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予選二回戦はじまる・・調子を上げたブラジル、砂漠のライオンを粉砕(1998年6月17日)

 昨日(6月16日)は、パリからナント(6月20日に日本がクロアチアと対戦する都市)まで、片道380キロの距離を自動車でブッ飛ばし、ブラジル対モロッコ戦を見てきました。

 フランス高速道路の制限速度は「130キロ」。ドイツの友人たちにも、「フランスは、規制が厳しいから絶対に飛ばしちゃだめだゼ・・」といわれていました。本人もそのつもりで、ドイツみたいに飛ばせないから、かなり時間がかかるだろうな・・と憂鬱だったのですが、フタを開けてみたら、何のことはない、制限速度を守っているフランス人ドライバーは皆無。多くが「160-180キロ」でブッ飛んでいます。「それなら・・」と、こちらも負けずに「180-200キロ」で巡航・・。というわけで、「これじゃTGVよりも速いな」なんて地元の人にいわれちゃったりして・・。

 ただパリ市内の運転では、どうしてもまだ気を遣ってしまいます。それは、私が調達したレンタカーが、ドイツナンバーだからです。ドイツ人とフランス人は、ホントはあまり仲がよくありません(これは湯浅健二の独断と偏見ですので、異論がある方には・・ご容赦アレ)。ですから、ドイツナンバーだと、意地悪されてしまいます。

 たとえば、凱旋門を中心にした「ランナバウト(クルクル回る円形の車線で、そこを周りながら、放射線状に分散する希望の道路へ抜けていきます)」。

 一度、そこで三周も廻らさられてしまったことがあります。こちらは、出たいのに、私の斜め後方に、交替交替に、次々とフランス人ドライバーのクルマが付いてしまうのです。これでは、車線を外周に移せません。「アタマにきた」湯浅は、次からは、「エイヤ!」でアタマ(クルマのフロント)を、斜め後ろに付いたフランス車の前へ突っ込みます。これで相手は、「オッ、やるな。このドイツ人(ホントは日本人なのダ!)」ということになり、初めて車線を譲ってくれるのです。アタマにくるな、ホント!!!

 「クルマの、アタマからの突っ込み」は、通常の道路でも同じ。とにかく、アタマをを先に突っ込んだ方が勝ちです。そんな「アグレッシブ」な運転は、男女ともに変わりません。これがスゴイんだな、ホントに。 とはいっても、全体的にはフランス人ドライバーは「ウマイ」。互いの「ギリギリの状況での信頼関係」とでもいいますか、そんな「あうんの呼吸」があるのでしょう、皆、ギリギリのところで接触を回避しながらの「ジグザグ走行」なのです。

 まあ私も、運転についてはもうパリジャンなのですが、それでもクルマのナンバーが「ドイツ」ですからネ・・。甘く見られたら、トコトンいじめられてしまいます。ただ私は、そんな「心理戦争」は、サッカーで慣れっこ。しっかりと鍛え上げられています。相手が女性やお年寄りの場合は、もちろん譲りますが、それ以外は「フランス的な自己主張」に徹する湯浅健二なのです。応援アレ。

 バカなこと言ってないで、はやく試合の分析をしろって・・?!それでも、こんなフランスの日常をしっかりと掌握していなければ満足な取材ができないことも事実です。私は、そのことが言いたかったのですが・・。

 ホントに前置きが長くなってしまいました。さてブラジル対モロッコ戦です。

 この試合。私が一番注目したのは、レオナルドが先発で出るかどうかということでした。

 開幕のスコットランド戦。立ち上がりのブラジルの調子はいまひとつ。クリエイティブなプレーが、スコットランドの素晴らしい守備に抑え込まれてしまいます。そんな「停滞したペース」に渇を入れたのが、後半から登場したレオナルドでした。彼が出てからのブラジルは、本来の魅惑的なサッカーを取り戻したのです。レオナルドの「クリエイティブなムダ走り」によって・・。サッカーは、「ボールのないところで勝負が決まってしまうボールゲーム」なのです。この試合については、前回のコラムを参照してください。

