そういった場合どうなるかといったら・・まずボールウォッチャーになってしまう・・そして局面プレーの、それも攻撃側だけのプレーを見ながら、そこでのボール扱いを表面的に楽しむだけになってしまう・・そして、組織パスプレーが決まってウラスペースを攻略したときにハッと気づき、「いまのパスレシーバーはどんな動きプロセスであのスペースに入ってきたんだ?」とか「このシーンでの、ボールがないところでのマーキングはどうなっていたんだ?」とか、サッカーの本質的なコトが気になりはじめる・・まあサッカーには色々な見方があるということなのだけれど、やはり、ボールがないところで勝負が決まる(もちろん攻守にわたって!)というサッカーの本質的コンセプトまで観察しなければつまらない・・そんなサッカー観戦のツボを思い出す・・なんていう体たらくなのですよ。フ〜〜ッ。
それにしても、「ボールウォッチャー」に徹したサッカー観戦も面白いし、楽しい。いや、そう感じていたのは、観はじめたのが、ペルー対アルゼンチン(ペルーのホームゲーム・・アルゼンチンが3-1の勝利!)だったからなんだろうな・・もう一つのW杯ヨーロッパ予選、オーストリア対イングランド戦(オーストリアのホームゲーム・・結局2-2のドロー!)じゃ、「局面でのエスプリプレーが効かず、ギゴチない組織パスプレーやパワープレー」ばかりが目立っていたから・・もちろん、ペルー対アルゼンチン戦では、特にアルゼンチンが魅せつづける、広く、素早いボールの動き(組織パスプレー)も見事だったけれど、それでも、その「行間」で展開されるエスプリ個人技に目を奪われ、その残像が尾を引きつづけていたという次第なのです・・それにしてもアルゼンチンは才能の宝庫・・今回のオリンピックでも証明したとおり、世界最高峰の「才能」連中を、それこそ際限なく輩出しつづる・・それも、組織プレーマインドも十分に備えたテクニシャンたち・・そんな「本物の才能」連中が、攻守にわたって、組織的な汗かきプレーにも精進する・・美しく、強いはずだ・・今回のペルー戦では、オリンピックチームから8人が参加しているということだけれど、アルゼンチンには、バランスの取れたサッカー文化が浸透していると感じさせてくれる・・。
この二つの2006ドイツワールドカップ地域予選を観ていて、恥ずかしながら、やはりサッカーの本質的な魅力はテクニックにあるんだよな・・なんて再認識させられていた湯浅だったのです。たしかにどんなサッカーでも、最終勝負のほとんどは「ボールのないところでのプレー」によって決まってしまうけれど、それでも、そこに至るまでのプロセスや、最終勝負の「内容や質」は、やはり「個のチカラ」に大きく左右されるという事実があるというわけです。まあ、当たり前のことだけれど・・。要は、アルゼンチンのサッカーが、あまりにもスピーディーで、テクニカルで、美しく、力強く・・なのですよ。個人プレーと組織プレーが、これ以上ないというところまで高質にバランスしたサッカー。
組織プレーと個人プレーの高質なバランスというテーマは、美しさと勝負強さのバランスというテーマと、その要素において多くを共有しています。やっぱりコーチにとって永遠のテーマは、(すべての要素の)バランスということなのですよ。もちろんそれには、コーチング能力というテーマも含まれます。バランス(感覚)。この二つのゲームを観ながら、そんな奥深いテーマにも思いを馳せていた湯浅でした。
とにかく代表レベルでは、アルゼンチン、フランス、チェコ、オランダなど、様々な要素が高い次元でバランスしている国々が世界サッカーをリードして欲しい(結果も含めた存在感を発揮しつづけて欲しい)と思っている湯浅なのです。もちろんブラジル、イタリア、イングランド、ドイツ、北欧諸国など、自らの「持ち味」を継承しつづける伝統国が、世界サッカー地図をカラフルなものにしているのも確かな事実だけれど、長い目で見たら、やはりサッカーは「一つのベクトル」に収斂されていくことになるということなのかもしれません。
ナビスコカップの他の試合も、ビデオを観ながらレポートしようと思ったけれど、アルゼンチンのスーパーサッカーを見せつけられて、ちょっとモティベーションが萎えてしまった湯浅だったのです。面目ない・・。