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2004ヨーロッパ選手権(14)準々決勝・・スウェーデンが展開した粘りディフェンスや、揺動しつづけた勝負の行方など、極限テンションが支配するエキサイティングゲームでした・・(オランダ対スウェーデン、0-0、PK戦_5-4)・・(2004年6月26日、土曜日)

大きな波のように、チーム全体が攻守にわたってカタチを変えながらも高質なバランスを保ちつづけるオランダ。美しく調和しつづけるムーブメント・・なんて、思わず気取った表現をしたくなるほど魅力的なオランダのサッカーです。

 それに対し、強固な守備ブロックをベースに、全員が汗かきといった忠実なアクションで鋭いカウンターを繰り出してくるスウェーデン。その矛先は鋭い、鋭い。

 総合力では明らかにオランダの方が上。要は、個の才能レベルでオランダに一日の長があるということです。個人、グループ、チームなどの戦術的なレベルが同等の場合は、個のチカラの差が、ゲームの流れを左右するというのが原則ですからね。この試合でも、チカラのあるオランダが、全体的な流れを牛耳っていました。セードルフ、ダービッツ、コクー、ロッベン、ファン・デル・メイデ、そしてファン・ニステルローイ等々。とにかくオランダには、きら星のごとく才能がひしめいている。

 そんな隣国の代表チームを見ながら、ドイツのコーチ連中は、「オランダサッカー界の組織は、とにかく柔軟だよ。それが、クリエイティブな選手たちがどんどん輩出してくる背景にあるんだ。それに対してオレたちドイツの組織体質は、まさに硬直しちゃっている。協会には、昔の名前で出ています・・ってな連中が幅を利かせちゃってるしな。今回の大会じゃ、イングランドも大きく発展していることを証明したよな。その中心にいたのが、スウェーデンのエリクソンなんだぜ。あのイングランドでさえ、外からの風という刺激を必要としていたんだ。そして、硬直した組織体質を改善しながらサッカーのレベルを上げていったんだ。それに対してオレたちドイツは・・。とにかく、良い意味でも悪い意味でも成功の歴史が長すぎたんだよ。だからヤツらは、常に、過去の栄光を追い求め、世の中の変化に柔軟に対応しようとしなかった・・」なんて、グチが止まらない。もちろんそれは、今回の予選結果を受けた後のコメントですけれどネ・・。

 とにかくオランダは、ドイツのコーチ連中が羨むほど高質なタレントを擁しているということです。あれほど高い才能に恵まれた連中が、まったくサボることなく、攻守にわたって、ボールなしでも全力でプレーをつづける・・もちろんスタートラインは、自分から積極的に仕事を探しつづけるディフェンス・・それを私は、「本物の守備意識」と呼ぶのですが、それがベースになっているからこそ、縦横無尽のポジションチェンジなど、積極的なリスクチャレンジプレーもどんどんと出てくる。それこそ、次の守備に対する相互信頼の深さ・・というわけです。

 あくまでもシンプルに人とボールを動かしながら、ココゾの場面では、組織パスプレーと単独ドリブル勝負がハイレベルに連鎖しつづけるオランダ代表チーム。やはり、彼らの戦術的な発想は、フランスやアルゼンチン、またチェコと並んで世界の頂点にある・・なんて思っていました。

 とはいっても、勝負という視点でゲームの流れを観察した場合、スウェーデンにもかなりの存在感があります。要は、ココゾの勝負場面における押し上げに、レベルを超えた勢いがあるということです。だからこそ彼らが繰り出してくるカウンター気味の仕掛けには、高い危険性が伴っているのです。もちろん次の守備にしても、攻守の切り換えが抜群に早いし、全員に高い守備意識が備わっているから、いくら人数をかけて攻め上がったとしても、そこでの人数&ポジショニングバランスが崩れることがない。

 とにかくゲームは、両国の特徴がフルに発揮されるという見所豊富なぶつかり合いになりました。もちろん個の能力に差があるから、決定的チャンスの量と質ではオランダに軍配が上がるけれど・・。