 開幕戦、後半のブラジルの内容は、まさに「ウイニングチーム」。ザカロ監督が、そんなチームの雰囲気を変えるはずがない・・、と確信していたのですが、案の定、レオナルドが先発で出場し、フルに90分間、チームの中心となって鬼神の活躍を見せたのです。

 モロッコ戦のブラジルでは、特に攻撃において「調子があがっている」ことを感じさせられました。チームが、優勝へ向かって「成長」していることを実感させられたのです。その背景には、「例の」クリエイティブなフリーランニングがあります。ロナウドが、ベベトが、はたまた、両サイドのカフーがロベルトカルロスが・・。そして、フリーランニングの申し子、レオナルドが、簡単にボールをプレーしてからの爆発的な「次のパスを受ける動き(パス&ムーブもすごい!)」です。

 これなのです。ブラジルの強さの「本質」は。皆さんは、ブラジル選手たちの、ボール扱いの「驚きプレー」に感動されているにちがいありませんが、そんなプレーが「最後に」活きるかどうかは、このフリーランニングにかかっているのです。パスの出し手と受け手。その関係がなければ、基本的にパスゲームであるサッカーが成り立つはずがないのです。

 対するモロッコ。確かにボール扱いでは素晴らしい才能を感じるのですが、ナイジェリアやチュニジアといったアフリカの雄と同様、この「ボールのないところでの動き」にまだ問題があります。確かに、モロッコのサッカーは、ミッシェル監督になってから格段の進歩を遂げたと感じます。それでも、まだまだアマイ。

 彼らの才能をもってすれば、もっともっと「チームプレーと個人勝負プレー」にメリハリをつけることができるはずです。とはいっても、この試合の相手は、ドイツと並び、世界最高の守備を誇るブラジル。そう簡単にコトが運ばなかった・・といったところでした。

 ただ私は、もし「アウトサイダー」がセンセーションを巻き起こすことが出来るとしたらモロッコしかない・・と思っています。ノルウェーとスコットランドは引き分けてしまいまたから、これでA組の一位はブラジルに決定です。ということで、もしモロッコが、予選リーグ最終戦、対スコットランドに勝利を収めたら、確実にA組二位を確保することが出来ると確信しているのですが、さて・・。

 最後にもう一度ブラジル、ブラジル、ブラジル!!!

 ブラジルの三点のうち二点にロナウドが絡んだのですが(先制点は、彼自身のキャノンシュート)、彼の卓越したボールコントロールとスピードには感動します。ただここでも湯浅健二は、彼の忠実なフリーランニングに注目するのです。

 ハーフウェイライン付近で、フリーでドゥンガがボールを持っている。その瞬間、40メートル前方にいるロナウドが、決定的なスペース(相手最終守備ラインとGKとの間にあるスペース)へむけて、爆発的なダッシュを忠実に実行するのです。それは感動的なまでのシーン。あまり注目されませんし、テレビには映らないところかもしれませんが、そこが「サッカーのドラマのコア」だという湯浅の主張に異論を唱える方は、あまり多くないに違いありません。

 面白い試合でした。私がパリのホテルに到着したのは、朝の四時を回っていたのですが(途中のパーキングエリアの公衆電話から、ラジオ文化放送にコメントしたりしていた関係で遅くなってしまった)、それでも、非常に充実した「観戦旅行」ではありました。

 これで、スタジアム観戦は四試合目。まだ十四試合は観戦します。その都度レポートをアップデートしますが、移動、その他のメディアに対するコメント、コラムアップなどの関係で、チョット、アップが遅れるかもしれません。それでも私にとっては、このホームページが「原点」。どんなに時間がなくても頑張るゾ・・ってか〜〜。今後とも、サポートよろしくお願いします。




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