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ヨーロッパの日本人・・今週は小野伸二、中田英寿、そして中村俊輔と柳沢敦・・(2004年11月1日、月曜日)

まず小野伸二から。実は、前節のゲームも観てはいたのですが、内容がパッとしなかったためにレポートする気にもなれませんでした。要は、度を超した無為な様子見状態が目立ちすぎたというわけですが、その悪い流れが、今節の立ち上がりにも見えたのですよ。ちょっと心配になったものです。相手は好調のAZ(試合前の時点でフェイエにつづく第三位!)だから、評価するには絶好の勝負マッチなのに・・。

 そんな立ち上がりの小野伸二でしたが、時間が経つにつれて本来のプレーペースを取り戻していきます。前半も中盤を過ぎてからは、ボールへ絡む頻度が上がり、彼が絡んだ危険な仕掛けもちょくちょく出てくるようになります。同点オウンゴールのキッカケになった正確なフリーキックは秀逸だったし、何度も、最前線への正確で扱いやすいラストタテパスを通したりと、仕掛けの起点としてもうまく機能するようになっていった。また守備でも、スペースをケアーする(カバーリング)だけではなく、ココゾの状況では、最後まで走り込む相手へのマークを離さないなど、例によって高みで安定した着実なプレーを展開します。

 特に後半立ち上がりに魅せた、左サイドでのドリブル突破から決定的クロスを上げた勝負シーンは本当に素晴らしかったですよ。まさに、安定志向の小野という視点からすればイメチェンとまで言えるリスクチャレンジプレーでした。中村俊輔にしても中田英寿にしても、はたまた小野や稲本にしても、誰でも個の勝負が仕掛けられるようになれば、日本代表の攻めでの変化の幅と質も大きく向上するに違いない・・なんてところまでイマジネーションが膨らんだものです。

 でも、そんなポジティブプレーが長続きしない。彼のプレーのダイナミズムレベルが大きく上下に揺動しつづけたのですよ。良いプレーを魅せたとおもったら、次には再び足を止めた停滞プレーに逆戻りしてしまったり・・。またボールなしのディフェンスでも、スタートタイミングが遅れたことで、走り込む相手にマークを振り切られてしまうというシーンも何度か目撃しました。やはり彼は、まだ何か身体に問題を抱えているのかもしれない・・。

 最後は、AZが展開する、運動量豊富な素晴らしいダイナミックサッカーに、小野伸二も含め、フェイエノールト全体が呑み込まれてしまったというゲームでした(4-1でホームのAZが圧勝!)。まあ、こんなこともあるよネ・・。

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 さて中田英寿。でもまずはレッチェから。彼らの好調の要因は、何といっても中盤守備と、そこから繰り出される素早いタテへの仕掛けに確固たるリズムがあることでしょう。選手たちの脳裏に、ボール奪取から勝負のタテパスへの流れが明確に刻み込まれていると感じるのです。だから守備での起点の演出と追い込みアクションがスムーズに連鎖しつづける・・だから、ボール奪取からのシンプルで直接的なゴールへ肉薄するプロセスが本当にスムーズに流れつづける・・。また組み立てプロセスでも、人もスペースへ動きつづけ、シンプルに、シンプルにボールが動きつづけるなかで、後方の味方が積極的にフォローアップしてくるという厚い攻撃を演出します。

 そんな強いレッチェ相手に、フィオレンティーナがどんなサッカーを展開するのか・・という興味で観はじめたゲーム。やはり前半は、中盤での潰し合いが目立つ展開になります。まあ、どちらかといったら、フィオレンティーナの方が、より悪いカタチで攻撃を潰されるという展開でしょうかね。それは、フィオレンティーナの一つひとつのステーション(ボールホルダー)のプレーが遅く、ボールの動きが停滞気味だからに他なりません。これでは、中田のプレーリズムが高揚してこないのも道理。たまにズームアップされる彼の顔に、アリアリとフラストレーションの表情が出ている。良いカタチのパスをもらえず、うまくボールに絡めないことで、自分がイメージするリズムでボールを動かせない(描写したコンビネーションイメージを体現できない)というフラストレーション・・。

 そんなネガティブなサッカーが徐々に好転していった背景には何があったのだろうか・・。そこには、レッチェ中盤ディフェンスのプレスの勢いが落ち着いてきただけではなく、徐々に中田が、攻撃イメージについてイニシアチブを握りはじめたこともあったに違いない。テレビ画面には、ブーゾ監督やチームメイトたちと真剣に話し合う中田の姿が映し出されます。そして徐々に組み立てにおける人とボールの動きリズムが好転していくのです。まあ、前半ロスタイムにヨルゲンセンが先制ゴールを入れたということも効きましたけれどネ。このシーンで中田が魅せた「ヘディングつなぎパス」は素晴らしいイマジネーションでした。もちろん彼へパスが送られてくることを明確にイメージしながら、ヨルゲンセンの意図も読んでいた・・。そして確実にヨルゲンセンの前のスペースへパスを「流した」というわけです。瞬間的なイマジネーション描写。それは、中田のプレーイメージが本来の姿に戻りつつあることの証といっても過言ではないクリエイティブなシンプルプレーでした。

