厳しい試合が続くことになりますが、それでも、シンプルなプレーからの「ワンチャンス・メーク」を狙い続けてもらいたいものです。結果だけではなく、「プロセス」までも、かなり正確に評価される本場のリーグですからネ。




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