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天皇杯4回戦・・最初の10分間のゲームコンテンツでは、誰が、こんなエキサイティングな展開を予想したでしょう・・(佐川急便東京SC対ジュビロ、2-3)・・(2004年11月13日、土曜日)

面白い・・面白い・・面白い・・テーマが明確で、それがゲーム展開のキモの一端を担えさえすれば、どんなレベルのサッカーだって本当に心から楽しめるものだ。

 この試合でのテーマは、まず何といっても「チカラの差の本質」。次に、ジュビロ山本新監督の初陣。まあ、山本さんの場合は、まだ日が浅いから置いといて、この試合でのメインテーマは、やっぱりサッカー内容の差がどのような背景要因で現出してくるのか(その差が、グラウンド上で大きくなるのか!)というポイントかな・・ってな具合で試合を観はじめた次第。そこまでは、テーマ観察を深めようという気合が乗っていたのだけれど、そんな私の学習マインドを殺ぐように、立ち上がり早々の4分にジュビロの前田が先制ゴールを奪ってしまって・・。「あ〜あっ、これでワンサイドゲームになってしまうのだろうか・・」なんて大いに落胆したものですよ。でも実際には・・

 この先制ゴールのシーン。ジュビロは、立ち上がりからゲームペースを握り、まさに、これぞジュビロの真骨頂という、人とボールが「タテにも」よく動くサッカーを展開しつづけます。そして素晴らしいコンビネーションから名波が抜け出し、そこへ服部からスルーパスが通されたという次第。

 とにかくそのシーンでジュビロが展開した人とボールの動きはレベルを超えていました。佐川の最終ラインは、動きつづけるボールに意識を奪われるように完全に「ブレイク」のタイミングを失し、完璧に名波に「行かれて」しまったのですよ。まさに、二列目からの「消えるフリーランニング」。そしてまっくたフリーでボール持った名波が、例によってギリギリまで「タメ」を演出し、最後の瞬間、斜めにニアポスト側へ走り込んできた前田のアタマにピタリと強烈ラストパスを決めたのです。前田がヘディングで流したボールは、そのまま佐川ゴールの右ポスト内側を直撃してゴール内へ飛び込んでいきました。素晴らしい崩しコンビネーションと、名波が演出した、素晴らしい最終勝負プレーでした。

 それにしても、立ち上がりの佐川の守備ブロックは浮き足だっていました。逆に言えば、立ち上がりにジュビロが魅せた人とボールが活発に動きつづけるサッカーが素晴らし過ぎたともいえます。とにかく佐川は、スリーバック(まあ両サイドが押し込まれているからファイブバック!)をベースに、三人の守備的ハーフと一人の攻撃的ハーフ(彼も守備に戻るから、四人で形成する中盤ライン!)が分厚い守備ブロックを組織しているのにもかかわらず、肝心の勝負シーンでのマークが甘くなってしまうのですよ(守備ブロックの人数が多すぎ、互いにアナタ任せになっていた?!)。

 彼らの守備イメージは、ポジショニングバランスオリエンテッドの「フラットスリー」。初期段階では、しっかりとラインを形成し、互いのポジショニングバランスを取ることを意識します。そして相手のボールの動き(ボールホルダーの状態)をしっかりと見極めながら勝負所を狙いつづける。でも肝心の勝負シーンでは、素早いブレイクからのマンマーク移行が見られないし、ジュビロ中盤選手たちの「抜け出しフリーランニング」もうまく掴みきれないという体たらくなのです。それが、二列目から決定的スペースへの名波の抜け出しフリーランニングを許し、ジュビロに先制ゴールをぶち込まれた原因でした。

 そこまで見ていて、こんなことを思っていました。「たしかにジュビロ選手たちの方が、フィジカルでも技術でも、また戦術イメージレベルでも少しずつ上だよな・・そんな、ベーシックな総合力でちょっと上のジュビロの選手たちは、ボールのないところでしっかりと動きつづけるだけじゃく、それに連動するようにしっかりとボールも動かしつづける・・相手を甘く見て運動量が落ちたら、この程度のチカラの差しかないから、逆に相手に凌駕され、自分たちは心理的な悪魔のサイクルにはまり込んでしまうものなのに・・さすがにジュビロは強い・・ここでいう運動量とは、パスレシーブの起点になるための動きや、味方にスペースを作り出すための動き、パス&ムーブの動きや、後方からのサポートの動きなどなどの、ボールがないところでの実効あるアクション全体量が多いという意味・・決して無為なランニングのことじゃない・・要は、ジュビロ選手が、考えることと走ることを「同義」としてしっかり理解しているということ・・いや、ホントに素晴らしい・・」。

 でもそこからホンモノのドラマがはじまります。立ち上がりの10分間くらいは、ジュビロが展開する組織攻撃に「ウラの決定的スペース」を突かれまくり、先制ゴールまでたたき込まれた佐川の守備ブロックが、15分を過ぎたあたりから徐々に安定しはじめたのです。この安定には、佐川の選手たちに、ジュビロの「勝負のパス出しタイミング」が見えはじめたという背景もありそうです。

 タテにも活発にボールを動かしつづけながら、「二つ目や三つ目のタイミング」でウラを突いていくというジュビロの崩しパスのニオイを嗅ぎ分けられるようなった佐川選手たち・・そのことで、立ち上がりは何度も「フリーで行かれて」しまっていた前田のフリーランニングも徐々に抑えられるようになったし、ジュビロが繰り出す勝負のパス出しシーンでの忠実マーキングも機能しはじめた・・逆に、人とボールの動きによって(組織パスプレーで)ウラを簡単に突けなくなったジュビロ選手たちの足が止まり気味になっていく・・そんなだから、徐々に佐川も有利なゾーンでボールを奪い返せるようになってカウンター気味の攻めにも勢いが乗るようになっていく・・そして実際に、同点ゴールだけではなく、前半39分には逆転ゴールまで奪いとってしまう・・ってな展開に、ゲームが大きく変容していったのです。ワンサイドという詰まらないゲーム内容になってしまうだろうな・・なんて諦めていた湯浅ですからネ、そこからは、本当に観戦にリキが入ったものです。

 そこからのゲーム展開は、まさにエキサイティングそのもの。「組織パスでの崩しがうまく機能しなくなっていたから、後半は個人の勝負もミックスしていこうという意図で、藤田に代えて川口を投入した・・」。試合後の監督会見で山本昌邦さんがそう言っていましたが、後半立ち上がり早々の3分、ジュビロが、まさにその意図がピタリと当たった同点ゴールをぶち込むのですよ。そこで魅せた川口の突破ドリブルは、50メートルはありましたかネ。見事なドリブル突破と、前田への素晴らしいラストパス・・そして、前田の素晴らしい反応からの、見事なこぼれ球シュート・・。見応え十分なゲームじゃありませんか。

 特筆だったのは、たしかに後半はジュビロが盛り返してゲームを支配したとはいえ、そんなゲームの流れにもかかわらず佐川がたまに繰り出していく「吹っ切れた仕掛け」に、素晴らしい心理パワーと危険なニオイがテンコ盛りだったということです。

 「たしかに負けはしたけれど、選手たちは、全力を出し切った良いサッカーに胸を張っていたし、素晴らしく晴れ晴れとした表情をしていた・・」。今度は、佐川の其田(ソノダ)監督が、そのようなニュアンスのことを言っていました。まさに、そういうことでしょう。たしかに、「チーム力の僅差」は徐々に見えにくくなっていきましたからネ。やはりサッカーは、ホンモノの心理ゲームなのです。

 



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