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 ダイナミックに拮抗していくゲーム展開。後半が深く入り込むにつれて、互いに仕掛けの意志エネルギーレベルが高揚していったと感じられました。相変わらずチャンスの質と量ではオランダが主導してはいますが、スウェーデンが展開する「粘りの仕掛け」も、徐々に危険度をアップさせていったのです。

 とにかくスウェーデン選手たちは、最後まで諦めない。守備ブロックにとっては、最後まで諦めずに、ボールがないところで全力で走り込んだり、しゃにむにペナルティーエリアへ突入してくるパワードリブルといった泥臭い仕掛けを繰り出されることほどイヤなものはありませんからね。

 ところで、後半16分にでダービッツがヘイティンガと交代したのですが、私はちょっとクビをかしげていました。まあヘイティンガを下げ、コクーを上げるという腹づもりなのは分かりますが、それでは、仕掛けプロセスのダイナミズムを演出できるプレーヤーがいなくなってしまう・・。ダービッツの強引なドリブル突破は、オランダにとって大きな武器ですからね。さて・・なんて思っていたら、案の定、オランダチームの仕掛けの勢いが減退し、選手たちの足が止まり気味になっていったのです。

 そのプロセスを見ながら、セードルフのボールがないところでの消極プレーに対するフラストレーションが倍加していきました。あれほどの高い能力を持ち合わせているだから、もっともっと積極的に、強引にプレーしたらいいのに・・。もちろんフランスワールドカップやユーロ2000当時からは進歩しているけれど、それでもまだまだ不満が先に立つのですよ。何故もっと積極的に走ってボールに触らないんだ・・何故もっと積極的に勝負を仕掛けていかないんだ・・。

 それにしても、スウェーデンの粘りディフェンス。時間が経過するにしたがって、その凄さをより深く体感できるようになっていきます。前線からのチェイス&チェック、チャンスを狙った協力プレス、周りでの次のボール奪取勝負などなど、とにかく忠実でクレバーな実効ディフェンスを展開するスウェーデンなのです。誰一人として「寝ている」選手がいない。そんな真面目なプレー姿勢は彼らの伝統ともいえるもの。それは、北欧のリアリスティック(現実主義的な)サッカーなんて呼ばれるのですよ。何せスウェーデンは寒い国ですからね。夢を見ていたら凍えて死んでしまう・・。

 そして試合は、互いにチャンスを作り出しながらも決められずに延長戦に突入していくことになります。

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 ところでシルバーゴール方式。いいですね。やはりサッカーは、「現象」で終わるのではなく、「時間」で区切るのが自然だということです。私も100%アグリーです。ゴールデンゴールで瞬間的にゲームが終わっちゃうのは、あまりにも心理・精神的なダメージが大きいという意見が多かったというのも頷ける・・。

 延長でも、オランダのチャンスメイクがスウェーデンを上回っています。セットプレーでも、セードルフの才能が活かされるし、しっかりとイメージシンクロも出来ている。とはいっても、スウェーデンが魅せる粘りの仕掛けにも、それまで以上の勢いが乗ってくるようになっている(ラーションの振り向きざまのシュートやリュングベリの中距離シュートは本当に惜しかった・・)。

 ということで延長もエキサイティングな見所満載でしたよ。一瞬たりとも目を離せない・・こうなったら、もうどちらに勝利の女神が微笑むのかまったく分からない・・フ〜〜ッ・・。

 でも結局ゴールは入らず、ゲームはPK戦に突入してしまったという次第。それがはじまる前、「もうこうなったら、寒い国のリアリストたちのモノだな・・何たってヤツらにとっての日常は、常にサバイバルの繰り返しなんだから・・精神力が違う・・」なんて思ったものです。そして・・サッカーの理想型へ向かうベクトルという視点では、確実にオランダの方が優れているから彼らに上へ行って欲しかったんだけれど・・なんて、PK戦がはじまる前に、そんなことまで書いていました。でも実際は・・。

 サッカーの神様、ありがとう。やはり我々コーチにとっては、内容と結果が一致してくれることほど心安らぐ現象はないのですよ。いつも書いているようにネ。とはいっても、スウェーデンが展開したねばり強いサッカーも感動的ではあったし、勝負的には、彼らが準決勝に駒を進めてもまったくおかしくないという試合内容だったことも確かな事実ではありました。まあ、それもまたサッカーということです。




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