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ヨーロッパの日本人・・今週は、久しぶりの高原直泰と中田英寿、そして中村俊輔・・(2004年10月25日、月曜日)

まず高原からいきましょう。クラウス・トップメラーからトーマス・ドルへ政権委譲された後の最初のゲーム。強豪ドルトムントとのアウェーゲームながら、チーム全体が攻守にわたって組織的に機能しつづけたハンブルガーSVが、「0-2」という粘勝をおさめて最下位から脱出しました。ドル監督は高原を高く評価しているから、この監督交代劇は高原にとっても追い風でしょう。

 その高原、全体的なパフォーマンスは良かったですよ。攻撃だけではなく、しっかりとボールがないところで動きまわって守備にも絡んでいく。攻めでは、しっかりと味方にアピールするようなボールなしの動きが、どんどんとパスを呼び込みます。だからボールタッチ頻度は十分。

 サイドスペースでパスを受け、勝負を仕掛けていく・・最前線のムペンザにタテパスが入ったら、間髪を入れず、ムペンザを追い抜くような爆発フリーランニングをスタートし、そのままパスを受けてシュートまでいく・・何度も、サイドスペースでパスを受け、しっかりとした勝負からクロスを上げる・・等々、アピアランス(見た目のプレー概観)は十分でした。ただ、どうもその積極プレー姿勢に見合った実効(内容)が追いついてこない・・。

 結局、彼がクロスを「通した」というシーンの演出はかなわず・・。ドリブル勝負で相手を振り回し、ある程度フリーでクロスを上げられたのに、ディフェンダーのアタマを僅かに越えられなかったり、最初にイメージしたコース自体が間違っていたり・・。フムフム、もっと深いイメージトレーニングが必要だ・・。

 また後方からタテパスを受けるシーンでも、うまくキープできない。もちろん相手のファール気味のアタックはあるけれど、それは最初から織り込み済みということでなければいけません。うまくファールを誘うとかネ(そう、隆行のように・・)。そこで、何らかのプラスの結果を導き出せれば、もっともっとチーム内での存在感をアップさせ、チームメイト達のターゲットマンとして機能できる・・。

 もちろん、素晴らしい決定的フリーランニングで自らシュートポジションに入り込むといった決定機の演出もありました。でも最後のところでクロスが合わなかったり、ボールがイレギュラーしたり・・。その現象ですが、不運が重なったという見方もできるけれど、そこで「ツキがなかった・・まあ、いつかは・・」なんていうふうに偶然ファクターを主体にして考えるのと、「いや、オレの確信レベルはまだまだ・・だから最終勝負に入っていく瞬間でもまだゴールに入るボールをイメージできていない・・」などと、より強く必然ファクターを意識するのとでは、次のステップへつながるべき「現象」に雲泥の差が出てきてしまうのですよ。

 まとめたら、どうも高原のボール絡みのプレーに、以前の「吹っ切れた勢い」が感じられない・・ということになるでしょうかネ。組織プレーと個人プレーの高質なバランスがキーワードには違いないけれど、「調子がまだ最高潮ではないから、なるべく結果としてのミスを避けたい・・」という後ろ向きの心理・精神構造がかいま見えたりする。そのなかのいくつかは「組織プレーに逃げ込む」という偏った心理・精神構造というふうに説明できるモノでしょう。ミスを恐れず、シュートという攻撃の目的を達成するために常にリスクにチャレンジするエゴイスト。それこそが、高原が強烈に意識すべきプレーイメージなのです。

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 さて、久しぶりの中田英寿。まだアウェー戦しか中継権が取れてないということらしく、彼のゲームは二週間に一回しか観られない。早く何とかできないのかな。本調子へ戻っている今の中田のリカバリングプロセスこそ最高の学習教材なのに・・。

 それにしても、あの基本ポジションじゃ中田ヒデの良さを十分に発揮させられないだろう・・。ヨルゲンセンとか、最前線から下がったミッコリとかオボドとかいった選手たちがチャンスメイカーポジションを占めてしまうために、ツートップの一角として最前線に張りつづけることになってしまう中田。最前線からのチェイス&チェックはアクティブだし、パスを呼び込むフリーランニングも例によって活発だけれど、チームメイトの仕掛けイメージに「乗らなければならない」という状況でのプレーには、かなり無理があるというものです。何せ彼の才能は、自ら、シンプル組織コンビネーションの流れを演出することよってこそ最大限に活かされますからね。ところがのこ試合では、常に前へ送り込まれてしまう。これでは、彼のプレーが中途半端になってしまうのも道理です。

