トピックス


ヨーロッパの日本人・・アイデンティティーに目覚めた中村俊輔と、まだちょっと時間が必要な中田英寿・・(2004年10月4日、月曜日)

さて、このチームでもっとも大きな「自由」を与えられていることで、攻守にわたって主体的に仕事を探しつづけなければならない中村俊輔。

 この試合でも、その自由に見合ったパフォーマンスで立ち上がりました。自由を謳歌するのはそんなに簡単なことではありません。だからこそ中村のプレー姿勢に、「サッカーにおける自由の本質的な意味」を見つめ直したに違いないと感じさせてくれるモノがある。正直に言って、彼のプレーコンテンツがこれほど急に高揚するとは思ってもみませんでした。いつも書いているとおり、彼を評価するときの基準は、昨年のコンフェデレーションズカップ対フランス戦でのパフォーマンスです。それがあるから、このところのハイパフォーマンスが信じられないというわけじゃないけれどネ・・。

 先日も紹介した、二列目センターのプレーコンテンツをもう一度。・・それは(通常の場合)、攻守にわたって「限りない自由」を与えられるポジション・・常に全力で仕事を探し、それを主体的に実行していくという積極プレー姿勢がないと務まらないのも道理・・だからこの、そのチャンスを与えられた選手は、セルフモティベーション能力(考えるチカラ=インテリジェンスレベル・・等々)を厳しく評価される・・とにかくその「自由」を与えられた選手は、チェイス&チェックなど、最前線からの積極ディフェンスを仕掛けていくだけではなく(守備の起点プレー!)、積極的に動いてタテパスのターゲットになったり、積極的に戻って前方にスペースを作り出すことで、後方選手たちがオーバーラップできる可能性を大きくしなければならない(タテのポジションチェンジの演出!)等々、攻守にわたる自分主体のコアプレーで「前線ブロックの実効レベル」を引き上げられなければならない・・等々。

 ボールを奪われたら、ボールを再び奪い返すためのポジショニングと具体的プレーに対するイメージを描写し、それを忠実に実行しようとする中村。チェイス&チェックだけでなく、タイミングを見計らったアタックなど、ボールウォッチャーになることなく、ボールを奪い返すためのアクションに対する意志を感じます。以前の「無為な様子見」ばかりが目立っていたプレー姿勢から脱皮した中村。まあ、もちろんまだまだチェイス&チェックアクションに勢いと意志パワーが足りないとか、ボール奪取勝負のアタックにしても、ちょっと淡泊に過ぎる(ちょっとアリバイ気味)といった気抜けプレーもありますがネ・・。フムフム・・。

 そして、守備がアクティブに進化しているからこそ、次の攻撃プレーにも勢いが乗るというわけです。例によっての天才トラップ・・そして確信のボールキープ(無為なこねくり回しではなく、多くが実効あるタメになっている!)・・そこから、逃げやアリバイではなく、自分にとっても(自分に対する周りからの評価にとっても!)リスキーな仕掛けパスが飛んだり、自らドリブルで勝負していったり・・それだけではなく、ボールがないところでの仕掛けプレー(フリーランニング)にも大きな意識の変化が見える・・これまでの「足許パスを待つだけ」の姿勢から、自身がタテのスペースへ抜けるようなパスレシーブのプレーも頻繁に見られるようになっている・・またパス&ムーブに対する姿勢は、格段とも言えるくらい発展していると感じる・・確かにまだ「様子見プレー」が目立つシーンもあるとはいえ、全体的には確実にチーム貢献レベルは上がっている・・。

 たしかに時間を追うごとに活動量が減ったこともあって、とにかく同点に追いつきたいレッジーナベンチが、前からのブレッシングパワーを上げようと、中村とボリエッロを交代させたわけですが、それでも、中村の全体的パフォーマンスが高みで安定していたことは確かな事実でした。一時は同点とした正確なフリーキックも素晴らしかったですよ。

 勝負のオマーン戦。中村俊輔は、日本代表でもこのレベルのパフォーマンスを魅せてくれるに違いない・・。とにかく期待が高まりつづけます。

------------------

 さて、先日のカップ戦で徐々にパフォーマンスを上げていったと聞く中田英寿。でもこの試合では、たしかに彼にはまだ時間が必要だと感じました。現象面としては、攻守にわたるボール絡みプレーが少なすぎるということでしょうか。

 攻守にわたるボールがないところでの動きの量と質については、回復基調にあることは感じます。でも、どうもボールに直接絡んだときに、以前のスムーズさやねばり強さが見られない。ボールをキープする状況では、相手のアタックに対する読み(予測)が甘かったり、チェックしてくる相手に対する体を使った抑えも十分ではなかったり・・。そんなこともあるのでしょう、ボールを持つチームメイトが積極的に中田を探すというところまで、チーム内の共通イメージを高揚させられていないということです。攻守にわたって高い実効レベルを魅せつづける調子が良いときの中田だったら、その「オーラ」によって、「ヒデにボールを集めろ!」ということでチーム内のイメージが自然と統一されてくるというわけです。

 まあ中田のことだから、常に守備からプレーに入っていくという大原則を忘れることはないでしょう。それさえ押さえていれば、彼ほどの選手だから(ケガという谷間=心理・精神的な発展リソース!=を経験したことも含め)、短期間のうちに以前にも増して素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれるまでに復調するに違いありません。

 ところで、巷で、中田が日本代表に必要かどうかという議論が見え隠れしているとか。まさに笑止千万じゃありませんか、中田ほどの選手についてそんな議論が出てくるなんて・・。もちろんそれは、中村俊輔との兼ね合いという論点なんだろうけれど、『いまの中村俊輔』だったら、復調した中田英寿との素晴らしくダイナミックなハーフコンビになるに違いないのに・・。互いに使い・使われるというメカニズムに対する深い理解をベースに、攻守にわたって主体的に仕事を探しつづけられる選手たち・・というわけです。もちろんその際は、トップをどうするのか・・とか、守備的ハーフとの兼ね合いは・・等々の微調整テーマは出てくるでしょうがネ。

 とにかく早く、この二人が織りなすに違いない、(自己主張がぶつかり合う?!)ダイナミックな協調関係へ発展するプロセスを体感したい・・。もちろんそれは、2006W杯アジア一次予選を突破したらのハナシですがネ・・。

------------------

 小野伸二やレアル・マドリーというストーリーも、時間ができ次第フォローするつもりですので・・。

 



[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]