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チャンピオンズリーグ・・徹底サッカーのミランを、最後は「個の才能」がうち破った・・(2004年11月3日、水曜日)

この対戦カードは、いま現在の世界最高峰マッチの一つに違いありません。バルセロナ対ミラン。

 展開は、ホームのバルセロナがボールを「見かけ支配」し、ミランが、その間隙をぬった蜂の一刺しをイメージしつづける・・というもの。まあ、ミラン守備ブロックの安定度からすれば、完全にミランペースの試合だと言えるでしょう。たしかに前半5分には、右のベレッチからのクロスをデコが惜しいヘディングシュートを放ったけれど、それ以外では、押しつづけている流れにしてはウラを突ける可能性すら感じられないという、バルセロナにとっては難しい展開なのです。

 前節の同じカードでは、ミランのホームということで、全体的にミランがゲームを支配するという流れでした。ただしミランの場合は、ゲームを支配しながらも、最後の仕掛けは限りなくカウンターに近い急激テンポアップをイメージしています(前回のレポートを参照してください)。それに対しこのゲームでは、バルセロナが積極的に攻めてくるということで、守備ブロックを固める待ちのプレー姿勢でオーケーですからネ、やりやすいことこの上ないでしょう。

 案の定、押し上げながらも攻めあぐむバルセロナに対し、何度も実効あるカウンターを仕掛けていくミランという構図になっていました。ミラン選手たちが魅せる、カウンター状況での「仕掛けイメージのシンクロ状態」は、本当に高質です。先制ゴールのシーンでは、自軍ハーフの真ん中でボールを持ったピルロが、振り向きざま、最前線の決定的スペースへ素早く一発ロングパスを送り込みました。もちろん最前線のシェフチェンコは「同時に」爆発スタートを切っている。もちろんピルロは、一瞬でもシェフチェンコを見たはずだけれど、あの仕掛けリズムを見ていると、もしかしたらピルロは、シェフチェンコのアクションを見ていなかった(見る必要もなかった)のかもしれない・・なんてことまで思ってしまいます。それほどミラン選手たちの仕掛けイメージが完璧に連鎖しているのです。

 ところでミランの堅牢な守備ブロック。相手にボールを奪われた次の瞬間には、シェフチェンコ一人を残して全員がスッと守備に入ります。もちろんポジショニングバランス・オリエンテッドなクリエイティブ守備。そこでは「抑え」と「読み」が、本当に美しいハーモニーを奏でるのです。

 相手ボールホルダーに対するチェイス&チェックは忠実。もし「そこのプレー」が少しでも停滞したら、すぐにでも二人目、三人目というプレスの輪が出来上がります。またパスコースもしっかりと制限されているから、どのゾーンで協力プレスを掛けていくのかというイメージもしっかりとシンクロしつづける。彼らの守備は、まさしく有機的なプレー(イメージ)連鎖の集合体という表現がふさわしい高質なアクションなのです。やっている選手たちは楽しいに違いありません。何せ、相手の攻撃プレーに振り回されるのではなく(リアクトするのではなく)、自分たちが主体になって、相手の攻撃フローを「追い込んで」いくのですからネ。それも、あれだけの才能が集まったチームだからこそできるディフェンス。もちろん、彼らの主体的な守備意識を今でも高揚させつづけているカルロ・アンチェロッティー監督にも拍手です。

 こんなスーパー守備ブロックに対抗していかなければならないバルセロナ。でもどうも組織パスプレーがうまく機能せず、どうしても最後は「個の勝負」頼りになってしまう。仕掛け勝負パスのキッカケになるべき「ボールがないところでのアクション」がことごとく抑えられてしまうことで足が止まってしまうのだから、それも道理。

 ただ1-1で迎えた後半25分過ぎあたりからは、ホームゲームを引き分けるわけにはいかない・・と、バルセロナの「全てのアクション」が活性化していきます。常に次のパスをイメージしながら素早くボールを扱い、シンプルなパスを回しつづける・・パスを出した後のパス&アクションの勢いも何倍にも高揚する・・パスの方向も、それまでの横パスよりもタテパスが多くなる・・そんな積極アクションを積み重ねることで、バルセロナの人とボールの動きが何倍にも活性化してくる・・もちろん彼らの仕掛けアクションのほとんどは、ミランのクレバー守備に抑えられてしまうけれど、それで気力が萎えて足が止まってしまうのではなく、何度も、何度も、ねばり強く仕掛けコンビネーションを繰り出しつづけるバルセロナ・・それこそダイナミズムの連鎖・・残り15分というタイミングで、バルセロナのライカールト監督は、中盤守備の重鎮であるマルケスに代えて、ストライカーのラーションを送り込む・・そのことで、攻めにおける、ボール絡み&ボールなしのアクションダイナミズムが高揚しつづける・・たしかに最後は、ロナウジーニョのこの才能によって決勝ゴールがたたき込まれたけれど、ロナウジーニョへボールが回され間でのプロセスがダイナミックだったからこそ、ロナウジーニョに対するマークがちょっと甘くなっていたという背景を無視するわけにはいかない・・等々。

 とにかく、攻撃でも守備でも、組織プレーでも個人プレーでも、さまざまなタイプの世界一流のプレーが観られてハッピーな湯浅でした。

 さて明日は、バイエルン対ユーヴェ、ディナモ・キエフ対レアル・マドリーを「まず」レポートする予定です。では、例によって乱筆・乱文・誤字・脱字、失礼。

 



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