 最終勝負の抜け出しフリーランニングとか、クサビをイメージした戻り気味フリーランニングに対してしかパスが出てこない・・中田が下がって仕掛けの流れをリードしようとしても、そのアクション自体や、彼のアピアランスに勢いがないからボールがうまいタイミングで回されてこない・・とにかく、なんとか彼がコアになった仕掛けの流れが演出されるという状況にしなければ・・ってな具合なのです。

 もちろんそれには、中田自身のアクションの量と質がまだまだという現実があります。100パーセントの戦いには、まだ自信が持てないから、どうしても、自らが下がってパスを要求し、そこを起点に仕掛けの流れを演出するという彼本来の「組織コンビネーションをリードする自己主張プレー」にもまだまだ勢いが足りない・・。まあこのパフォーマンスでは途中交代も仕方のないところです。

 とにかく彼にはまだ時間が必要だということです。前回のコラムと同じ結びになってしまったことが残念で仕方ないのですが、逆に、そんな逆境から這い上がってくるリカバリングプロセスが楽しみにもなってきた湯浅なのです。

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 最後は中村俊輔。攻守にわたる積極プレー姿勢(意志)と実際のプレー内容は高みで安定しています。でもちょっと、数週間前からの「最高潮ダイナミズム」から比べたら、部分的に減退気味?!

 もちろん私の評価の対象の大きなところは、攻守にわたるボールがないところでの意志(イメージ)と実効アクションの量と質。例えば守備の起点となる最前線からのチェイス&チェック・・たしかにボール奪取勝負プレーには積極的に絡んでいくけれど、どうも守備の汗かきプレーのダイナミズムレベルが落ち気味だと感じる・・行くことは行くけれど、そのアクションに、守備の起点になってやろうとか、プレッシャーを掛けて味方に次でボールを奪わせようという強い意志(意志の勢い)が感じられない・・。また例えば、パスを呼び込むスペースへのフリーランニング・・どうも、またまた足許パスを要求するボールなしプレーが目立つようになっている・・まあそれには、後方からのゲームメイカーでもあるモザルトが、彼にボールをわたして仕掛けフローの演出を任せる傾向が強いということもありそう・・だから足許パスを待つ傾向が再び目立つようになった?!。またパス&ムーブにも、以前のような鋭い動きが観られなくなっていると感じる・・もちろん絶対にリターンパスがくるという状況だったら全力ダッシュを仕掛けるけれど(それはそれで、まさに大変身という迫力あり!)、でもその全力ダッシュが、自らリターンパスを受けることと、味方にスペースを作り出すという二つの目的がフィフティーになりそうな状況だったら、様子見になる傾向の方が強い・・。フムフム・・。

 またボール絡みのプレーでも、またまた無為な安全プレーの方が増加傾向にあると感じるシーンが増えている?! たまに繰り出す勝負パスにはキレがあるし、後半早々に魅せたドリブルシュートも大迫力だったけれど、それ以外では、パスレシーブした味方がミスをする可能性が大きい状況でパスを出すことに逡巡する(勝負の仕掛けパスにチャレンジするのではなく、組み立て直しの安全パスに切り替えてしまう!)なんていう消極的なプレー姿勢も見え隠れするシーンが再び目立つようになりはじめているのかもしれない・・。とにかく中村は、今のポジティブなプレーイメージを維持し、発展させていくために、ミスになってもいいから、勝負すべきときは、勇気をもってリスクにチャレンジしていくべきなのです。そう、仕掛けのエゴイストとして。もっともっとスルーパスやタテパスを・・もっともっと勝負のドリブルを・・。そんなリスクチャレンジがあってはじめて発展ベースを構築できるわけだし、それこそが、自分自身のアイデンティティー(誇り)の強化になるということです。

 くり返しますが、ここ数週間における中村俊輔のプレーコンテンツ(プレー意志)のポジティブな流れは、この試合でも(基本的には)しっかりと維持されていました。でも、そんなポジティブな流れが、あるとき、ちょっとしたキッカケで逆流してしまうことも多い。私は、そのことを何度も、何度も体感しています。だからこそ、ちょっした「傾向」にも心配がよぎるというわけでした。

 



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