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ヨーロッパの日本人・・今週は、小野伸二と中村俊輔です・・(2004年10月18日、月曜日)

フム・・どうも脳内スクリーンに描写されているはずのイメージが、うまくグラウンド上のプレーとして投影されないな・・。守備的ハーフのコンビでもあるボスハールトとともに中盤の底からゲームを組み立てるだけではなく、たまには最前線までも追い越して最終勝負ゾーンへ入り込むといった積極プレーを展開しようとする小野伸二。でも実際のパフォーマンスは、ちょっと減退気味。たしかに、守備でも、攻撃においても、意図するプレーのイメージ自体は高みで安定していると感じられるけれど・・。

 まあ、ワールドカップ予選オマーン戦による疲れということでしょう。ボールを持ったときのディストリビュータープレー(ボール分配プレー)や決定的なパス出しなどのボール絡みプレーは例によって高質だし、全力で最前線のカイト等を追い越すフリーランニングなどにも強い意志は感じるけれど、どうもそのダイナミズムが継続しないし、ボールを奪い返してからの、自分がコアになった仕掛けフローを演出できているわけでもない・・。

 この試合では、ボール奪取から素早く直線的に仕掛けていくというプレーでは、小野のパートナーであるボスハールトの方が断然目立っていました。また後方からのゲームメイクという視点でも彼に軍配が上がる。要は、ボスハールトの方がよく動いているし、ボール奪取でも存在感が高いということです。だから、おのずと彼にボールが集まるのも道理。またボールを持つボスハールトは、小野への「譲りパス」はほとんど出さず、ほとんどケースで自分がコアになったゲームメイク(仕掛けゾーンの展開プレー)を遂行していくというわけです。

 小野については、勝負イメージを基盤にした全力ダッシュや仕掛けフリーランニングなどの「質」はいいのだけれど、どうも量がネ・・。疲れによる(?!)無為な様子見シーンなど、どちらかといえば気抜けシーンの方が目立っていた小野伸二ということです。まあそんな日もあるということなのだけれど、だからこそ、いつも気になっている、守備におけるボール際の勝負の「緩さ」が気になって仕方なくなってしまって・・。

 前述したように、ボスハールトは、実際に何度もボールを奪い返せているし、タマ際では必然の激しさもある・・それに対し小野は、たしかに読みプレーやカバーリング、ボールなしの穴埋め作業などはいいのだけれど、どうもタマ際勝負プレーが淡泊に過ぎ、彼自身がボールを奪い返すというシーンが少なすぎると感じられる・・。まあいつも書いていることなのですが、この試合では、全体的なプレーコンテンツがちょっと減退気味だったからこそ、そのポイントが、より際立ってしまったということなのかもしれない・・。

 そんな不安なプレーを観ながら、私の思いは日本代表へ・・。中盤ディフェンスでの「猟犬タイプの不在」という不安ポイントが、またぞろアタマをもたげてきたというわけです。まあ、ミランのガットゥーゾとか、2002ワールドカップでの戸田和幸、ジーコジャパンでは遠藤保仁のようなタイプかな・・。言葉を換えれば「中盤ディフェンスでの、汗かき起点プレイヤー」ともいえますかネ。その忠実でダイナミックなチェイス&チェックプレーによって、チームメイトたちの組織的な守備プレーの機能性が格段にアップするというわけです。全員が「読みディフェンス」ばかりを意図したら、確実に中盤ディフェンスが機能不全に陥ってしまうということです。そう・・マケレレのいないレアル・マドリーのようにネ。さて・・。

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 次は、疲れを考慮されて後半20分からの登場となった中村俊輔。良かったですよ。彼もまた「良いプレーに対する確固たる感覚」が高揚しつづけていると感じさせてくれます。まあ出てきたタイミングが、ホームゲームであるにもかかわらず、アウェーのサンプドリアに「0-1」とリードされた状況だったということもあったんでしょうがネ。

 まずこのシーンからいきましょうか。そのとき、「出てこい! そのスペースへ出てこい!」なんて、心のなかで叫んでいましたからネ。

 右サイドの深い位置でボールをキープし、斜め前にいる味方へパスをつないだ中村俊輔。その次のシーンで、パスを受けた味方選手がドリブルで上がっていく「右側スペース」に中村が姿をみせることを強く期待していたのです。そして次の瞬間、ドリブルしていたレッジーナの選手が、スッと、右サイドへパスを回したのです。ヨシッ! その瞬間、自然とそんな声が出たものです。私の期待通り、そこには中村俊輔が、最初のパスの後のダッシュで、走り上がって来ていたのです。そしてパスを受けるなり、ズバッと正確なタテパスを飛ばす。パスを受けながらルックアップした中村の目は、最前線で、左サイドから中村のサイドのスペースへ向けて斜めに走り抜けるコルッチの姿を明確に捉えていたというわけです。良い、良い・・。

 とにかくボールタッチの頻度が高く、触れば、相手の強烈なプレッシャーをモノともせずにリスキーな勝負を仕掛けていく中村俊輔。一体、この2-3週間での変身(心理・精神的な部分の変容?!)のバックボーンは何なのですかネ。頼り甲斐が何倍にも増幅したと感じます。シンプルに展開すべきところでは、ボールをこねくり回すことなく素早くパスを出し、そのまま次のスペースへと全力でダッシュする・・ポンポンとボールを動かしながら自身も動くことで、相手マークからフリーな状態でボールを「戻させる」・・そして狙いすましたクロスを上げたり決定的スルーパスを通してしまう・・その効果レベルは、どんどんと高揚しつづけている・・。

 まあ、とはいっても、やはりボールがないところでの動き(クリエイティブなムダ走り)や守備に関しては、まだまだ不満も大きい。でも今の中村のプレー姿勢だったら、自然と、「どんな状況でもプレーに絡んでいくゾ!」という意志が高揚しつづけるでしょう。もちろん「ボールあるなしに関わらず、常に絡んでいこうとするプレー」の意味に対する深い理解をベースにしてネ。優れた(魅力的な)サッカーは、攻守にわたるクリエイティブなムダ走りを積み重ねることでしか実現できない・・のです。

 



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