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天皇杯準々決勝・・勝負の行方という視点でも、サッカー内容でも、素晴らしいコンテンツてんこ盛り・・(レッズ対FC東京、2-1)・・(2004年12月19日、日曜日)

アリャリャッ!・・一体どうしたんだ・・スタジアムが半分しか埋まっていない(実際は3万人強といったところ)・・天皇杯の準々決勝だし、相手は「あの」FC東京だよ・・「レッズにはエメしかいない。要は、カウンターだけをケアーしていればいいのさ。0点に抑える自信がある」などなど、FC東京の原監督の挑発的な発言が目立っていたことも含め、遺恨試合という雰囲気だってあるのに・・それだけじゃなく、「両刃の剣」のエメルソンがいないし、長谷部がトップ下をやるなど、戦術的な視点でも興味深いゲームコンテンツもてんこ盛りなのに・・。

 ゲーム開始前、そんなことを考えながら、自分なりに納得していましたよ。要は、リーグの試合だけでファンの皆さんも疲れてしまったということなんでしょうネ。ジャーナリスト連中も、2004サントリーチャンピオンシップ(この表記に統一して欲しいとの「J」からお達しがあったので・・)から比べたら3分の1といったところ。まあとにかく皆さんお疲れなんでしょうね。でもね、この試合を見のがした人たちは「残念〜〜っ!!」でしたよ。とにかく戦術的な内容には興味深いコンテンツがてんこ盛りだったし、勝負の行方という視点でも、手に汗握るエキサイティングマッチになりましたしネ。

 例によって前置きが長すぎてスミマセン。さて試合。レッズの布陣は、フォーバックの前に、鈴木啓太、山田暢久、アレックス、そして長谷部誠を「ダイヤモンド型」に配置するというもの(ギド・ブッフヴァルトの談・・もちろんツートップは田中と永井)。でも私は、この布陣を、こんなふうに解釈していました。フォーバックの前に、「前気味リベロ」の鈴木啓太がいる・・その前に、山田、アレックス、長谷部が並ぶけれど、攻守にわたる基本的なタスクはアバウトであり、チャンスがある者が前へ行き、遅れた者が次の守備に備えるという動的なもの・・要は、例によって、互いの守備意識の高さに対する相互信頼をベースに、全員が攻守にわたって、リスクにチャレンジするチャンスを狙いつづけるというもの・・。サッカーというボールゲームは、一つの表現では追いつかない「戦術的な不確実性ファクター」が山盛りなのです。

 ということで、中盤の三人とトップの二人が、まさに「縦横無尽」のポジションチェンジを繰りひろげながら、素早く、広くボールを動かしつづけるレッズ(もちろんそこでは、活発な人の動きが絶対的なベース!)。それは、それは、ダイナミックな組織プレーのオンパレードなのです。たまに、そのなかに鈴木啓太も押し上げてきたり・・。

 私はこの試合に対して、まさに、この仕掛けコンテンツを期待していたのですよ。エメルソンという絶対的な武器がいなくても、今シーズンからのレッズのサッカー内容が減退することはない・・。

 昨シーズンのレッズは、選手たちのイメージを発展させるのではなく、まさに「勝負(結果)のみ」を追求しつづけるという規制サッカーだったから、一つでも「その戦術サッカーの構成要素が抜けたら」全体的なサッカー内容も大きく低減してしまいました。でも今シーズンは違う。とにかく、活性化した守備意識も含め、選手たちの主体性を前面に押し出す「解放された積極プレーマインド」がスタートラインになっているのですからね。少しくらい「パーツ」が欠けても、そのサッカー内容が大きく落ち込むことがないというわけです。山瀬が抜け、坪井が抜けて、たしかに全体的なサッカーコンテンツはちょっと減退したけれど、すぐに、そのメンバーで最高のサッカー内容にまで回復しましたからネ。

 そしてこの試合では、絶対的なスーパースターであるエメルソンが不在。でもレッズのサッカーコンセプトは、たしかに微動だにしなかった。いや、むしろ「組織プレーと個人勝負プレーのバランス」という視点では、内容は改善した?! まあ、そういう見方もできそうですネ。エメには悪いけれど・・。

 もちろんエメルソンは偉い。素晴らしい、本当に素晴らしい世界レベルのストライカーですよ。ただ彼には、まだまだ「両刃の剣」というネガティブ要素がつきまとっているのも確かな事実なのです。たぶん、彼の「戦術的&心理・精神的なパートナー&ヘルパー」でもある山瀬が戻ってくれば、状況は大きく好転するはずです。そして来シーズンは、セカンドステージの最初の5-6試合で魅せた、組織プレーと個人勝負プレーがハイレベルにバランスしたサッカーを、もっとパワーアップしたカタチで繰りひろげてくれる・・。いまから期待感がふくらみつづけますよ。

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 ここからは、何人かの短い個別レポート。まず鈴木啓太からいきましょう。この試合では、「前気味のリベロ」としてプレーしました。まあ、守備ブロックの穴埋めとかカバーリングにも気を遣う「前気味のスイーパー」という基本的なプレーイメージ・・。その基本タスクでも、大変に素晴らしいコンテンツを魅せつづけていた鈴木ですが、実際には「それ」だけではなく、チャンスとなったら、最前線まで押し上げたり決定的パスを演出したりと、積極的に勝負所にまで絡んでいくというリスクチャレンジ姿勢も魅せつづけくれたのです。それが実際のチャンスを演出するのだからアタマが下がる。同点ゴール場面で最初のキッカケになった永井雄一郎へのスーパーサイドチェンジパスは、確か、鈴木啓太からでした。またそれ以外でも、何度も、正確な「俯瞰ロングパス」を送り出すだけではなく、味方とのコンビネーションで最前線まで押し上げていったり、カウンターシーンに参加したり。この試合でも鈴木啓太は、「いつものように」影のヒーローでした。

 次に永井雄一郎。腰痛のトラブルを抱えていたということで、試合前は「もって数十分」ということだったらしい。それが、90分を通して闘い抜き、二度も決定的仕事をこなしてしまうのだから、こちらもアタマが下がる(同点・勝ち越しゴールのアシスト!!)。鈴木啓太に対して、永井は「日の当たるヒーロー」。それにしても凄いネ、あの突破力は。もっと「最後の仕事コンテンツ」の実効レベルが上がれば、必ずジーコも代表チームに呼び戻すに違いありません。

 その他の選手たちも、それぞれに主体的な実効プレーを披露していました。スミマセン、分析対象を広げられなくて・・。また監督会見でも、ギド・ブッフヴァルトが、原監督に対して「どうだ!」と言わんばかりのニュアンスでゲームを総括したり、右サイドへポジショニングを取る永井雄一郎への大きなサイドチェンジパスを明確に意図したりなど、選手たちの主体的なプレーや工夫を誉めたり(選手たちの主体的な思考と実行力を発展させるのが監督のメインミッション!)、はたまた(私の質問に応じて)決定力に関して興味深い見解を披露したりと、なかなか面白いハナシが出ていたのですけれど・・。まあとにかく、守備を固める相手に逆転の粘勝を飾れたことには、ものすごく大事な意味があると思っている湯浅なのです。

 さてこれで、天皇杯決勝のラジオ中継でレッズを解説できる可能性が出てきた。例によって、元旦の決勝を生中継するラジオ文化放送で解説を担当する予定なのです。とはいっても、その前にジュビロとの準決勝を勝ち抜かなければ・・。とにかく、何らかの「仮説テーマ」をもって観戦すると、楽しみが倍加すること請け合いですヨ。

 



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