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2004ヨーロッパ選手権(5)・・再び勝負強さを体感させてくれたギリシャ(スペイン対ギリシャ、1-1)・・追加ゴールが決まるまで観客も震えていた?!(ポルトガル対ロシア、2-0)・・(2004年6月16日、水曜日)

オットー・レーハーゲルに率いられたギリシャ。本当にいいですよ。攻守にわたる効果的な共同作業(有機的に連鎖しつづける局面プレー!)など、完全に一つのチームとして素晴らしい機能性を魅せつづけていました。そこでは、豊富な運動量を基盤にした高質なディフェンスこそが彼らのイメチェンの中心。それがあるからこそ、次の攻撃を活性化できるし、彼ら本来の高いテクニックを背景に、組織プレーと個人勝負プレーがハイレベルにバランスした実効ある攻めを展開できる。そんなギリシャのサッカーを見ていて、積極的な(クリエイティブな)ディフェンスこそが、次の攻撃をリードするイメージ的エネルギーを拡充するという普遍的なコンセプトを反芻していた湯浅なのです。

 まあ、オットー・レーハーゲルが、ギリシャ選手たちが展開する一つひとつのハイレベルな局面プレーを「有機的につなぎ合わせた」とも表現できるでしょう。もちろん全員の守備意識を高揚させることをベースにしてね。そのことを象徴するような、こんなシーンがありました。

 ボールを奪い返したスペイン守備ブロックが、後方で落ち着いてパスを回しはじめる・・以前のギリシャだったら、誰も反応せず、スペインのパス回しをながめるだけだったに違いない・・でも完全にイメチェンを果たした今のギリシャは、まさに別物チーム・・ボールをスペインに奪われた次の瞬間には、彼らのダイナミック守備アクションが次々と連鎖していく・・まず、左サイドでボールを持つプジョルに対して、最前線の選手と中盤の選手が「サンドイッチ・プレス」をかける・・プジョルは、まだ余裕があるから、スムーズにバラハへの横パスを出す・・でもそのステーション(バラハ)に対しても、スペインのパスを予測したギリシャ選手によって忠実で強烈なプレッシャーが掛けられていく・・ギリシャ選手たちが魅せる、複数のディフェンスアクションの連動こそが、彼らの高い守備意識の証明といったところ・・そのようにタイミング良くプレッシャーをかけられたら、いくらバラハが優秀といっても、余裕をもってプレーできるはずがない・・慌てて横にいるアルベルダへの「逃げパス」を出すバラハ・・それが勝負の瞬間だった・・この一連の「組織的プレッシャー」の仕上げを狙っていたのはギリシャのキャプテン(7番)・・彼が、その横パスを見事にインターセプトし、そのままドリブル勝負を仕掛けてスペインのディフェンダー一人を置き去りにしてしまう・・そして、スムーズなアクションから強烈なシュートを見舞う・・(残念ながらシュートはGKの正面に飛んでしまった・・)。

 ギリシャは、そんな見事な「守備イメージの有機連鎖プレー」を、試合全体を通じて繰りひろげました。彼らが、勝負強いサッカーを展開できるのも道理というものです。

 たしかに地力ではスペインの方が上。でも試合は、チーム&ゲーム戦術的にクレバーで忠実なサッカーを展開するギリシャが互角のゲームを魅せたという内容になりました。ギリシャが、立派なサッカーによって自らの手で「勝ち点1」をもぎ取った・・ということです。

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 さて次は、ポルトガル対ロシア戦についてショートコメント。

 ルイ・コスタの追加ゴールが決まるまで、スタンドに詰めかけたポルトガルファンは不安でいっぱいだったことでしょう。一人足りないロシアから「1-0」というリードを奪っている・・でも、失うモノがなくなったロシアの吹っ切れた攻めには、限りない鋭さが込められている・・実際に彼らは、何度も、ハッと息をのむような決定的シーンを演出した・・フットボールネーションのファンだからこそ、何度となく「神様のドラマ」を体感している・・だからこそ彼らの震えは止まらなかった・・というわけです。

 それにしても、この追加ゴールシーンで最終クロスを上げたクリスティアーノ・ロナウドのプレーは素晴らしいかった。交代出場した次の瞬間から、何度もタテへの突破を魅せつづけていましたからね。だから、この追加ゴールを生み出した決定的クロスは必然的な結果でした。一人足りないロシアが、ロナウドに崩されつづける右サイドの守備を強化できる余裕がなかったことも含めてネ。

 そんなロナウドのプレーを見ていて、やはり交代選手にはドリブラーがいいな・・なんて思っていました。相手守備にとっても、試合の途中から、守備イメージ的に慣れないドリブラーが急に登場してくることほど困らせられることはないですからね。

 そういえば、前述したギリシャ対スペイン戦でも、交代出場した右サイドのホアキンが抜群の実効ドリブルを披露していたっけ・・。彼の登場によって、確実にスペインの攻めに強烈なアクセントがつき、危険度が倍増しましたからね。やはり「切り札」はドリブラーが一番。もちろん、威力のあるスピードドリブルの能力が高いだけではなく、どんな状況でも、ドリブル突破にチャレンジしていけるだけの意志の強さも必要ですがね・・。

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 さてこれで、A組の最終節が面白くなった。もちろんポルトガル対スペインによる決戦のことですよ。




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