それにしてもカルチェラタンの雰囲気はいいですね。雑然としているところは他と変わりませんが、何となく雰囲気がアカデミック。それが学生の集まる場所という先入観があるからそう感じるんだヨっ・・ですって?! いやいや、ホントに落ちついた雰囲気で、人々も、何となく深いハナシをしている様子なんですヨ。でもまあ、雰囲気ですから、実際のところは分かりませんがネ・・。
ハナシは代わって昨日のこと。
町はいま「夏物セール」の時期にはいり、すごく混雑しています。ラジオ文化放送のスタジオがある通りはショッピングストリートなのですが、そこに駐車するのが一苦労。私が借りているクルマは大型ですから、小型車が多いフランスでは、駐車スペースを探すのが大変なんです。ルノーの小型車が駐車スペースから出たから、「ヨシッ」とスグにその場所に寄っていくのですが、そのスペースは、私のクルマの半分といったところ。狭すぎます。前後のクルマを「ゆっくり」とバンパーで押すことにはもう馴れっこになっている湯浅でも、それでは・・。ということで、後ろで待っている、美人ドライバーのフィアットに譲った次第。その美人、ニコッと微笑んで「メルシ・・」。私も微笑み返して「ジュブザンプリ・・」。
三十分は待ったでしょうか。ラジオでしゃべる時間が近づいてきます。少し焦り、別な道で駐車スペースを探すことにしました。そうしたら、あったんですよ。駐車スペースが。それも、長さもぴったり。すぐに駐車して、スタジオへ急ぎます。
ただ戻ってみたら、さあ大変。そこは警察のクルマが駐車するスペースだったんです。私の真横には、ポリスのクルマが二重駐車でブロックしていて、まったく出ることができません。そして、その前の建物を見たら、ポリスという看板がかかっているじゃありませんか。もう〜〜。
仕方なく、こわごわドアを押して中へ入り、コワモテの係官に英語で話しかけました。
「あの・・、私のクルマなんですが、知らずにあなた方の駐車スペースに止めてしまったみたいです。本当に申し訳ありませんが・・」
「あー、あのメルセデスね。大変迷惑です。あれは、所長の駐車スペースですから、彼はカンカンですよ。いま連れてきますから・・」
こちらはドキドキ。ただこの警察署は、刑事事件専門の部署みたいで、交通警察とはまったく無縁だったんです。「・・・・・・・!!!」。所長の怒ること・・。でもフランス語しかしゃべらないようで、こちらはチンプンカンプン。でも黙って、「パルドン・・」を繰り返す湯浅です。
ただ最後は、(奇跡的に)罰金も払わずにオーケーということになりました。私と一緒にいた、文化放送パーソナリティーの女性が(彼女はフランス語がペラペラ・・でもこの場は、まったく分からないような素振りをしてもらった方がいい・・ということで黙っていてもらい私が英語で対処した次第)、「あの所長さん、とにかく、自分の駐車スペースに何故停めるんだ。オレのクルマを駐車できずに迷惑だ。早くクルマを移動させろ!!って怒っていただけヨ。普通だったら、交通警察にいって罰金を払わなきゃ、クルマを返してもらえないのにネ」と、彼が何を言っていたか後で教えてくれました。
とにかくあの所長さんは、自分のクルマを、所定の駐車スペースに停められなかったことに腹を立てていただけのようで、私のルール違反には全く無関心といったところ。周りの係官も、私に「スグに行け!」と目配せ。最後はウインクまでしちゃったりして・・。ラッキー!!・・な湯浅でした。
さて本題に戻って、準々決勝の見所です。
まずブラジル対デンマーク。
この試合、ブラジルが、それまでのやり方(チーム戦術)を変えるとは思えません。相手によってゲーム戦術(次の試合に対する特別な戦い方)を変えなければならないのは、チカラが劣るデンマークの方なのです。
ブラジルは、レオナルドが入り、チーム状態が格段に進歩しました。トーナメントの中で成長したわけですが、そんな「ウイニングチーム」を変える根拠はまったくないというわけです。チーム成長のベースは、なんといっても「固定メンバー」、そしてそれをベースにした、選手全員の「良いサッカーに対するイメージ」です。それが固まってきているブラジルには、相手がデンマークということもあり、それまでのやり方を変える根拠はまったくありません。
対するデンマークは、最低でもロナウドには、オールコートでマンマークをつけるでしょう(常に同じ選手がマークにつくやり方)。またリバウドにもつけてくるかもしれません。ただ問題は、グランド狭しと走り回り、ブラジルのダイナミズムを演出する「レオナルド」をどうするかということです。彼は守備にも積極的に絡みますし、ボールのないところでのプレーもアクティブ(フリーランニング=パスを受ける動きのこと)。とにかく行動半径が広いですから、ずっと同じ選手がマークすることは困難を極めます。
