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さて、最終仕上げのゲームが終わり、本番に突入です(全日本vs「J」外国選抜=0-0)(1997年8月29日)

「J」外国籍選手選抜と対戦した加茂ニッポン、前半は、例によって「悪魔のサイクル」にはまりこんでしまいました。外国選抜のフィールドプレイヤーのうち「7」人が、ワールドクラスのディフェンダー。それでは簡単に守備ラインを崩すところまでいかないのも道理ですが、それでも、何度もリスクにチャレンジしなければチャンスさえ生まれません。このことは、外国選抜の監督、オタシリオ氏も試合後のインタビューで言っていたことです。とにかく、FKからの城の決定的シュートチャンス(ジルマールのスーパーセーブ)、中田からのダイレクトパスからの相馬のセンタリング以外、ほとんどチャンスが生まれません。それはそうです。ボールのないところでの「モビリティー(動き)」が、どんどんとなくなっていってしまったのですからね。このことは外国選抜にも言えました。とにかく前半は、両チームとも、中盤での動きがない「スタンディング・サッカー(フリーランニングがないなど、足の動きが止まった状態が続いてしまうサッカー)」に終始してしまいました。

日本代表では、相手の守備が、ウマク、強すぎることで、攻めが「消極的」になってしまったのですが、外国選抜の方は、中心となる選手がいないため、また即席チームであることなどで「コンビネーション」がうまくいかない状態でゲームに臨んでいたことが原因です。それでも、外国選抜の方には、エジウソン、エムボマ、バウドがいます。スタンディングサッカーでも、要所では「爆発的なフリーランニング」に合わせたスーパーパス。そんな彼らがボールをもったら大迫力です。前半は、秋田、小村のストッパーが、(フリーランニングやドリブルで)何度か振り切られてしまう場面がありました(もちろんカバーには井原がシッカリと入っています)。外国選抜では、後方からはスコルテン、サンパイオ、カルロス、バウディール、ブッフバルトなどもどんどんと押し上げてきます。その勢いは、「9本」対「3本」というシュート数の差に如実に表れていました。とはいっても、スリーバックで戦った日本代表の最終ディフェンスラインの安定性は合格点(スリーバックについては、今週金曜日に載る、『2002 Japan』のコラムで詳しく触れようと思っています)。スーパープレーヤーの個人技での突破以外、これといった決定的チャンスを作らせなかったのは立派でした。

ただ後半は、ガラッと様相が変わります。高木に代わって入った西沢、相馬に代わった三浦などの活躍で、「中盤のモビリティー」が蘇ってきたのです。ボールのないところでの「動き」が活発になれば、当然ボールの動きも、速く大きくなるもの。それがチャンスを演出します。もちろんその背景には、日本代表チームがアクティブになったことだけではなく、外国選抜のメンバーチェンジによって、アクティブに守備ができる選手が少なくなったこともあります。やはりサッカーの基本は守備。アクティブな守備は、決して「受け身の守備的サッカー」を意味するわけではありません。予測をベースにして相手のボールを積極的に奪い返す「アクティブ守備」は、「その後」の積極的な攻撃につながります。それはそうです。「意図した守備」で相手のボールを奪い返した瞬間は、「ヨシッ、次は攻めだ!」という気になりますからネ。そしてどんどんと「リスク」にチャレンジして、押し上げてくるというわけです。もし失敗したとしても、ゴールキックやフリーキックで終われば、戻る時間は十分にあるでょうし、互いの「カバーリング(上がった後の守備ポジションには常に他の選手が入る)」に対する信頼もあるのが普通ですからね。それでも後半の外国選抜からは、その積極守備の姿勢が、前半ほどは見られなくなってしまったのです。そんなことが、日本チームの反抗の背景にありました。

後半の日本チームでは、西沢のゴール前での「嗅覚プレー(針の穴のようなチャンスでも、しっかりと走り込んだり、『ここにボールが来る!』という感覚で動くような積極プレーのことです)」が特筆モノでした。とにかく、ゴールへの積極性は、カズのレベルに迫ります。どんな小さなチャンスでも「シュート」に結びつけてしまうのです。もしかしたら、この西沢が、ワールドカップ予選での「切り札」になるかもしれません。カズには、常に密着マークがつきますから、彼を「オトリ」にして、できたスペースを西沢が突く・・。期待しようではありませんか。また、左のウイングバックで交替出場した三浦も、思い切りのいい突破チャレンジを披露しました。最終的に彼は、ウズベキスタン戦のための最終メンバーから外れてしまいましたが、彼のポテンシャルは、「あの」ジーニョも認めるところ、守備力さえ安定すれば、確実に代表チームの補強になるはずです。

長丁場のワールドカップ予選。「補強になる若手が出てこなければ、かなりシンドイ戦いになる・・・」。加茂監督のコメントです、現在の代表チームで「代替」できない選手は、私の考えでは「5人」。それは、井原、山口、名波、中田、そしてカズです。彼らが、何らかの原因で出場できなくなった場合が日本代表のピンチ。そこで若くフレッシュな選手の出現に期待がかかるわけです。とにかく、外国コンプレックスのない若手の台頭に期待しましょうかね・・・。




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