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全日本、世界の強豪クロアチアを破る・・・全日本vsクロアチア(4-3)(1997年6月11日)

結果については皆さんご存じのとおりです。ここでは、私が気になっていることを一つピックアップします。それは、「半径・・・メートル」サッカーということです。
ゲームが始まってから、日本の先制点が入るまでの時間帯、クロアチアは、ディフェンスラインで慎重にパスをつなぎ、たまに中盤へ「タテパス」を出すような戦い方に終始しました。主力の多くが来日せず、また時差ボケもあったことから、とにかく慎重にゲームを運ぼうという意図だったのかもしれません。ただ、タテパスが出された中盤での全日本のプレッシャーがきついことは先刻ご承知の彼らは、スグに安全なパスをディフェンスラインへ戻します。中盤へタテパスが出されたもので、そこに日本選手が、ある程度集中してしまいます。そんな状況でのパックパスですから、ボールを受けたクロアチアの選手はまったくフリー。それが彼らの「隠された意図」でもありました。そこから、50メートルは離れた最前線のブラオビッチやツビタノビッチへ、まさに「ピンポイント」のロングパスが出てくるのです。もちろん最前線の二人も、そのロングパスを狙い、クロアチアの最終ラインの選手が「フリー」でバックパスを受けた瞬間に、スペースへ向けて「猛ダッシュ(そのパスを受ける動きのことを、私はフリーランニングとよびます)」。それはすごい迫力です。もちろんこの「フリーランニング」は、テレビには映りませんし、スタジアムで観戦する多くの方々の視界にも入っていなかったに違いありません。50メートルも離れている選手達が、「本気でパスを受けるつもりで」走るのです。そして本当にパスが通り、そこから攻撃を仕掛けてしまいます。スゴイ!!日本チームもたまにロングパスを出しますが、「アバウト」なもので、クロアチアのように「最前線でのボールキープ」を意図したものとは基本的にベツモノだったように感じます。
日本は「半径20メートル・サッカー」。それに対しクロアチアは、確実な「半径50メートル・サッカー」を披露したのです。それでは「中盤でのゾーンプレス」から「高い位置でボールを奪い返し」、「サイドを使った素早い攻撃を仕掛ける」、という加茂コンセプトが(最初の頃)機能しなかったのもアタリマエといったところでした。それこそ「世界レベル」のサッカーの証明です。世界レベルでは、ヨーロッパのチームだけではなく、ブラジルを代表とする南米チームも、50メートル以上の正確なロングパスを活用して、「タダッ広くて正確」な展開をします。そして選手達もその「ピクチャー」でプレーします。はるか遠くでボールがプレーされているにもかかわらず、「コチラ」では、フリーランニングとマークのせめぎ合い。それが「世界」なのです。それに対し日本の「J」では、守備ラインでボールが回されているときに、「本気で」決定的なスペース(相手の最終ディフェンスラインとGKとの間のスペース)を狙っている選手はほとんどいません。そんな攻めが成功した経験がないのでしょう。また、前線へロングパスを送るような攻めは「アバウト」なものだ・・という常識が支配しているのでしょう。ただ「世界」は違います。中盤での「細かなパス回し」というイメージを持たれがちのブラジルでさえ、中・長距離パスを多用するようになっているのです。




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