 後半で中田が魅せた素晴らしいサッカーについては、もう語るまでもないでしょう。中田のパフォーマンスがどんどん高揚し、フィオレンティーナの仕掛けのコアとして機能しはじめるプロセスが目に見えるようでした。中村と同じように「二列目の自由」を与えられている中田英寿。この二人は、日本代表でも与えられる自由を、実効あるカタチで謳歌できるに違いありません。もちろん、互いに協力し合うなかでネ。攻守にわたり、主体的・積極的に仕事を探せる二人が、互いに使い・使われるという実効あるコンビネーション連鎖関係を構築する・・。期待がふくらみつづけるじゃありませんか。

 今日(日曜日の深夜)はここまでにします。中村俊輔については、明日ビデオで確認してからレポートを書き足すことにします。ということで、乱筆乱文誤字脱字も含め、ご容赦アレ。

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 ・・ってな具合で、いま、本当に久しぶりの朝一アクションをこなして帰宅したところです。あまり寝ていないけれど、ビックリするくらい目が冴えていますよ。そして観はじめた、柳沢所属のメッシーナと、中村レッジーナの対戦(柳沢はベンチスタート)。立ち上がりから、中村俊輔が全開です。とにかく、彼のプレーイメージは高みで安定している・・。

 相手コーナーキック。そこでこぼれたボールを拾った中村俊輔が、落ち着いてキープし、チョンと、左サイドを上がる味方の眼前スペースへボールを「置き」ます。例の、才能バックボーンのクリエイティブパス。要は、相手のアタックエネルギーの逆手を取る才能プレーということです。そして次の瞬間に繰り出す、全力でのパス&ムーブ。最後は、再び中村が左サイドの前方スペースでタテパスを受けるのですよ。

 そんなボールがないところでのパスレシーブの動き(≒周りの味方にスペースを作る動き≒ボールの動きを加速させる動き≒自分自身のプレーイメージを活性化するための動き≒セルフモティベーションサイクルの活性化≒等々)だけではなく、守備にもしっかりと入りつづける中村俊輔。たまには、ボールがないところでの汗かきマークで自ゴール前まで戻ってきたりしちゃう。だからこそ、味方も中村ボールを集めようとするし、自分のプレーに対する自信・確信・誇りをベースに、彼のボール絡みのプレーも光り輝くというわけです。それこそ攻守にわたるアクションイメージの善循環。まあ・・ネ、とはいっても、全体的な運動量の増強とか、チェイス&チェックに代表される、最前線からの「守備の起点プレー」とか、実際にボールを奪い返すアタックテクニックとかはまだまだだし(このボール奪取テクニックについては小野伸二も同様に大きな課題を抱えている!)、攻撃でも、ボールなしのプレー、ボール絡みのプレーでも、もっともっと積極的になれるはず・・。

 とにかく中村俊輔が明確な発展ベクトル上にあるのは確かな事実。才能が覚醒するプロセスの証人になることほど楽しい作業はありませんよ。

 最後に、後半17分に交代出場した柳沢についてもショートコメント。まず感じたことは、イメージ(考えること)の空白ともいえる無為な様子見状態が少なくなったこと。そして、ボールをもったときの「個の勝負」を前面に押し出した仕掛け姿勢にも積極性がみえはじめたこと。

 攻撃の目的はシュートを打つこと。それを達成するために選手たちは、時々の状況に応じ、もっとも効果的・効率的なプレーをするべきではあります。それが、柳沢が、ドリブル勝負よりもパスを選択する根拠だとか。もちろん正しいけれど、彼はストライカーですからネ・・。もっともっと「エゴ」を前面に押し出す自己主張をしなければいけない。

 攻撃のもっとも重要なテーマは「変化の演出」なのです。ヤツはパスしかしない・・と相手に甘く見られたら、ストライカーとしての存在感は地に落ちるし、味方の信頼も得られない。だらかこそ柳沢は、ドリブル突破やドリブルでの「突っかけプレー」といったリスクにもっともっと積極的にチャレンジすべきだと言いつづけていたわけです。

 だからこそ、久しぶりにみた柳沢のプレー姿勢のポジティブな変化に喜んだというわけです。左サイドから仕掛けたドリブル突破チャレンジ・・爆発的なバス&ムーブ・・等々、ボール絡みでもボールなしでも、彼のプレーにエネルギーの迸り(ほとばしり)の可能性を感じたのは私だけではなかったに違いありません。まあ、とはいっても、あくまでもポジティブな変化傾向が見えはじめたというレベルではありますが・・。

 



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