聞くところによるとディナモ・キエフの監督は、「ウチには基本的なポジションなんてない・・全員が守り、全員が攻めるのだ・・」なんてことを言っていたとか。そのコンセプトについては、まさにアグリーですよ。私のオリジンともいえる「闘うサッカー理論(三交社)」でも、ポジションなしのサッカーこそが理想だ!なんて宣言していますからね。
要は、主体的な守備意識や互いのポジショニングバランスに対する鋭い感覚こそが大事・・決まり事が多すぎる場合、確実にサッカー内容が減退する・・イレギュラーするボールを足で扱うという不確実性ファクターてんこ盛りということで、最後は自主的な判断と決断で勇気をもって自由にプレーせざるを得ないのがサッカーなのだから・・とはいっても選手の能力には限界があるから、妥協の産物としてチーム戦術が出てくる・・ただし、それでもコーチは、攻守の目的をしっかりと見つめたリスクチャレンジなど、「クリエイティブなルール破り」も奨励しなければならない・・戦術と「創造的なルール破り」という背反ファクターをマネージする微妙な「剣が峰バランス感覚」もまた、コーチに必要な資質の一つ・・それがあってはじめて選手たちを発展させ、魅力的なサッカーを展開することができる・・なんてネ。
またまた回り道をしてしまって・・。とにかく、素晴らしくダイナミックな試合展開を心から楽しんでいた湯浅だと言いたかったわけです・・アハハッ。まあ、実質的なコンテンツでは、やはりレーバークーゼンに軍配が上がるけれどネ。
レーバークーゼンの守備ですが、チマタでは不安定だとか言われているし、実際、ブンデスリーガでも失点が多い。それには、ノヴォトニー、ホッキ・ジュニオール、ジュアン(ホアン)という最終ライン選手たちの「個の能力」がものすごく高いからという側面もありそうです。要は、彼らの守備力に頼る味方が「攻め上がり過ぎ」て、相手の効果的なカウンターを食らってしまう(いくら能力が高くても、人数が足りなかったら難しい!)ということ。もちろん、積極的に仕掛けていくというコンセプトは正しいし、そうあるべきだけれど、攻守のメカニズムにおいて、「互いに使い・使われる」という機能性を支配するバランス感覚がちょっと減退気味だということですかネ。この試合でも、両サイドのシュナイダーとバビッチ(普段はプラセンテ)、守備的ハーフのラメローも、中盤の攻撃的ハーフ(ポンテとフライヤー)やツートップ(ベルバトフとボローニン)までも追い越して、どんどん決定的スペースへ飛び出して行っちゃいますからネ。もちろん、攻撃的ハーフやトップ選手も積極的に戻ってはくるけれどネ・・。ここでもテーマは「剣が峰バランス感覚」ということです。まあ、この「メカニズム」については、そのうち「スポナビでの連載」で書くことにしますので・・。
結局ゲームは「3-0」という、「見かけ」ではレーバークーゼンの圧勝ということになってしまいしまた。でもゲームコンテンツは、まったく違うモノだった。とにかく私は、ディナモの吹っ切れた「ポジションなしサッカー」に対し心から拍手をおくっていましたよ。もちろん、ここまで選手たちのマインドを解放したサボー監督に対してもネ。
互いに、全員守備&全員攻撃という「トータル・フットボール」を明確にイメージしていた・・だからこそゲームが、高質なコンテンツとともに最高の盛り上がりを魅せた・・。でもこのような展開になったら、やはり、ホームゲームであるということも含め、選手個々の「能力レベル」で一日の長があるレーバークーゼンにゲーム形勢が傾いていくのも道理・・ということです。
さてこれで、バイエルン・ミュンヘン、ヴェルダー・ブレーメン、バイヤー・レーバークーゼンという「ドイツ・トリオ」の全クラブが決勝トーナメントに進出しました。正直、嬉しいですよ。その嬉しさには、情緒的なモノだけではなく、この三チームが、国内リーグでもガンガン調子を上げているという事実も含まれます。彼らはもっと良くなる・・そしてヨーロッパのサッカーシーンで、ドイツブランドの存在感を引き上げてくれる・・。そんな期待が高まりつづけるというわけです。期待しましょう。