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2004ヨーロッパ選手権(16)準決勝・・内容的にも、地元スピリチュアルエネルギーを一身に受けて最後まで全力で闘い抜いたポルトガルの完勝でした・・(ポルトガル対オランダ、2-1)・・(2004年6月30日、水曜日)

濃い内容が詰め込まれた凄い試合・・両チームともに人数をかけて攻め上がるから面白いしエキサイティング・・サスガに世界頂点の勝負マッチ・・もちろんそれは、両チームともに世界トップクラスの才能を抱えているから・・とはいっても、攻めを組み立てていく際の基本的発想には違いが見える・・。ゲームの流れを追いながら、そんなことを考えていました。組み立てでの基本的な発想の違い?? そうです、そのポイントで、両チーム選手たちのイメージに微妙な違いがあるのですよ。

 攻撃の目的はシュートを打つこと・・ゴールは結果にしか過ぎない・・というのが原則ですが、それに対し、シュートへ至るまで(最終勝負を仕掛けていくまで)のプロセスでの当面の目標イメージは、仕掛けエリアにおいて「ある程度フリー」でボールを持つことです。要は、「仕掛けの起点」を演出することが組み立てでの目標イメージになるということです。

 両チームの間には、その「起点」を演出するまでのプロセスイメージに微妙な違いがある・・。オランダが、基本的に人とボールの動きで演出しようとするのに対し、ポルトガルは、どちらかといえば「単独アクション」で達成していこうというイメージ・・ってなところかな。ある程度フリーでボールを持つ選手(仕掛けの起点)は、パスでも演出できるし、ドリブルで相手を抜いても作り出すことができるわけだけれど、前者をメインイメージにしているのがオランダで、後者がポルトガル・・ってなことです。

 また最終勝負を仕掛けていくイメージもちょっと違う。やはりポルトガルは、「個の才能」を前面に押し出すように、ドリブルや「タメとスルーパス」で最終勝負を仕掛けていこうというイメージが主体。それに対しオランダは、あくまでも組織パスプレーと個のドリブル勝負をうまくバランスさせようとする。そんな微妙な違いも、エキサイティングなゲーム内容に華を添えていたというわけです。

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 ちょっと地味な書き出しになってしまいましたが、ここで例によって、ゲーム展開の現象と背景コンテンツ&ファクターを簡単に追っていくことにします。

 立ち上がりは、もちろんポルトガルペース・・地元のスピリチュアルエネルギーを一身に受け、前からガンガンと積極ディフェンスを展開しゲームを掌握していく・・でも彼らの仕掛けは、前述したように、ドリブルと、タメ&スルーパスという「個の勝負」が主体だから、オランダ守備陣に、ピタリ、ピタリと勝負所を抑えられてしまう・・要は、最終勝負イメージに変化が乏しいということ・・

 ・・対するオランダも、組織的に攻め上がるけれど、どうもうまく人とボールの動きが連鎖しないことで最終勝負を仕掛けていくシチュエーションもうまく演出できない・・それには、両サイドのロッベンとオーフェルマルスの仕掛けドリブルがうまく抑えられているということもある・・特にロッベンが、ポルトガル右サイドバックのミゲルにうまく抑えられている・・また、前回の試合でも指摘したように、仕掛けのコアとして機能すべきセードルフが、持てる才能を活用し切れていない・・ということで試合は、ダイナミックな攻め合いにはなっているけれど、それも「意志レベル」までで、実際の現象面では、両チームともにチャンスメイクはうまく出来てないという、ダイナミックな膠着状態になっていく・・

 ・・でも徐々に、ポルトガルが繰り出す、個の勝負を主体にした仕掛けが機能しはじめる・・それは、あくまでも「個の勝負が主体」とはいっても、そのプロセスのなかで、徐々に人とボールの動きが活性化してきたからに他ならない・・ボールが、安全な横パスだけではなく、ボールがないところでの選手たちの動きの活性化をベースにして、タテへも動くようになったのだ・・そんな改善があったからこそ、より「フリーな状態」でドリブル勝負に入っていけるようにもなった・・特にフィーゴとクリスティアーノ・ロナウドが繰り出す勝負ドリブルが切れまくっている・・また彼らをうまく操る(タメから、良いカタチで彼らへパスを供給しつづける)デコのチャンスメイクプレーも、時間の経過とともにアップグレードしていったと感じられた・・そしてポルトガルが、決定的チャンスを連続して作り出すようになっていく・・

 ・・でもポルトガルの先制ゴールは、セットプレーから・・デコのコーナーキックを、後方からうまく走り込んだロナウドが、ヘディング一発・・前半26分のこと・・後半も、前半同様に、ポルトガルが実質的なゲームペースを牛耳るという展開・・ポルトガルの守備ブロックは本当に堅く強い・・というか、全員の全力ディフェンスが目立つといった方が正しい表現かも・・前線からのチェイス&チェック、協力プレス、次のインターセプト&アタック狙い、ボールなしの忠実マーク等々、とにかく選手たちの守備意識と運動量が抜群・・まさに、地元のスピリチュアルエネルギーの為せるワザ・・そんなポルトガルのダイナミック守備によって、オランダは、まったくといっていいほど持ち味を出せない・・パスの出所を素早く抑えられてしまうだけではなく、パスレシーバーもピタリとハードマークされてしまう・・また仕掛けの起点であるロッベンやセードルフも、まったくといっていいほど機能できない・・そしてポルトガルは、チャンスを見計らった鋭いカウンターを繰り出していく・・ゲームは、完全にポルトガルのベースにはまっていった・・

 ・・そんななかで、コーナーキックからボールを持ったポルトガルのマニシュが、左サイドからのスーパーゴールを決めてしまう・・シュートされたボールは、美しい弧を描きながら、オランダゴールの右隅へ決まる(右ポストを直撃してゴールイン!)・・後半13分のこと・・これでポルトガルの「2-0」・・後半19分には、ポルトガルの自殺点でオランダが「2-1」と迫るけれど、実質的な内容では、彼らが点を入れられる雰囲気はほとんどなかった・・それも、マッカーイ、ファン・ホーイドンクを入れ、高さを活用したパワープレーを仕掛けていくという展開になったにもかかわらず・・

 ・・私は、ポルトガル守備ブロックの、忠実、クリエイティブ、スキルフル、ダイナミック&パワフルなプレーに大拍手を送っていた・・特に守備的ハーフのコスチーニャとマニシュは特筆・・彼らは、守備に入ったときに、デコやフィーゴ、ロナウドといった才能達を「うまく」守備へ参加させられる刺激能力も持ち合わせているようだ・・

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 ということでこの試合は、内容的にも、地元スピリチュアルエネルギーを一身に受けて最後まで全力で闘い抜いただけではなく、決定的チャンスの量と質でも圧倒したポルトガルの完勝ということになりました。

 負けてしまった高質チームのオランダ。以前は、フランスやアルゼンチンとともに、様々なファクターが素晴らしくバランスした世界最高の(サッカー史に残る)ハイレベルサッカーを展開していたのだけれど・・。まあ、フランスと同じように、寄る年波には勝てないということですかね。でも、ロッベンとかファン・デル・ファールトとか、オランダの将来を担う才能ある若手は着実に育っているから、これからが楽しみじゃありませんか。

 これで決勝は、近年にない盛り上がりを呈することになりました。だから、めくるめく歓喜と奈落の落胆が交錯するドラマのテンションも極限まで高まりつづける・・。さて、どんなことになるのだろう・・。




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