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2004ヨーロッパ選手権(7)・・中途半端なラインコントロールが致命傷だったブルガリア(ブルガリア対デンマーク、0-2)・・こんなにバランスの取れた攻めを魅せるイタリアは久しぶり(イタリア対スウェーデン、1-1)・・(2004年6月18日、金曜日)

ブルガリア対デンマーク。内容的にもそんなに見るべきところがなかった地味な対戦でしたが、ちょっとしたポイントがあったので短くコメントすることにしました。テーマは、二試合つづいた、ブルガリア最終ラインの不統一アクション。

 第一戦でスウェーデンにボロボロに最終ラインを崩されたブルガリアでしたが(5-0でしたっけ?)、デンマークとのゲームがはじまってすぐに最終ラインのアクションに、まったくといっていいほど統一感がないなど、第一戦で明確に見えていた課題が修正されていないと感じたのです。だから簡単に触れておくことにしたという次第。

 ラインコントロールにしても、ブレイクポイントにしても・・。もちろん相手ボールホルダーに対するチェイス&チェックアクション(守備の起点)や、その周りで次のボール奪取を狙う守備アクションまでは、まあまあ連動しているのですが、それらの中盤ディフェンスをベースにした(相手チームのボールの動きを中心にした)最終ラインのプレーがうまく連鎖しない・・。

 何度、最終ラインに並ぶブルガリア選手たちの「間」をデンマーク選手が抜け出していったことか・・それもまったくオフサイドにならずに・・。これでは、ブルガリアチームの守備戦術が機能不全に陥っているとしかいいようがない。とにかく最終ラインのディフェンスは中途半端の極み。もっとメリハリをつけてラインを上げ下げしなければならないし、ラインブレイク(ラインを崩してマンマークへ移行する瞬間)の判断にしても、その後のマーキングにしても統一されたイメージが基盤になければならないのに・・。

 そんな一体感のない最終ラインのプレーが、スウェーデン戦で大敗を喫した原因だったのに、それがまったく修正されていない。この試合でのデンマークが、注意深く(ちょっと消極的に)ゲームに入っていったから、最初の頃は目立たなかったけれど、時間が経つにつれて、ズバッ、ズバッと、トマソンやサンといったフォワード選手たちの決定的フリーランニングとスルーパスがうまく重なり合うようになっていくのです(まあゴールにはならなかったけれど)。もちろん、ブルガリア最終ラインの中途半端なラインコントロールの穴を突いてネ・・。

 そんなふうに何度も崩されているにもかかわらず、ブルガリア最終ラインは、最終勝負のラインコントロールとブレイクポイントを修正できない・・。まあ、数日で「基本的なやり方」を大きく変更するのは不可能だけれど、相手は、「フリーランニングの鬼」トマソンを擁するデンマークのなのだから、少なくとも、ラインブレイクを早めにしたり、最後まで徹底マンマークをつづけなければならないゾーンを決めるなど、最終ラインのプレーをより明確に規定する「ゲーム戦術」を徹底できたはずなのに・・。

 まあそんなだから、ブルガリアが、案の定ともいえるディフェンスラインの穴を突かれた2失点でトーナメントから姿を消す結果になったのも自然な流れだったということでしょうかね。スピーディーになっている現代サッカー。グラウンド上のプレーや試合中のベンチワークだけではなく、グランウド以外の様々な作業も含めて、とにかく柔軟でスピーディーにコトを進めていかなければならないのです。

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 それにしても、前の試合とは段違いにエキサイティングな勝負マッチになりましたね。特に、引き分けてしまったとはいえ、イタリア攻撃の実効レベルが、デンマーク戦と比べて大きく高揚したと感じていました。でもこの試合にはトッティーはいない・・さて・・。

 後方でゲームを組み立てるピルロ・・チャンスメイカーのカッサーノとデル・ピエーロ・・そんな才能たちに、ガットゥーゾやペッロッタといった汗かきタイプがうまく絡み合う・・ってな感じですかね。とにかく、ビックリさせられるほど、イタリアの攻めに勢いが乗っていたのですよ。ボールなしの活発なフリーランニングをベースにした組織パスプレーが軽快に回りつづけ、そこに、ザンプロッタとパヌッチの両サイドバックが繰りひろげるオーバーラップ勝負が効果的に絡んでくる・・。

 特に、あまり目立たないけれど、ペッロッタの攻守にわたるクリエイティブな汗かきプレーには感じ入っていました。あくまでもピルロやカッサーノ、デル・ピエーロ等のサポートをメインにしながらも、ココゾのシーンでは、積極的にボールがないところで動きまわって決定的な「穴突きコンビネーション」のコアになったりする・・また右サイドバックが吹っ切れたドリブル勝負に入れるのも、ペッロッタの守備サポートプレーに対する信頼があるからこそでしょう。彼は、ガチガチ当たる猟犬タイプのガットゥーゾとはひと味違うスマートな守備的ハーフ。汗かきのガットゥーゾとペッロッタが、攻守にわたってうまく機能しているからこそ、ピルロやデル・ピエーロ、カッサーノたちの才能がうまく活かされるというわけです。

 そんなことを書きながら、アタマの片隅で考えていましたよ・・「チームとしての」攻めのリズムは、トッティーがいるときよりも確実に良くなっている・・さて・・。

 たしかにトッティーは、個の勝負では強みを発揮するけれど、組織プレーのリーダーとしては、シンプルリズムのプレーに大きな課題を抱えていますからね。彼がボールをもったときは、どうしても攻めのリズムが「単調」になることの方が多いということです。もちろんボールをもったトッティーが、局面プレーで効果的な変化を演出できれば別だけれど、そんなクリエイティブなシーンが出てくる「頻度と実効レベル」は、この試合でイタリアチームが魅せつづけた、組織プレーと個人プレーがうまくバランスした組み立てによる変化の演出よりも確実に劣りますからネ。

 もちろん監督のトラパットーニも、「そのこと」を熟知しているに違いない。誰と誰を組み合わせれば組織プレーと個人勝負プレーがうまくバランスさせられるか・・とはいってもそこには、ゲーム戦術的に、個の才能を前面に押し出すようなメンバー構成を送り出すというオプションもある・・。

 これで、イタリアを観察するという楽しみが増えたというものです。でもグループ「C」の最終戦は、やはりデンマーク対スウェーデンを観るしかないですけれどね。それにしてもスウェーデンは、これまでの例に漏れず、本当に良い「チーム」を送り込んできました。




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