この試合では、デンマークがどのような守備システムで試合に臨むかに注目するのが面白いでしょう。彼らはまず、ブラジルの「良いところ」を抑え、チャンスを見計らったカウンター攻撃を仕掛けようとするに違いありません。ラウドルップ兄弟など、効果的なカウンターを仕掛ける「才能」は十分ですからね。
でも結局はブラジルが勝つことになりそうです。番狂わせが起きる可能性は10パーセントといったところ。それほど、この時点でのブラジルのチーム力は安定しているのです。
次の、イタリア対フランスですが、この試合の注目点は、過去2試合、ジダン抜きで戦い、特に攻めに関してプレーが停滞してしまっていたフランスが(単独の勝負プレーに偏りすぎ)、どこまで「組織プレー」のペースを上げることができるかということです。一度、プレーイメージが狂うと、いくらジダンが戻ってきたからといって、すぐにはうまく機能しないものですからね。
ですからこの数日のトレーニングにおいて、ジャケ監督が、ジダンが入った場合の「プレーイメージ」をどのくらい充実させることができたかに注目が集まります。そこで彼の手腕が問われるということです。また、攻めの中心の一人、アンリのケガも心配です。
対するイタリア。予選グループの試合では、カッタルいプレーばかりを見せていた彼らですが、決勝トーナメント一回戦、対ノルウェーで見せたサッカーは秀逸でした。しっかりと確実に守り、効果的なカウンターを仕掛ける。それが彼らの伝統的な戦い方。この試合では、それがツボにはまります。フランスにとっては、彼らのカウンターも要注意。フランス中盤守備の王様、デシャンのウデの見せ所です。
調子を上げてきたイタリア。地元フランスにとっては大変な強敵です。両チームともに全力を出しきる死闘が展開されるはず。楽しみです。
さて、オランダ対アルゼンチンですが、まずオランダが調子を上げているのが目立ちます。その原動力が、ダビッツとセードルフが組む「ダブルボランチ」。ユーゴスラビア戦では、ダビッツが決勝ゴールをたたき込んだのですが、彼の中盤でのダイナミックな守備と、攻撃の起点としてのクリエイティブなプレーは秀逸です。このポジションには、ヨンクがいるのですが、ダビッツのプレーは、ヨンクの影を払拭してしまった感があります。
また、どんどんと左右のポジションをチェンジしながら、ダイナミックな攻撃の仕掛人として機能する、オーベルマルスとロナルド・デブールのプレーも特筆もの。そして最前線には、「あの」ベルカンプと、調子を上げているコクがいます。
対して、イングランドとの死闘を勝ち抜いたアルゼンチン。レポートにも書いたのですが、彼らの、中央に寄りすぎの攻撃が気にかかります。確かに、「才能を感じさせる」クリエイティブで素早いボールの動きは危険そのものなのですが、どうしても「攻撃のオプション」が狭いように感じられてならないのです。
最後が、ドイツ対クロアチアです。
クロアチアにとっては、悲願がかなった対戦カードということになりました。一昨年、イングランドで行われたヨーロッパ選手権。その準々決勝で、同じドイツを相手に「2-1」で涙をのんだクロアチア。彼らにとっては、その雪辱戦ということになりますが、この試合には、それ以上の「歴史的」な意味もあります。
旧ユーゴスラビア時代には、社会システム、経済力などで劣っていた彼らは(今でもドイツには多くのユーゴスラビア人出稼ぎ労働者が住んでいます)、深層心理にある「コンプレックス」が原因で、どうしてもドイツに勝つことができなかったのです。
彼らにとっては、ワールドカップという世界の桧舞台でドイツを破ることは、そのコンプレックスを「最終的」に断ち切ることも意味するのです。
ドイツは、調子が上がりません。まずメンバーが固定しない。また、各選手のポジションもクルクルと変わります。メラー、トーン、ヘスラーなど、主力の期待がかかる選手たちの調子も上がらず、結局37歳になる大ベテラン、「ドイツ魂の権化」、マテウスをチームに戻しました。
それでも、ユーゴスラビア戦、メキシコ戦の最後の時間帯に見せた、ココゾッというときにチームが一致団結してしまう「勝負強さ」は健在です。また、調子を戻してきたクリンズマンも好材料です。
この試合は、準々決勝の中では一番激しい試合になるかも・・。私は、勝負という意味ではドイツの方が一枚上手だとは思っているのですが、徐々に調子を上げ、(ドイツとの対戦ということで)チームとしてまとまってきている「才能集団」、クロアチアも最高のゲームを展開するに違いありません。
私はこの試合を、リヨンで観戦します。今回は一人ということで、クルマではなく、初めて「TGV」での移動ということになりますが、電車の中で、ホンモノの闘いを見るための「イメージトレーニング」をやろうと思っています。では、観戦レポートにご期待アレ・・・