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天皇杯決勝・・アントラーズvsフリューゲルス(3-0)・・アントラーズ時代の到来を感じる・・(1998年1月4日)

まさに横綱相撲。そんな印象を強くしたアントラーズの試合内容でした。昨年8月16日に行われた、「J」の対戦では、エキサイティングな試合内容で競り勝ったフリューゲルス(山口がデイリーヒーロー)。この決勝でも、そんな試合内容を期待したのですが・・。

フリューゲルスは、例によって「スリーバック」の「オールコートマンマーク」。対するアントラーズは、「ライン・フォー」をベースにした、「受けわたし」のマークシステムです。ただ、試合開始から、フリューゲルスのオールコートマンマークは非常にあまくなってしまいます。アントラーズの選手たちが、次々と「フリー」でボールを持ってしまうのです。昨年のリーグでの対戦では、とにかく素晴らしい「マンマーク」で立ち上がったフリューゲルス。アントラーズの選手たちは、まったくフリーでボールを持つことができません。そして徐々にフラストレーションがたまり、最後は足が止まってしまうような時間帯(つまり、アントラーズか「心理的な悪魔のサイクル」に入ってしまったということ・・)が目立ってしまうくらいフリューゲルスの守備は徹底していました。ただこの試合では、ガラッと様相が変わります。立ち上がりから、アントラーズの「ボールの動き」が本当に速く、活発なのです。それでは、パスカット(インターセプト)やトラップの瞬間でのアタックを狙うフリューゲルスの選手たちもターゲットを絞り切れません。そして今度は逆に、フリューゲルスのマークが徐々に甘くなり、しまいには「視線を盗まれ」て簡単にマークをハズされてしまうケースも目立ってしまいます。その典型的なケースが、アントラーズ先制点の場面でした。

中盤、ハーフウェイ付近で、これまた「かなりフリーな状態」でボールを持った増田。このゲームにおける彼の出来は、まさに「牛若丸」。縦横無尽の活躍でした。その増田は、彼の左サイドを、これまた、ほとんどフリーでオーバーラップする相馬の「前方」に、タイミング、強さなど「ピッタリカンカン」のパスを「流し」、自分は、そのまま前方のスペースへ向け、爆発的なフリーランニングです(パス&ムーブの模範的プレー)。パスを受けた相馬は、ボールのスピードを「殺す」ことなくシンプルに(直線的に)ドリブルし、ルックアップから、素早いタイミングで相手ゴール、ニアポスト側にフリーランニングしたマジーニョの足元へパスを出します(マジーニョへのマークもアマイ!)。もちろん、その背後では、増田が走り続けています。ここがポイントです。つまり、相馬がパスを出した時点では、マジーニョと増田、また逆サイドでは柳沢までもが、しっかりとした「スペースへのフリーランニング」をしていたのです。「二人目、三人目のフリーランニング」・・素晴らしいコンビネーションプレーでした。そして、パスを受けたマジーニョは、そのままダイレクトで「チョン」と増田の走る「前方」に、パスを「置いた」のです。そんなシュートチャンスを増田が逃すはずがありません。キッチリとゴール右上隅へ・・・ゴール!!それは、「ゴールへのパス」という教科書通りのシュートであり、増田の「自信」が「ホンモノ・レベル」になったことを証明するゴールでした。

前半25分の二点目も、同様の「二人目、三人目のフリーランニング」から生まれます。まず柳沢が、相手守備ラインを切り裂くようなドリブルで、左サイドを突進します。もちろん右サイドでは、増田がフリーランニングで、パスを「フリーで」受けることができるポジション(スペース)に入ります。案の定、柳沢はその増田にパスを回します。ただ、そこにはフリューゲルスのディフェンダーがすぐに詰めてきます。増田は、そのことを瞬間的に判断して、後方から中央スペースへ走り込んだマジーニョへ、これまた「置く」ような勝負パスをダイレクトで流したのです。それをキッチリと右隅へ決めたマジーニョも立派だったのですが、とにかくこのゴールは、柳沢、増田、そしてマジーニョが演出した「スーパー・コンビネーション・ゴール」でした。彼ら三人に、「0.3点」づつあげましょう。もちろん残りの「0.1点」は、実際にシュートしたマジーニョのものです。

とにかく、アントラーズの「強さ」ばかりが目立ってしまったゲームでした。それは、守備、攻撃の両面にわたってです。攻撃の「目標」は、相手にマークされていない「フリー」な状況でボールを持つ・・というものです。もちろん「フリーでボールを持つ場所」が「スペース」です。アントラーズは、しっかりとボールを動かすことで、フリューゲルスの「ハードマーク」を翻弄し、効率的に「スペースを活用」したということです。また、ジョルジーニョ、本田、はたまた柳沢まで、とにかく、ボールを失った後の「全員守備」も感動モノ。「全員攻撃、全員守備」が理想的に機能したアントラーズにとっては「完璧」な試合内容だったとすることができそうです。

これでアントラーズは、ジュビロ、中山の「スーパーねばりプレー」で負けてしまったチャンピオンシップの悔しさを、天皇杯の舞台で「晴らした」ことになります。わたしは、一国のプロサッカーの「タイトル」は二つが限度だと思っています。タイトルを多くすればするほど、人々の興味が分散し、結局は、プロサッカー全体に対する「ノイズ・レベル」も低下してしまいますからね。ということで、私はこれからも、リーグ戦と天皇杯のみに注目して分析していこうと思っています。 今は、スケジュール的(私の『副業』も含めて)に非常にキビシイ状況ですが、とにかく私のホームページだけは出来る限りアップデートしようと思っています。今後とも、よろしくサポートおねがいします。今年が皆さんにとって良い年でありますように・・・。




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