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CL決勝トーナメント一回戦第二試合、マンU対FCポルト(1-1でポルトが二回戦進出)、レアル・マドリー対バイエルン・ミュンヘン(1-0でレアルが二回戦進出)についてショートコメント・・(2004年3月11日、木曜日)

ドイツから持ち帰ってきたヴィールス(?!)に対する抗体がまだ完全に出来上がっていないのか・・。どうもまだ本調子にならない。帰国早々から、試合を観戦して(スタジアム観戦&テレビ観戦)レポートを書き、講演や座談会にでかけるなど、寒いなかを単車で動きまわっていましたしね。

 そして迎えたチャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦の「ジャッジメント・デイ」。その初日ではマンチェスター・ユナイテッドが、FCポルトにうっちゃられてしまいました。それにしてもドラマチックな展開。ときどきテレビ画面に映し出されるマンUサポーターの表情からは、「こんなこと」が如実に読みとれましたよ。

 このままいけば(1-0でマンUがリード!)あと一分でオレたちのマンUが決勝トーナメント二回戦へ進出する・・でもポルトの攻めの勢いには内容が詰まっているし、オレたちの守備ブロックにもまったく余裕がない・・やっぱりファーディナンドとシルベストル、そしてロイ・キーンの不在が大きい・・あっ、フリーキックになってしまった・・これは危ない(ここで、顔を覆うマンUファンの顔が何人も大写しにされる・・テレビクルーも本当によくサッカードラマを分かっている!!)・・そして案の定の同点ゴールに放心状態のマンUサポーター・・それにしてもこぼれ球に飛びついてゴールを決めたコスチーニャの執念には脱帽・・。

 試合内容を全体的に評価しても、この結果は決してフロックではありません。ポルトは、よくまとまった素晴らしいチームですよ。攻撃では組織プレーと個人勝負プレーが高質にバランスしているし(ボールのないところでの勝負の動きも活発でクリエイティブ!)、ディフェンスも忠実でクリエイティブですしね。

 それでも、ギグスとオシェイによるタテのポジションチェンジが功を奏したマンUの先制ゴール場面では、完全にウラを突かれてしまったけれど・・(ウラでタテパスを受けたオシェイの切り返しに振り回されるポルトディフェンダー・・このとき、ポルトゴール正面では、スコールズが、まったくフリーで後方から押し上げていた・・そこへ、ピタリのクロスがオシェイから送り込まれて・・見事な先制ゴール!)。前半32分のことです。

 その後は、もちろんポルトも必死で攻め上がる。そこで、マンU守備ブロックが、ポルトの攻めの勢いを抑制しきれていないという印象が・・。局面でのボール絡み守備プレー、ボールなしのマーキングなど、細かなところでの「抑制」が効いていないことが全体的に落ち着きのないディフェンスという印象につながったというわけです。それでもギリギリのところで持ちこたえていたマンU守備ブロックだったけれど、最後はセットプレーからやられてしまって・・。最後の最後に奪われた同点ゴールとその一分後に吹かれたタイムアップのホイッスル、そしてその後にスタジアム全体を包み込んだ奈落の落胆・・。ドラマでした。

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 同じようなゲーム展開になったのが、レアル・マドリー対バイエルン・ミュンヘン。アウェーゲームを闘うチーム(バイエルン)が一点をリードされ、このままでは敗退してしまうという状況も同じなら、先制ゴール(サルガドの必死のヘディングからジダンが蹴り込んだ!)が入った時間まで同じ(前半32分)だったんですからネ。そして、これまた同じように、ホームチームに先制ゴールを入れられた後、アウェーチームが必死に攻勢に出る。

 前半のバイエルンは、レアル守備ブロックを崩したというわけではありませんが、残り10分というタイミングで決定的チャンスを得ます。こぼれ球を、ゼ・ロベルトがキャノン(大砲)中距離シュートを放つ(レアルGKカシージャスがギリギリではじき出す)・・決定的カウンターから、フリーでパスを受けたマッカーイがよく抑えたグラウンダーシュートを放つ(これまたカシージャスがギリギリで手に当ててはじき出す!!)・・その後のコーナーキックのこぼれ球を、バイエルンのピサーロが、ゴール正面数メートルからシュートを放つ(これは、レアル右サイドバック、サルガドがギリギリでクリア!)。フ〜〜ッ。

 それでも後半のバイエルンは、ほとんどチャンスらしいチャンスを作り出すことができなかった。全体的な内容からすれば(レアルがロベルト・カルロスとロナウドを欠いているという状況も加味すれば)、やはりレアルの方が一枚上手だったなということになりそうです。局面での「個のエスプリプレー」のレベルでは、もちろんレアルの方が上。ジダンやフィーゴがいますからネ(特にジダンが凄かった・・)。それだけではなく、ゲーム戦術的な守りという視点でも、この試合でのレアルの徹底度は高かったのですよ。

 この試合でのレアル選手達の「守りの基本イメージ」は、フォーバック(サルガド、エルゲラ、メヒーア、ラウール・ブラボー)の前に三人の中盤守備ブロック(前の壁!)を築くというもの。ソラーリ、グティー、ベッカム。これが殊の外うまく機能していました。バイエルンが、まったくといっていいほどサイドを崩せないのですよ(得意のクロス攻撃がままならない)。たしかに一度だけ、前述した効果的なカウンターはありました。でもカウンターシーンはそれだけ。高い位置でボールを奪い返せないからカウンターがままならず、どうしても組み立てるしかない・・だからレアルに守備ブロックを素早く築かれてしまう・・それに対しバイエルンは、ボールの動きに仕掛けのタテパスを組み合わせることもままならず、また個のドリブル勝負で打開していくのも苦しい・・。

 ロベルト・カルロスとロナウドがいない・・。ラウールもケガで本調子ではない・・。ということでこの試合でのレアルは、ガチガチに組織的なディフェンスを意識させるゲーム戦術を徹底的にやり通し(攻めは、ラウール・ジダン・フィーゴの天才トリオに、ケースバイケースで後方から一人か二人が加わるというイメージ!)、それが功を奏したということです。我慢を重ねて勝ち取った勝利ですからネ、選手達の表情にも、安堵と満足感がにじみ出ていたモノです。

 それにしてもソラーリはどんどんと発展している。今シーズンの彼は、とにかく中盤での守備をものすごく意識していると思います。要は、「その部分」に自分のビジネスチャンスが転がっていると明確に認識したということです。常にディフェンスからゲームに入っていくというプレー姿勢が、彼の攻撃プレーの幅も広げている・・。やはり、守備プレーこそが(守備意識の高揚こそが!)すべてのスタートラインだし、それがあってはじめて全体的なプレーの質が高揚するということなのです。




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