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韓国vsウズベキスタン(2-1)、UAEvsカザフスタン(4-0)(1997年9月13日)

韓国ホームでのウズベキスタン戦ですが、とにかく内容的には韓国が圧倒していました。ただ「勝負」では、ウズベキスタンにも引き分けのチャンスがありました。ワールドカップの予選ですから、最終的には「結果」しか重要ではありません。その意味で、本当に命拾いした韓国でした。

韓国の強さは「基本に忠実」というものです。中盤での、積極的に相手を探すマーキングをベースにした「能動的」な守備はもちろんのこと、最終守備ラインに控える「ホン・ミョンボ」の統率力、正確でクリエイティブなカバーリング、他のディフェンダーの強い守備力(強いヘディング)など、とにかく非常に安定した守備を基本に、攻撃となったら、二列目、三列目の選手たちが「わき目もふらず」にフルスプリントでの「フリーランニング(パスを受ける動き=攻撃参加)」です。彼らは、ボールを持つ選手をどんどん追い越し、前線へ飛び出していきます(オーバーラップ=タテのポジションチェンジ)。また、中盤での素早いボール回しも特筆モノ。これだけ中盤で、素早くボールが動いてしまえば、相手は「守備のターゲット」を絞ることができません。ウズベキスタンの「マークの甘さ」は、韓国チームの「ボールのないところでの爆発的な動き」と「素早いボールの動き」に翻弄された結果とすることができるでしょう。それらがサッカーの基本であり、1994年、アメリカワールドカップでは、予選リーグにおいて、「あの」ドイツ代表チームをも押し込んでしまうほどの迫力があります。

韓国は「精神力」だ・・、と言われます。確かに、彼らの『攻撃から守備への』切り替えの速さは異常ともいえるレベルです(『失敗した』攻撃から、守備へ切り替える方が、その逆よりも鈍重になるのが普通)。センターフォワードのスーパーストライカー、「チェ・ヨンス」も含めた全員が、相手にボールを奪われた瞬間から、ボールを持つ相手はもちろんのこと、上がろうとする近くの相手をスグに「探し出して」マークしてしまうのです。それも、何十メートルも「フル・スプリント」で戻りながら・・。凄い!!これでは、攻めの遅いウズベキスタンの方に、まったくといっていいほど「フリー」な選手が出てこないのも道理といったところ。韓国は、こんな「スーパー・アクティブ・サッカー」を、90分間続けてしまいます。

「とにかく、アイツらのスタミナは並外れていたよ。それも、あんな暑い気候の中でだヨ・・」。アメリカワールドカップで対戦した、あるドイツ代表選手の言葉です。

韓国のシステムは、基本的に「3-6-1」。それに、両サイドの「ウイングバック」とハーフの選手がコンビを組み、交代に攻め上がるという傾向があります。もちろんそれは彼らの「ゲーム戦術」なのでしょうが、これが有効に機能しています。韓国の「気が違ったようなオーバーラップ」の秘密は、案外そんなところにあるのかもしれません。「オレが、最後まで攻撃に参加し続けても、そのスペースをカバーするチームメートが常にいる。『タテの人数バランス』は、常にうまく保たれている・・」。そんな確信が、彼らの「わき目ふらずの積極オフェンス」につながっているのでしょう。

日本にとっての最大のライバルであり、「泥臭いけれども、勝負には強いサッカー」を展開する韓国。相手にとって不足はありません。勝負の分かれ目になるような決定的な場面では、『ゲーム戦術的な秘策』よりも、『精神力』が勝負の分かれ目になるのは確かなこと、まず「気持ち」で負けないことが重要です。

続いて、もう一人のライバル「UAE」について。彼らのホームで行われたカザフスタン戦ですが、まず「40度」にもなる特殊な気候条件を考えなければなりません。結局は、そんな気候でのサッカーを知っていたUAEに軍配が上がったのですが、そこで驚かされたことがあります。それは、カザフスタンの選手たちが「長袖」でプレーしていたことです。不可解このうえないのですが、これでは、「半袖」のユニフォームを作る「予算的な余裕がない」という、我々には信じられないような事実が、本当にあるのでは・・などと疑ってかかりたくもなりますよネ。

試合は、技術レベル、戦術レベルに勝るUAEが順当に勝利を収めました。UAEの守備は、しっかりとした「受けわたし・マンマーク」を基本に、相手のパスをどんどんとカットしてしまうという効率的なもの。「暑さ」のなかにおけるサッカーのノウハウなのでしょう、まず「人数・ポジションバランス」をしっかりと取ることをベースに、勝負の場面(相手からボールを奪い返せるチャンス)ではしっかりとしたアタックです。逆に攻撃では、カザフスタンの「マークの甘さ」を十二分に活用します。つまり、しっかりとボールを動かし、フリーで、相手の「決定的なスペース」へ走り込んだな選手へ素早くパスを回すというものです。それにしても、カザフスタンのマークはあまりにも「いい加減」過ぎました。これでは、簡単にシュートチャンスを作られるのも道理、といったところですが、そのマークの甘さが「暑さ」からくるものだとしたら、日本チームも要注意です。韓国戦では、これほどの「マークの甘さ」は見えませんでしたからね。UAEは、しっかりとしたボール回しから(選手はそんなに激しく動かず、しっかりとボールを走らせる)、決定的な瞬間に狙いを定めて「爆発的なフリーランニング」をする選手へ正確なパスを通します。それも、ショートパスだけではなく、たまには30-40メートルの「ロング・ラスト・パス」もくり出します。中盤で、フリーでボールを持たせたら怖い・・。アタリマエですが、暑い気候では、特に有効な攻め方のように感じます。UAEの最終守備ラインから、ラスト・ロングパスが、井原、秋田、小村の最終守備ラインと、GK、川口の間や、両翼の「決定的スペース」へ送り込まれる・・。要注意です。

試合のペースは、全体的に「ゆっくり」。ただ決定的な場面では「劇的なスピードアップ」。そんな「一瞬のスキを突く」ような闘いになるに違いありません。日本チームは、一点を奪うために、最初からプレスをかけるような「アップテンポ」のサッカーで臨むというのではなく、アウェーであること、そしてこの気候条件を考え、しっかりとした、中盤での「受けわたしマンマーク」をベースに、チャンスとなったら「爆発的なカウンター」というサッカーで戦うのがベスト(これは加茂さんの基本的な戦術でもあります)。ただし、中盤守備が消極的になり、UAEに押し込まれてしまうようでは、かならず悪魔のサイクルに入ってしまいます。「押し込まれる」のではなく、相手に「来させて」カウンターを狙う。そんなサッカーができれば最高なのですが、それが非常に難しいことも事実。それほどの「実力差」は、ありませんからネ・・・。




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