決勝前の両チーム監督の言動を見聞きするたびに、モウリーニョの「したたかさ」を実感していた湯浅なのです。本当に効果的にメディアを活用してしまうモウリーニョ。それに対し、まだまだそこまで術策レベルが進化していないモナコ監督のデシャン。
試合は、そんな両監督の「したたかさ」がそのままグラウンド上に現れたといったコンテンツになりました。とにかく、ポルトの試合巧者ぶりが目立ちに目立つのです。もちろん、前半24分にジュリが負傷退場してしまったことは、モナコにとって大きな痛手だったし、その後のモナコのゲーム内容に大きなカゲを落としたこともたしかな事実です。ただそれでも、この日のポルトのプレーぶりには、優勝に値するコンテンツが詰め込まれていたとすることに躊躇しない湯浅なのですよ。
もちろん決勝だから、両チームともに、まず守備からゲームに入っていったのは当然ですが、ポルトの方が、ボール絡みやボールのないところで、よりダイナミックなディフェンスを展開していたとすることができます。選手たちに深く浸透したクリエイティブで積極的な実効ある守備意識・・それがあるからこそ、次の攻撃にも勢いを乗せることが出来る・・。そしてそれこそが、モウリーニョ監督が絶対的な自信をもっているチーム戦術の根幹を為しているというわけです。我々は世界的な才能を備えているわけではない・・だからこそ選手全員が、積極的に義務を果たさなけばならない・・それがあってはじめて、クリエイティブなプレーも活かすことができる・・。
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ここからは、試合コンテンツを、時間の経過とともに追っていくことにします・・
・・立ち上がりからゲームのペースを握ったポルト・・彼らのサッカーでは、まず何といっても実効ある組織ディフェンスが目立つ・・ボールホルダーに対するチェイス&チェック&協力プレスという流れにしても、ゾーンやボールホルダー(それが誰か!)に応じて「やり方」を変えるというクレバーさも見せつける・・最終ディフェンスブロックのラインコントロールも巧みだし確実・・またボールのないところでのマーキングも忠実&確実&クリエイティブ・・そしてボール奪取からの攻撃では、次のディフェンスに対して上手くバランスを取りながら、しっかりと人数をかけて攻め上がっていく・・もちろんそのバックボーンは、選手同士の、互いの守備意識の高さに対する相互信頼・・
・・試合前には、モナコが攻め、ポルトが守る(カウンター狙い)という展開が予想されていたけれど、実際のゲーム展開は、それとはかなり違ったモノになった・・まあ、モナコが攻めるという戦前のゲーム予想は、モリエンテスやロテン、はたまたジュリなど、モナコに、より目立つ攻撃選手がいるからに過ぎないということなんだろう・・それに対して、実際のグラウンド上の現象は、ポルトの方が、実効あるディフェンスに対する自信をベースに、攻守にわたって「より」ダイナミックなサッカーが展開できている・・とはいっても、やはり両チームともに守備が堅いから、シュートチャンスは、互いにほとんど作り出せないけれど・・前半のシュート数は、両チーム合わせて、たったの3本・・その視点では、典型的な決勝ゲームということになるのだが、もちろん以前とはスピードや運動量が格段に違うし、守備にしても、戻って構えるのではなく、両チームともに前から勝負を仕掛けているから、実際の攻守のプレーコンテンツは決して退屈なものではない・・
・・モナコは、モリエンテスのタテへの抜け出しの上手さ(=決定的スルーパスを呼び込む動き!)を活かそうと、限りなく直線的に攻め上がっていくというイメージが強い・・それには、左サイドのロテンがうまく抑え込まれているだけではなく、早い段階でジュリが交代してしまったからという背景もある・・とにかく、したたかなポルトのゲーム運びが目立つ・・
・・攻めあぐむモナコに対してポルトは、中央突破だけではなく、しっかりとサイドからも仕掛けていくというバランス感覚に優れている・・要は、クロス攻撃もしっかりとイメージしているということ・・だから中央で待つ選手たちも、早めのクロスをイメージしたアクションを起こすことができる・・そんな仕掛けイメージが先制ゴールにつながった・・中盤の右サイドでバックパスを受けたパウロ・フェレイラが、チームに共通するイメージ通りに、素早いタイミングで、鋭いアーリークロスを入れたのだ・・そのクロスが、狙っていたカルロス・アウベルトにピタリと合う・・しかし、うまくコントロールできないカルロス・アウベルト・・ただこぼれたボールが、モナコ最終ラインのアキス・ジコスに当たり、あろうことか、カルロス・アウベルトの眼前スペースにこぼれてしまったのだ・・迷わず、ダイレクトで叩くカルロス・アウベルト・・シュートされたボールは、モナコゴールの右ポストの内側に当たってネットに吸いこまれていった・・
・・さて、モナコにとってはものすごく厳しい展開になってしまった・・何せ、ポルトが展開する、選手全員が有機的に連鎖しつづける強力ディフェンスが、そのゴールでまたまたパワーアップするだろうから・・そして案の定、中盤での「球だしポイント」だけではなく、最前線のパスレシーバーたちも完璧に抑えられてしまうという展開になる・・仕掛けの糸口さえもつかめなくなってしまうモナコ・・またセットプレーでも、ゴール前の選手たちが受け身だから、どうしてもチャンスの芽が見えてこない・・これは、モナコにとって本当に厳しい展開になった・・
・・そして後半26分、世界中のサッカーファンが予想していた事態がおとずれる・・ポルトの一発カウンターが決まったのだ・・起点は、二列目でクリアボールを受けたデコ・・これはクリアパスと呼ぶにふさわしい、次のカウンターを明確にイメージしたクリアプレーだった!・・そして、そこからのデコのプレーが秀逸だった・・
・・タテにスペースをつなぐ直線ドリブルを仕掛け、当たりにきたモナコ選手を一人抜き去ってしまうデコ・・これでモナコ守備ブロックは擬似パニックに陥ってしまう・・そしてデコは、次にチェックにきたモナコ選手の意図をあざ笑うかのように、タメにタメてから、左サイドで完全にフリーになったアレニチェフへパスを通すのだ・・これで完全にモナコ最終ブロックは、振り回されてしまう・・彼らにできるのは、もうゴール前までもどることだけ・・その状況を完全にイメージしているアレニチェフは、ゴール前の状況をたしかめるように、またゴール前へもどったモナコディフェンダーの視線と意識を引きつけるように、余裕をもってボールを止め、視線をゴール前へ投げる・・それが勝負の瞬間・・必死で戻るモナコディフェンダーの視線と意識をしっかりとイメージしていたデコが、ゴール前まで詰める動きをピタリッとストップしたのだ・・これで、モナコディフェンダーとの間に大きな間合いが空いてしまう・・ボールを持つアレニチェフは、まさにこの状況をイメージしていた・・そして素早く、ラスト横パスをデコへ流す・・デコがトラップした瞬間には、モナコ選手たちとの間に10メートルにもなろうかという大きなスペースが横たわっていた・・こうなっては、もうどうすることもできない・・最後は、デコが、余裕をもって「ゴールへのパス」を決めたというわけだ・・これで万事休す・・その後にポルトがカウンターから挙げた追加ゴールは(後半30分・・アレニチェフ)、ボルトの優勝を祝福する神様からの贈り物だった・・
たしかに典型的な一発勝負サッカーだったけれど、そのなかで、完璧な戦術サッカーでモナコを凌駕したポルトが納得の勝利を収めたといった決勝戦でした。あまり寝ていないので、今日はここまででご容赦・・。